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外国人技能実習制度における「介護」の職種における要件と受け入れ成功の秘訣や注意点について

高齢化率が世界トップクラスの日本において、重要度を増しているのが高齢者に提供される介護サービスとそれを担う人材ですが、介護業界では深刻な人手不足が課題となっています。

しかし、一方で諸外国から介護職種を希望して集まる人材は少なからずあるため、介護業界でも外国人材の受け入れの方法として、外国人技能実習制度の活用が進んでいます。

介護職種における外国人技能実習生とは?

介護職種は、2017年11月、外国人技能実習制度に追加されました。特定活動や特定技能など、外国人が介護職として日本国内で就労が可能な在留資格はありますが、そのなかでも技能実習は突出して人数が多く、現在は国内の介護事業にでもっとも現実的かつ計画的に進めやすい外国人の受け入れ方法として選択されています。

外国人技能実習制度とは?

外国人技能実習制度は、日本が持つ技術や知識を発展途上国へ移転し、そこで経済成長を担う人材を育成することを目的とした制度です。

また、基本的な理念として、外国人が自身の出身国で修得ができない技能について修得や習熟、熟達を図ることが目的であり、元来、労働力の需給調整の手段としてはならないこととされています。

このため、1993年の制度創設時には就労が禁止されていましたが、その後2009年に労働基準法が技能実習生にも適用されると、入国直後でも労働者として労働基準関係法令の適用を受けることが可能となり、外国人材の活用の方法のひとつとして用いられるようになりました。

介護職種における技能実習生の要件

介護職種において外国人技能実習生は、外国人技能実習制度本体の要件とともに、介護職種における固有の要件を満たしていなければなりません。

外国人技能実習制度の主な要件

まず外国人技能実習制度本体の要件は以下のとおりです。

  • ・年齢が18歳を超えていること。
  • ・外国人技能実習制度の趣旨を理解し技能実習をおこなおうとしていること。
  • ・自国に帰国後、修得した技術を要する業務へ従事する予定があること
  • ・申請者の外国の事業所、あるいは密接な関係のある外国の機関の事業所に常勤している、または出向していること。
  • ・日本で従事するのと同様の業務に従事した経験か、特に従事が必要な事情があること(団体監理型技能実習の場合)。
  • ・本国の公的機関から推薦されていること。
  • ・過去に同様の段階の魏の実習をおこなっていないこと。

介護職種固有の要件

次に、介護職種固有の要件となるのは、日本語の能力と同等の業務従事経験です。

日本語能力要件

  • ・第1号技能実習(1年目)の場合

日本語能力試験のN4への合格か、「J.TEST実用日本語検定」や「日本語NATTEST」など、日本語能力試験との関係が明確で日本語能力を評価できる試験において同等以上の能力を認められていること。

  • ・第2号技能実習(1年目)の場合

日本語能力試験のN3への合格か、「J.TEST実用日本語検定」や「日本語NATTEST」など、日本語能力試験との関係が明確で日本語能力を評価できる試験において同等以上の能力を認められていること。

同等業務従事経験

同等業務従事経験とは、いわゆる職歴要件のことで、以下に該当している必要があります。

  • ・外国において高齢者あるいは障害者施設などで高齢者や障害者の日常生活における世話や機能訓練などに従事した経験があること。
  • ・外国において看護過程を修了しているか看護師の資格を有していること。
  • ・外国政府から介護士認定などを受けていること。

技能実習生が滞在可能な期間

技能実習生が日本国内に滞在できる期間は、在留資格(ビザ)によって異なります。

技能実習の場合、在留資格は1号から3号となり、2号と3号は移行対象職種に該当しなければなりませんが、介護職種はこれに含まれるため、最長5年間は日本に滞在して技能実習が可能です。

それぞれの概要は次のようになっています。

技能実習1号

入国初年度に技能実習生が与えられる在留資格です。滞在期間は1年間ですが、入国後に1か月間の講習が行われるため、実際に技能実習を行うのは11か月となります。

技能実習2号

技能検定あるいは技能実習評価試験に合格すると技能実習2号に移行し、さらに2年間(2~3年目)の技能実習が可能です。

技能実習3号

2号同様、試験に合格することで、さらに2年間(4~5年目)の技能実習が可能となります。ただし、3号の場合は、実習実施者と監理団体双方が優良認定を受けている必要もあるため、注意が必要です。

外国人技能実習制度における介護職種の業務

外国人技能実習制度では、介護職種の業務を以下のように定義しています。

  • ・身体上または精神上の障害があることにより、日常生活を営むのに支障がある人に対し、入浴や排泄、食事などの身体上の介助やこれに関連する業務

また以上に従い、技術や知識の移転を目的として、その内容を必須業務のほか関連業務・周辺業務に分けて定めています。

必須業務

必須業務とは、技能や知識を修得するうえで技能実習生が必ず従事しなければならない業務です。業務全時間のうち、2分の1以上の実施が必要となります。

また、業務内容は「身じたく、移動、食事、入浴・清潔保持、排泄、認知症や障害」など、利用者特性に応じた対応です。

その他にも、介護職種における「安全衛生教育や疾病・腰痛予防」など、安全衛生業務も含まれます。

関連業務・周辺業務

関連業務は、必須業務に関連して行われる業務で、修得しようとする技能や知識の向上に必要となる業務です。

業務全時間のうち、2分の1以下の実施が求められ、「掃除、洗濯、調理、機能訓練の補助およびレクリエーション、記録・申し送り」などが該当します。

また、周辺業務については、必須業務と関連する通常業務であり、業務全時間のうち3分の1以下の実施が必要で、掲示物の管理や福祉用具の点検・管理、物品の補充や管理などが含まれます。

技能実習生受け入れ成功の秘訣

介護業界にとって外国人技能実習制度を活用した外国人技能実習生の受け入れは、深刻な人手不足を解消する有効な手段のひとつとして期待、活用されています。

しかし、実際に技能実習生を受け入れるには、さまざまなポイントを押さえておかなければなりません。

外国人技能実習生受け入れの流れを知りたい

まず、外国人技能実習生を受け入れることを前提として、「企業単独型」と「団体監理型」の2つの方法があります。

多くの企業は「団体監理型」で受け入れを行っており、2021年末時点では、全体の98.6%におよびます。

そこで、この団体監理型を詳しくみてみると、以下のような手順で外国人技能実習生の受け入れがおこなわれています。

①監理団体へ加入する

団体監理型の場合、外国人技能実習生を受け入れようとする企業はまず、監理団体(組合) への加入が必要です。

②外国人技能実習生を募集・採用する

加入した監理団体では海外の送り出し機関を通じ、技能実習生の候補者となる外国人の募集を行います。

③技能実習計画を作成する

受け入れる外国人技能実習生が決まると「技能実習計画」の作成が必要となります。これは実習のスケジュールや指導者の詳しい事情をを記入するものです。

また、技能実習計画は外国人技能実習機構(OTIT)への提出が必要で、審査に通過すると認定通知書が交付されます。

④実習実施者届出書を提出

技能実習計画が審査に通過し、認定通知書が交付されたら、外国人技能実習機構へ「実習実施者届出書」も提出します。

⑤外国人技能実習生を受け入れる準備をする

各種書類の提出後は、外国人技能実習生の住居や備品、生活必需品などの準備が必要です。これらについては詳細を後述します。

⑥入国後日本語講習を受講する

受け入れ準備が整っても外国人技能実習生は、入国直後1ヶ月〜2ヶ月間、入国後日本語講習を受講する必要があり、講習中は就労することができません。

また、この間は実習実施者である受け入れ企業か監理団体によって、外国人技能実習生に対し手当を支給する必要があります。

⑦外国人技能実習生の就労開始

受け入れ準備が整い、外国人技能実習生の入国後日本語講習が修了したら、受け入れ企業のもとで技能実習計画に沿って就労を開始します。

また、監理団体は、適切に技能実習が行われているのかを判断するために、実習実施者のもとを定期的に訪問、監査します。

多くの企業が団体監理型を選んでいる理由は?

ここまで、団体監理型による外国人技能実習生の受け入れの流れをみてきましたが、なぜ多くの企業で団体監理型が選択されているのでしょう。

これは、外国人技能実習生の受け入れを希望する企業が、人材の募集をはじめ入国に関わるさまざまな手続きを全て監理団体に任せることができるからです。

また、監理団体側も、監理団体としての許可を受けていれば、職業紹介において一切の対価が発生しない「無料職業紹介事業」の許可を得なくても、技能実習にかかわる雇用関係の斡旋も可能となるメリットがあります。

なお、「団体監理型」と「企業単独型」の違いについては、それぞれ次のように定義されています。

  • ・団体監理型

営利を目的としない事業協同組合や商工会のような監理団体によって外国人技能実習生の受け入れを行い、企業など傘下の実習実施者が技能実習を実施する方式

  • ・企業単独型

日本の企業をはじめとした実習実施者によって、海外の現地法人や合弁企業、取引先企業の職員を受け入れ、外国人技能実習を行う方式

スケジュールと所要期間

団体監理型として受け入れを進めた場合、おおむね4か月後には技能実習生として外国人を業務に従事させることができます。

これは、技能実習計画の認定申請から在留資格認定証明書交付申請、査証申請の審査期間を考慮したおおよその期間です。

必要な受け入れ準備にはどんなものがある?

では実際に、外国人技能実習生を受け入れるにあたって、実習実施者ではどのような準備をすれば良いのでしょうか。これにはさまざまな環境の整備が必要となります。

受け入れ体制を整備しておく

外国人技能実習生を受け入れる準備として最初に必要となるのは受け入れ体制の整備です。

  • ・指導員の選任
    外国人技能実習生を指導する「技能実習指導員」や「生活指導員」、「技能実習責任者」などを選任します。
  • ・加入義務のある保険の手続き
    「労働者災害補償保険(労災保険)」「雇用保険」「国民健康保険または健康保険(協会けんぽ・組合健保)・介護保険」「国民年金または厚生年金」など、法令違反にならないように、加入義務のある保険の手続きが必要です。
  • ・技能実習生の宿舎

技能実習生の宿舎は、定められた条件のもとで雇用主(企業)が用意しておく必要があります。また、必要最低限の生活用品についても企業が負担しなければなりません。

上記以外にも、企業と技能実習生がスムーズに業務を進められる環境などの配慮も大切です。以下で詳しく紹介していきます。

外国人技能実習生採用時の注意点

受け入れによるメリットも多い外国人技能実習制度ですが、注意する点も少なくありません。

業務以外のサポートが必要

外国人技能実習生に対しては、職場における業務上の環境整備だけでなく、日常生活にも慣れるための生活面や精神面のサポートも必要です。

そこで、状況に応じて外国人技能実習生向けの相談窓口を設置したり、個別支援を行うメンター制度を導入するなど、配属部署における上下関係だけでない関係性を構築し、個人的な悩みを聞ける体制を整えることが大切です。

また、外国人技能実習生とのコミュニケーションに関しても、個人の日本語能力の向上に頼るだけでなく、社内教育を実施するといった取り組みが欠かせません。

研修の際に注意すべき点

外国人技能実習制度では、その成果を最大化するため、外国人技能実習生に対し、来日前や入国後にもフォローアップが実施されます。この際にも注意点があります。

来日前に実施される研修

外国人技能実習生に対する来日前の研修は、採用が決定した場合、およそ3か月間から半年間にわたり母国の送り出し機関によって行われます。

内容は、現地の送り出し機関や国によって細かな違いがありますが、基本的には以下のような内容です。

  • ・外国人技能実習制度への理解
  • ・日本文化やマナー
  • ・日本語の修得
  • ・日本の職場での一般常識など

しかし、団体監理型で採用窓口となるのは監理団体で、受け入れ企業ではこの実施内容を具体的に知ることができません。このため、企業側としては監理団体を通じ、送り出し機関が実施する研修の内容を可能な限り調査し、把握しておく必要があります。

入国後に実施される研修

入国後の研修は、団体監理型の場合は、入国後講習を監理団体が講習を行うことが義務づけられています。

企業単独型の場合は、受入れ企業が行います。

また、時間も活動予定時間の6分の1以上と定められています。ただし、入国前6か月以内に1か月以上の期間で160時間以上の講習を行っていれば、入国後講習は12分の1以上に軽減も可能です。

そしてこの内容は、法律で以下のように定められています。

  • ・日本語の修得
  • ・日本における生活一般の知識
  • ・入出国および労働の法令に違反したことを知った場合の対処方法
  • ・外国人技能実習生の法的保護に関する知識
  • ・円滑な技能などの修得についての知識

夜勤はいつから可能?

介護職は、業務の性質上、夜間勤務が発生します。その際、外国人技能実習生の就業において、夜間勤務はどのように扱われるのでしょうか。

結論としては、配属当初から可能となっています。ただし、外国人技能実習生のみで単独とならないよう、介護職員を含む複数名で夜間勤務に従事するなど、利用者の安全性への配慮が必須です。

受け入れにおける心構え

外国人技能実習生の受け入れをおこない、適正な雇用が継続できれば永続的な在留資格である「特定技能1号」の取得も可能となり、将来的な戦力として期待できるようになります。

一方で、意欲のある外国人技能実習生を受け入れたとしても、受け入れ企業側の環境が整っていなければ、かえって業務に悪影響を及ぼすおそれもあります。

そこで受け入れ側では、外国人技能実習生の受け入れにあたって、以下のような心構えをしておくことが大切です。

さまざまな「違い」を受け入れる

外国人技能実習制度だけにとどまらず、外国人材の受け入れでは、言語や文化、習慣、宗教などさまざまな「違い」が外国人とその受け入れ側にとってお互いの「壁」となります。

もちろん、外国人技能実習制度においては技能実習生はこれらの違いを理解し、環境に順応しなければなりませんが、受け入れ側も組織をこの「違い」に対応できるよう努力が必要です。

コミュニケーションを深める努力を心がける

外国人技能実習生は、一定程度の日本語教育を受けて職場に配属されるものの、習熟度には個人差があり、コミュニケーションの障壁となる場合もあります。

コミュニケーション不足が原因で危険を伴う作業であれば、重大な事故に繋がる可能性もあります。

そこで、日本語の習熟が十分でなくとも理解できる絵や記号を使った看板やポスターを設置するなど、コミュニケーションの手法を工夫する必要があります。

外国人技能実習生の働く環境を整える

外国人技能実習制度には、外国人技能実習生の失踪など問題点もあるのが現状です。ただし、その多くは低賃金や賃金の未払いのような外国人技能実習生を「単なる入れ替えのきく安価な労働力」として捉えていることによって起こります。

加えて、外国人技能実習生側は、退職や転職といった選択も難しい立場です。このため、受け入れ側は外国人技能実習生が安心して働ける環境づくりをしておくことが非常に重要です。

まとめ

外国人技能実習生は、その多くが高いモチベーションを持って日本を訪れます。その中には介護福祉士の資格を取得して日本で働き続けることを選択する実習生も少なくありません。こうした外国人に介護業界で活躍してもらい、人材を確保するためには、外国人技能実習制度の趣旨を理解し、適正で有意義に活用することが欠かせません。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

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