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自動車整備業における人手不足の現状と外国人雇用の概要
日本の少子高齢化に伴い、自動車整備業の人手不足は深刻化しています。慢性的な人手不足を解消するためには、国内の人材だけでなく、外国人の雇用も考える必要があるでしょう。
この記事では、自動車整備業界における人手不足の現状と課題を解説するとともに、特定技能の対象職種である自動車整備分野の外国人雇用の概要について解説します。
自動車整備業における人手不足の現状と課題
まずは、自動車整備業界における人手不足の現状と課題について見ていきます。
人手不足の現状
国土交通省によると、2019年度の有効求人倍率は全職種の平均が1,41倍なのに対して、自動車整備士は4.77倍となっています。加えて、自動車整備学校の入学者は年々減少傾向にあることから、若年層の車離れや少子化、職業の多様化を背景に、自動車整備士を目指す若者が減少しているのが窺えるでしょう。
また、自動車整備業界は従業員10人以下の企業が2015年時点で約8割を占めています。これらの現状を打開するため各会社が採用活動を進めていますが、依然として会社の事業規模が小さいため大規模な採用活動が行えないのが現状です。
とはいえ、2011年度の自動車保有台数は全国で約7,900万台あるのに対し、2019年度は約8,158万台となっており、自動車整備業の需要は安定しています。そのため、業界全体で早急な人材確保が必要といえるでしょう。
国土交通省を筆頭に、自動車整備学校や各ディーラーなどの関連事業所が、自動車整備業の魅力を世間に伝えるためにさまざまな取り組みを行っています。しかし、2019年まで自動車整備業の従業員数は低迷を続けており、人手不足が解消する見込みは立っていない実情があります。
参考元:国土交通省「人材確保に関する関東運輸局の取組と外国人等の人材確保に関する諸制度について」令和3年3月
人手不足の課題
自動車整備業界における人手不足の課題として挙げられるのは、「若年層の車離れ」です。1,000人の新成人にアンケート調査を行ったソニー損保「2022年新成人のカーライフ意識調査」によると、約3割の新成人が車を購入するつもりはないと回答しています。
その背景には、自動車に興味がないことや、自動車の購入費用や維持費が支払えるほど経済的な余裕がないことが挙げられます。
一方で、自動車を所有している新成人は全体の16%であり、自動車に興味を持っている新成人は全体の41%です。自動車に興味を持つ人が一定数いるように見えますが、自動車整備業に従事することを望む若者となればさらに限定されるでしょう。
加えて、少子化も進んでいるため、今後さらに若年層の車離れが加速し、人手不足が深刻化する可能性があります。そのため、自動車整備業では国内の人材だけでなく、海外の人材も積極的に受け入れていく必要があるでしょう。
情報出典元:ソニー損害保険株式会社
自動車整備業の外国人雇用における概要
ここからは、自動車整備業の外国人雇用における概要について解説します。
自動車整備業の外国人雇用が該当する特定技能の種類
自動車整備業では、在留資格「特定技能1号」に該当します。自動車整備分野の「特定技能1号」を取得した外国人は自動車整備要員として働く上で必要なスキルを有しているため、即戦力として雇用できるでしょう。
特定技能の詳細については、こちらのページをご覧ください。
受け入れ予定人数
自動車整備業における1号特定技能外国人の受け入れ予定人数は、2019年からの5年間で7,000人です。
参考元:国土交通省「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
また、自動車整備業に従事できる1号特定技能外国人は、2021年12月時点で708人受け入れられています。特に関東地方などの都市周辺では受け入れが盛んに行われていますが、九州地方や東北地方などの地方では受け入れが少ない傾向にあります。
業務内容
自動車整備分野における1号特定技能外国人が従事できる業務としては、自動車の日常点検整備や定期点検整備が挙げられます。具体的には、ステアリングやブレーキ、ホイールなどの駆動系の点検整備が主な業務です。
また、1号特定技能外国人は自動車の分解整備にも従事できます。分解整備とは、原動機や動力伝達装置、走行装置などを取り外して整備や改造を行うことです。単独で分解整備に該当する整備を行う場合、自動車整備士2級以上の資格を持っていないと行えません。ただし、自動車検査員の管理監督下であれば自動車整備士3級でも分解整備業務に従事できます。
さらに、2020年4月1日に道路運送車両法(第49条第2項)」の法改正が行われ、分解整備に加えて電子制御装置の整備が行える「特定整備」が追加されました。とはいえ、国土交通省の資料をみるに、1号特定技能外国人が従事できる業務には「分解整備」と記されているため、電子制御装置の整備や改造を行うことはできません。(2022年5月時点)
参考元:国土交通省「自動車整備分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」
参考元:国土交通省「特定整備制度概要」
求められる人材
自動車整備業で求められる人材は、「技能実習2号を良好に修了した人(技能実習3号を修了した人)」または「技能水準と日本語能力水準を満たした人」のうち、在留資格である「特定技能1号」を取得した外国人です。
ここでは、特定技能外国人が自動車整備業で従事する場合に必要な「技能水準」と「日本語能力水準」について解説します。
技能水準
自動車整備業の場合「自動車整備分野特定技能評価試験」あるいは「自動車整備士技能検定試験3級」に合格することで技能水準を満たしているとみなされます。それぞれの概要は、以下の通りです。
試験名 |
自動車整備分野特定技能評価試験 |
---|---|
実施団体 |
一般社団法人日本自動車整備振興会連合会(JASPA) |
URL |
|
試験内容 |
実施形式:CBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式 <学科試験> 問題数30問、試験時間60分 出題形式:○×式(真偽法) 〇構造、機能及び取扱法に関する初等知識 〇点検、修理及び調整に関する初等知識 〇整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱法に関する初等知識 〇材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識 <実技試験> 問題数3問、試験時間20分 出題形式:作業試験あるいは図やイラストを用いた状況判断試験 〇基本工作 〇分解、組立て、簡単な点検及び調整 〇修理 〇整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い |
合格基準 |
<学科試験> 正解数が問題数の65%以上 <実技試験> 得点合計の60%以上 |
受験料(国内受験の場合) |
4,300円(税込み) ※※受験する国によって料金は異なります。 |
※2022年5月18日時点
※参照元:一般社団法人日本自動車整備振興会連合会「自動車整備分野特定技能評価試験」
試験名 |
自動車整備士技能検定試験3級 |
---|---|
実施団体 |
国土交通省 |
URL |
|
試験内容 |
技能検定の種類 ・三級自動車シャシ整備士 ・三級自動車ガソリン・エンジン整備士 ・三級自動車ジーゼル・エンジン整備士 ・三級自動車車整備士 <学科試験> 問題数30問、試験時間60分 〇構造、機能及び取扱い法に関する初等知識 〇点検、修理及び調整に関する初等知識 〇整備用の試験機、計量器及び工具の構造、機能及び取扱い法に関する初等知識 〇材料及び燃料油脂の性質及び用法に関する初等知識 〇保安基準その他の自動車の整備に関する法規 <実技試験> 問題数3問、試験時間30分 〇基本工作 〇分解、組立て、簡単な点検及び調整 〇修理 〇整備用の試験機、計量器及び工具の取扱い |
合格基準 |
<学科試験> 30点満点中21点以上 <実技試験> 30点満点中18点以上 |
受験料 |
7,200円(税込み) |
※2022年5月18日時点
※参照元:国土交通省「自動車整備士になるには」
日本語能力水準
自動車整備業では、「国際交流基金日本語基礎テスト」「日本語能力試験(N4以上)」のどちらかの試験に合格することで日本語能力水準を満たしているとみなされます。
それぞれの概要は、以下の通りです。
試験名 |
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic) |
---|---|
実施団体 |
国際交流基金 |
URL |
|
試験内容 |
全50問程度、試験時間60分 実施形式:CBT(コンピューター・ベースド・テスティング)方式 <4セクション> ・文字と語彙(約12問) ・会話と表現(約12問) ・聴解(約12問) ・読解(約12問) |
合格基準 |
200点以上 |
受験料(国内受験の場合) |
7,000円 ※受験する国によって料金は異なります。 |
※2022年5月18日時点
※参照元:「国際交流基金日本語基礎テスト」
試験名 |
日本語能力試験 |
---|---|
実施団体 |
国際交流基金、日本国際教育支援協会 |
URL |
|
試験内容 |
認定の目安:N1~N5(数字が小さいほど、難度が高い設定) ※自動車整備分野の場合は、N4以上必須 <N4の試験科目> 〇言語知識(文字・語彙)科目(25分) 項目:漢字読み・表記・文脈規定・言い換え類義・用法 〇言語知識(文法)・読解科目(55分) 項目:文の文法1(文法形式の判断)・文の文法2(文の組み立て)・文章の文法・内容理解(短文)・内容理解(中文)・情報検索 〇聴解(35分) ・課題理解・ポイント理解・発話表現・即時応答 |
合格基準 |
<N4の合格基準> 合格点:90点 得点区分別得点 ・言語知識(文字・語彙・文法)・読解:38点(基準点) ・聴解:19点(基準点) |
受験料(国内受験の場合) |
6,500円 ※受験する国によって料金は異なります。 |
※2022年5月18日時点
※参照元:「日本語能力試験」
自動車整備業以外の特定産業分野については、こちらのページをご覧ください。
まとめ
自動車整備業は、深刻な人手不足に陥っています。その背景には、若年層の車離れや少子化、職業選択の多様化などさまざまあり、国内の人材を対象として人材確保をすることに限界があります。そのため、特定技能1号を有した外国人を積極的に雇用する必要があるでしょう。
自動車整備分野に従事する特定技能外国人は、特定技能1号を取得するために必要な「技能水準」と「日本語能力水準」を満たしているため、安心して業務を任せられます。
自社で雇用している技能実習生や留学生が、自動車整備業における特定技能ビザの取得を検討している場合は、この記事を参考にしてください。
さむらい行政書士法人では、特定技能ビザ申請のサービスを提供しています。また、自動車整備業だけではなく、特定産業分野ごとの特定技能を得るために必要な試験についてアドバイスを行っております。ぜひお問い合わせください。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
無料相談
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