技能実習「介護」の受け入れ要件や概要を詳しく紹介
外国人技能実習制度は1993年に制度化されました。そして2017年に介護職種が追加されました。
この記事では、
- ・外国人技能実習制度とは
- ・介護技能実習生に関する要件
- ・技能実習生受け入れ企業側の要件
について詳しく解説します。
国際協力の推進の1つである「外国人技能実習制度」です。要件等を詳しく理解するために活用してください。
外国人技能実習制度とは
外国人技能実習制度とは、「日本で学んだ技術・知識を外国人が発展途上国の母国に移転させる」ことが最終目標となっています。
外国人技能実習制度は、1960年代に行われていた海外にある現地法人の社員研修が前身です。
1980〜1990年代になると、海外拠点を持たない中小企業も海外人材を受け入れようという動きが活発になり、団体監理型による研修生の受け入れが可能となりました。
制度の目的
外国人技能実習制度とは、
『日本が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能・技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的』
としています。
外国人技能実習制度は日本の人手不足を補うものではないので、基本理念として
- ・技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるように、その保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと
- ・労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと
が定められています。
技能実習生 受け入れ機関別のタイプ
技能実習生の受け入れ方には、2つのタイプがあります。
- ・企業単独型:日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式
- ・団体監理型:事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
2021年末では団体監理型の受け入れが98.6%のため、ほとんどのケースで監理団体が関わっています。
介護技能実習生に関する要件
2017年に外国人技能実習制度に介護職種が追加されました。
介護サービスの特性に基づくさまざまな懸念に対応するため、介護技能実習は他の技能実習より要件が追加されています。
技能実習制度本体 基本要件
技能実習制度本体(主な要件)として、7つの基本要件があります。
- ・18歳以上であること。
- ・制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること。
- ・帰国後、修得等をした技能等を要する業務に従事することが予定されていること。
- ・「企業単独型技能実習」の場合にあっては、申請者の外国にある事業所又は申請者の密接な関係を有する外国の機関の事業所の常勤の職員であり、かつ、当該事業所から転勤し、又は出向する者であること。
- ・「団体監理型技能実習」の場合にあっては、従事しようとする業務と同種の業務に外国において従事した経験を有すること又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること。
- ・「団体監理型技能実習」の場合にあっては、本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること。
- ・同じ技能実習の段階に係る技能実習を過去に行ったことがないこと。
簡単に説明すると、
- ・1.18歳以上で、帰国後に日本で修得した技術や技能を活かせる業務に就くことが予定されていること。
- ・2.技能実習生の母国では修得することが困難な技術・技能の修得であること
- ・3.技能実習職種と同種の業務に従事した経験があること
が条件となります。
「介護」職種 追加要件
技能実習制度本体の要件に加えて、「介護」職種は2つの要件を満たさなければいけません。
- ・日本語能力の要件
- ・同等業務従事経験(職歴要件)
日本語能力の要件
実際「資格」として必要になるものが「日本語能力試験」(または同等レベル試験)の合格判定です。
第1号技能実習(1年目) |
日本語能力検定等の「N4」に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。 |
---|---|
第2号技能実習(2年目) |
日本語能力検定等の「N3」に合格している者その他これと同等以上の能力を有すると認められる者であること。 |
ただし、第2号技能実習については、現在改正されています。
改正内容は
- ・介護の技能・技術・知識の適切な習熟のために、日本語を継続的に学ぶ意思があること。
- ・技能実習先で介護の技能等の適切な習熟のために、必要な日本語を学ぶこと。
を満たしていれば、「N3」の合格判定と同等に扱われます。
※N4レベル:基本的な日本語を理解することができる。
※N3レベル:日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる。
同等業務従事経験(職歴要件)
技能実習生がこれから働く職種と同じ職種での勤務経験が必要です。
具体例は以下になります。
- ・外国における高齢者もしくは障害者の介護施設等において、高齢者または障害者の日常生活上の世話、機能訓練または療養上の世話等に従事した経験を有する者
- ・外国における看護課程を修了した者または看護師資格を有する者
- ・外国政府による介護士認定等を受けた者
引用:技能実習「介護」における固有要件について(厚生労働省)
技能実習の期間に決まりがある
技能実習在留資格として技能実習生は「第1号」「第2号」「第3号」と分けられています。
違いについて解説します。
在留期間 |
目的 |
対象職種 |
|
---|---|---|---|
技能実習第1号 |
入国1年目 |
技能の修得 |
制限なし |
技能実習第2号 |
入国2・3年目 |
技能の習熟 |
制限あり |
技能実習第3号 |
入国4・5年目 |
技能の熟達 |
制限あり |
基本的に滞在期間は1年間です。
第2号、第3号は、期間中に在留資格の更新が可能で、最長2年間になります。
技能実習生は試験に合格するなどして、全て合わせて最長5年間在留することができます。(対象職種に当てはまる場合)
しかし、技能実習第3号に関しては、実習実施者と監理団体の両社が優良認定を受けている必要があるため、試験に合格するだけでは第3号を受け入れることができないので注意が必要です。
介護職に就ける在留資格
介護職において在留資格で期間が変わります。
技能実習「介護」 |
特定技能1号「介護」 |
在留資格「介護」 |
---|---|---|
1~3号合わせて5年 |
5年 |
永続的な就労可能 |
技能実習以降も、延長して日本で介護職に従事する方法
- ・技能実習→特定技能「8~10年の雇用期間」
技能実習2号を修了すると、特定技能1号「介護」の全試験は免除。在留資格変更のみ。
- ・技能実習または特定技能1号→介護「受験資格を得られ、合格後永続的な雇用」
介護技能実習で3年間以上実務経験を積むと、介護福祉士の受験資格が得られ、技能実習3号で介護に従事しながら試験を受け、合格後在留資格「介護」に変更可。
実習生が行える業務
技能実習制度において、介護業務とは
『身体上または精神上の障害があることにより、日常生活を営むのに支障がある人に対し、入浴や排泄、食事などの身体上の介助やこれに関する業務』
と定義されています。
業務内容は必須業務に加えて、関連業務・周辺業務があります。
<必須業務>
身体介護業務 |
|
---|---|
安全衛生業務 |
|
<関連業務・周辺業務>
関連業務 |
|
---|---|
周辺業務 |
|
技能実習生受け入れ企業側の要件
「介護」の技能実習では、以下の要件に対応できるよう制度が作られています。
- ・介護が「外国人が担う単純な仕事」というイメージとならないようにすること。
- ・外国人について、日本人と同様に適切な処遇を確保し、日本人労働者の処遇・労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
- ・介護のサービスの質を担保するとともに、利用者の不安を招かないようにすること。
介護職種の技能実習生を受け入れるには基本要件に加え、介護職種固有の要件も満たさなければいけません。
技能実習制度を理解し、いざ受け入れる側になった時に、
「自社では、受入れ可能なのか?」
「何をすればいいのか?」
という疑問がでるのではないでしょうか。
やるべきこと、確認することは3つです。
- ・受け入れ可能な企業の条件
- ・技能実習計画を作成
- ・受け入れ企業になれる要件
1.受け入れ可能な企業の条件
技能実習生を受け入れ可能な企業は多くあります。
基本的に条件さえ該当すれば受け入れ可能です。
条件は以下の2つです。
- ・同一作業の反復のみで修得できるものではない
- ・開発途上地域等への技能移転や経済発展に貢献する技能
2つの条件を満たしたうえで、自分の企業が技能実習生を受け入れられる職種・業種・作業であることが前提です。
<受け入れ可能な企業(職種)>
- ・農業関係(2職種6作業)
- ・漁業関係(2職種9作業)
- ・建設関係(22職種33作業)
- ・食品製造関係(11職種16作業)
- ・繊維・衣服関係(13職種22作業)
- ・機械・金属関係(15職種29作業)
- ・その他(13職種25作業)
日々対象となる職種・作業は追加されているため、現在対象外でも将来的に技能実習生を受け入れることができる可能性も十分あります。
2.技能実習計画を作成
技能実習の内容や順序を具体的に示したもので、受け入れ企業にとって最も重要な書類となります。
「技能実習計画」は監理団体の指導のもと作成するのが一般的です。
<技能実習計画の記載内容>
- ・申請者の氏名・住所
- ・法人の役員の氏名・住所
- ・技能実習を行う事業所の名称・所在地
- ・技能実習生の氏名・国籍
- ・技能実習の区分
- ・技能実習の目標
- ・事業所ごとの責任者の氏名
- ・監理団体の名称・住所・代表者の氏名
- ・技能実習生の待遇
- ・その他
次に手続きの流れです。
- ・外国人技能実習機構(OTIO)へ技能実習計画認定の申請
- ・地方出入国管理局へ在留資格証明書交付申請
- ・査証ビザの申請
技能実習計画が外国人技能実習機構に認定されて初めて、技能実習生の受け入れができるようになります。
3.受け入れ企業になれる要件
技能実習生受け入れ企業側の要件として6つあります。
- ・欠格事由に該当しない
- ・技能実習指導員・生活指導員の配置
- ・雇用条件・社会保険・労働保険
- ・技能実習生の宿舎
- ・技能実習日誌の作成
- ・事業所の体制(介護職種)
欠格事由に該当しない
受け入れ企業の認定を受けるには、欠格事由に該当していてはいけません。
一定の刑罰を受けたことのある企業や経営者は、まず認定は受けられないでしょう。
欠格事由となる4点です。
- ・技能実習に関係する法律による刑罰を受けた者(禁固刑や罰金刑、5年経過しない者)
- ・技能実習法による処分を受けた者(5年経過しない者)
- ・申請者等の行為能力・適格性の観点から、技能実習に関する業務を適正に行うことができない者
- ・暴力団排除の観点から、暴力団員等
技能実習指導員・生活指導員の配置
技能実習生に対し円滑な技能習得が行えるため、さらに母国とは違う日常生活をサポートするため「技能実習指導員」と「生活指導員」を配置しなければいけません。
- ・「技能実習指導員」:技術や知識を習得してもらうため、直接指導する人
- ・「生活指導員」:日常生活における管理や指導・相談にのり、サポートする人
指導員になるためには条件があります。
技能実習指導員 |
生活指導員 |
---|---|
|
|
介護の技能実習指導員の場合、技能実習生5名に対して1名以上必要です。
さらに、上記の条件に加えて、
- ・介護福祉士
- ・看護師または准看護師
- ・実務者研修終了(実務者研修修了者は8年の経験が必要)
いずれかの資格を持っている必要があります。
そして「技能実習指導員」と「生活指導員」を監督する立場として「技能実習責任者」の配置も必要です。
技能実習責任者は技能実習責任者講習を終了した者で、さらに3年に1回講習を受講することが必須となっています。
雇用条件・社会保険・労働保険
技能実習生に対しても日本人と同じように「雇用条件・社会保険・労働保険」が適用されます。
<雇用条件>
- ・労働契約期間
- ・労働契約を更新する場合の基準
- ・就業場所および業務内容
- ・始業・終業時刻、休憩時間、休日など
- ・賃金額、支払い方法、賃金の締め切りおよび支払日
- ・退職に関する事項
雇用条件の内容は日本人正社員と同様の権利を持っています。
しっかり書面にて条件を明示する必要があります。
<加入義務のある各種保険>
- ・労働者災害補償保険(労災保険)
- ・雇用保険
- ・国民健康保険または健康保険(協会けんぽ・組合健保)・介護保険
- ・国民年金または厚生年金
上記保険の加入義務は、入国管理法・労働基準法に基づいて定められています。
法令違反にならないように手続きを行う必要があります。
技能実習生の宿舎
技能実習生の宿舎は、雇用主(企業)が用意しておく必要があります。
宿舎は、労働基準法で定める規定を守らなくてはいけません。
以下は、宿舎の条件です。
部屋の広さ |
最低4.5平方メートル(1人あたり)の住居スペース |
---|---|
1部屋の人数 |
原則2名以下 |
敷金・礼金 |
企業負担 |
住宅設備 |
|
家電など |
必要最低限の生活用品を企業が負担 |
事業所の体制(介護職種)
介護の技能実習生を受け入れることができる事業所です。
- ・設立から3年以上経過している事業所
- ・技能実習を行う事業所が実際介護の業務を行う事業所
注意点は、訪問する介護サービスを行う施設では受け入れはできません。
まとめ
技能実習制度とはなにか、技能実習者や受け入れ企業の要件など詳しく深掘りしました。
介護職種に関しては、他の職種よりも、さらに要件が厳しく加えられています。
人と人との関わり合いが一番大事な「介護」です。
技能・技術・知識だけではなく、コミュニケーションが大切なため「日本語能力」にも力を入れています。
やる気のある若い世代の外国人技能実習生です。
実習計画に沿って教育することにより、社内全体の「教育」「復習」「共有」のレベルアップに繋がります。
技能実習生側、受け入れ企業側の要件をもう一度確認して、技能実習制度を活用してみてはいかかでしょうか。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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