介護職の技能実習生の人数枠とは?受け入れ要件や流れなども解説
介護職の技能実習生を受け入れようと考えた場合、どれくらいの人数を受け入れることができるでしょうか。
受け入れする事業所の立場から考えれば、せっかく技能実習生を受け入れるのだから、できるだけ沢山の人材を採用して、沢山の人に技術を学んでもらいたいと考えるのは当然です。
しかし技能実習制度全体においては、人数枠の規定があり、介護職についても、人数枠に規定があります。
この記事では、介護職の技能実習生の人数枠について、介護職の技能実習制度の受け入れ要件や流れも説明しながら、詳しく解説します。
介護職の技能実習制度とは
外国人技能実習制度は、日本が国際社会の発展のために先進国として役割を果たすため、技能、技術、知識を開発途上国等から来た人材に学んでもらい、その国の人材育成に協力する目的の制度です。
そのため、人材不足を補うための制度ではありません。
介護職は、平成29年11月1日に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」に合わせて対象職種に追加されました。
介護サービスはその職種の特性から、技能実習において起こりうるさまざまな問題点が考えらえます。
そのため、介護職の技能実習には、技能実習制度による要件以外にも、介護固有の要件が定められています。
令和3年度の職種別技能実習計画認定件数で介護職の技能実習は、8384件が認定されており、技能実習計画全体の4.9%を占めています。
<参照:外国人技能実習機構「令和 3年度業務統計:職種別 技能実習計画認定件数(構成比)」>
介護職の技能実習生の要件
介護職の技能実習の要件は、技能実習制度による要件と、それに付け加えて介護固有要件とがあります。
ここでは、技能実習制度上の要件と、介護固有の要件について、実習生の要件、実習実施者の要件とに分けて説明します。
実習生側の要件
実習生側の要件のうち、技能実習制度の要件として主なものは以下のとおりです。
18歳以上であること |
技能実習制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること |
帰国後に修得をした技能等が必要である業務に従事する予定であること |
企業単独型技能実習の場合は、申請者の外国にある事業所や申請者と密接な関係がる外国の機関の事業所の常勤職員であり、その事業所から転勤や出向して技能実習を行う者であること |
団体監理型技能実習の場合は、従事しようとする業務と同種の業務を外国において従事した経験を有する、又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること <介護職における職務要件>
|
団体監理型技能実習の場合は、本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること |
同じ技能実習の同段階である技能実習を過去に行ったことがないこと |
実習生側の要件のうち、介護固有の要件としては、以下のとおりです。
第1号技能実習 |
|
---|---|
第2号技能実習 |
|
日本語能力試験と同等以上の能力を有することを証明するためには、日本語能力試験との対応関係が明確にされている日本語能力を評価する試験で相当するものに合格していることが必要です。
実習実施者側の要件
実習実施者側の要件のうち、技能実習制度の要件として主なものは以下のとおりです。
技能実習を行わせる事業所ごとに、技能実習責任者を選任していること <技能実習責任者の要件>
|
技能実習の指導を担当する者として、技能実習指導員を 1名以上選任していること <技能実習指導員の要件>
|
技能実習生の生活の指導を担当する者として、生活指導員を一名以上選任していること <生活指導員の要件>
|
技能実習生の受入れ人数の上限を超えないこと |
実習実施者側の要件のうち、介護固有の要件としては、以下のとおりです。
技能実習指導員のうち 1名以上は、介護福祉士の資格を有する者その他これと同等以上の専門的知識及び技術を有すると認められる者(※看護師等)であること |
技能実習生5名につき 1名以上の技能実習指導員を選任していること |
技能実習を行わせる事業所が、介護等の業務(利用者の居宅においてサービスを提供する業務を除く。)を行うものであること |
技能実習を行わせる事業所が、開設後 3年以上経過していること |
技能実習生に夜勤業務その他少人数の状況下での業務又は緊急時の対応が求められる業務を行わせる場合にあっては、利用者の安全の確保等のために必要な措置を講ずることとしていること ※技能実習生以外の介護職員を同時に配置することが求められるほか、業界ガイドラインにおいても技能実習生以外の介護職員と技能実習生の複数名で業務を行う旨を規定。夜勤業務等を行うのは 2年目以降の技能実習生に限定する等の努力義務を業界ガイドラインに規定。 |
技能実習を行う事業所における技能実習生の数が一定数を超えないこと |
入国後講習については、日本語学習(240時間(N 3程度取得者は80時間))と介護導入講習(42時間)の受講を求めることとする。また、講師に一定の要件を設ける <講師の要件>
|
<参照:厚生労働省 社会・援護局 「技能実習「介護」における固有要件について」>
技能実習生の受け入れ人数枠
技能実習制度は、実習を実施する受け入れ企業の常勤の職員の人数に対して、技能実習生の受け入れ人数枠が定められています。
常勤職員数には、技能実習生は含まれません。技能実習生以外の職員のなかで常勤の職員数を数えます。
行われる技能実習の区分や、受け入れ機関のケース、また優良実施適合者であるかどうかによっても受け入れ人数枠は変わります。
また、特有の事情のある職種については、事業所管大臣が定める告示で定められた人数となり、介護職の場合は、介護固有要件のなかに人数枠の規定も定められています。
介護職の場合は、技能実習を行う事業所の介護等を行う常勤職員の総数に応じて決められており、その事業所における技能実習生の総数が、常勤介護職員の総数を超えることはできません。
介護職種の技能実習生について、基本の人数枠は以下のとおりです。
実習実施者の常勤の職員の総数 |
技能実習生の人数 |
---|---|
301人以上 |
常勤職員総数の20分の 1 |
201人~300人 |
15人 |
101人~200人 |
10人 |
51人~ 100人 |
6人 |
41人~50人 |
5人 |
31人~40人 |
4人 |
21人~30人 |
3人 |
11人~20人 |
2人 |
10人以下 |
1人 |
団体管理型の技能実習の場合、人数枠は以下のとおりになります。
優良基準適合者とは、高い水準を満たすものとして主務省令で定める基準に適合している優良な実習実施者(事業所)や、優良な管理団体(一般管理事業)のことを指します。
第1号(1年間) |
第2号(2年間) |
第3号(2年間) |
|
---|---|---|---|
通常の者 |
基本人数枠 |
基本人数枠の2倍 |
なし |
優良基準適合者 |
基本人数枠の2倍 |
基本人数枠の4倍 |
基本人数枠の6倍 |
企業単独型の人数枠については、以下のとおりです。
第1号(1年間) |
第2号(2年間) |
第3号(2年間) |
|
---|---|---|---|
通常の者 |
常勤職員総数 |
常勤職員総数 |
なし |
優良基準適合者 |
常勤職員総数 |
常勤職員総数 |
常勤職員総数 |
出入国在留管理庁長官及び厚生労働大臣が継続的で安定的な実習を行わせる体制を有すると認める事業所については、以下のとおり、団体管理型と同様の人数枠が適用されます。
第1号(1年間) |
第2号(2年間) |
第3号(2年間) |
|
---|---|---|---|
通常の者 |
基本人数枠 |
基本人数枠の2倍 |
なし |
優良基準適合者 |
基本人数枠の2倍 |
基本人数枠の4倍 |
基本人数枠の6倍 |
団体管理型、企業単独型いずれも、常勤介護職員の総数を超えることはできないため、表の記載の人数を計算して常勤職員数より多い人数になった場合は、その事業所の人数枠は常勤職員数までになります。
<参照:厚生労働省告示「介護職種について外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則に規定する特定の職種及び作業に特有の事情に鑑みて事業所管大臣が定める基準等」>
技能実習生の受け入れの流れ
技能実習生の受け入れの流れのなかで、現地での技能実習生の募集などや送り出しに関することがらについては、「企業単独型」では、海外支店や関連企業で行い、「団体管理型」では、送り出し機関がその役割を担うという違いがあります。
また、日本で行うことがらについても、「企業単独型」では受け入れ企業が実習生に関してすべて実施しますが、「団体管理型」では、許可された管理団体が、実際に実習を実施する事業所を補佐しながら、さまざまな申請等を行うという違いがあります。
しかし、大まかな流れとしては、「企業単独型」も「団体管理型」も変わりはありません。
介護職の技能実習の場合は、ほとんどが「団体管理型」であるため、ここでは「団体管理型」の技能実習の受け入れの流れについて、説明をします。
団体管理型の技能実習生の受け入れの流れは以下のとおりです。
- 1.送り出し機関と管理団体との間で契約をむすぶ
- 2.受け入れ企業が管理団体に技能実習生の受け入れを申し込む
- 3.送り出し機関に、技能実習生が応募、技能実習生として採用される(選考方法等は送り出し機関や管理団体によって異なる)
- 4.管理団体、送り出し機関を介して、技能実習生と受入企業で雇用契約を結ぶ
- 5.受け入れ企業が技能実習計画を作成、管理団体に申請する
- 6.管理団体は、外国人技能実習機構に実習計画を申請、認定をうける
- 7.管理団体が出入国在留管理局へ在留資格認定証明書交付申請を行い、認められれば在留資格認定証明書が交付される(入国許可)
- 8.送り出し機関がビザ(査証)申請を行い、認められればビザが発給される
- 9.技能実習生が入国、技能実習開始
- 10.管理団体は、受入企業の指導と支援を行う
※管理団体は、技能実習生の募集に先だち、海外の送り出し機関と契約を結ぶことが必要です。
※管理団体は、事前に、もしくは実習計画を申請する時点で、外国人技能実習機構に団体許可を申請、外国人実習機構による調査を経て、主務大臣より団体許可を受ける必要があります。
<参照:法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官 「外国人技能実習制度について」>
介護職の技能実習生受け入れのポイント
介護職の技能実習生は、ほとんどの事業所が「団体管理型」にて受け入れを行っています。
令和3年度の統計において、技能実習計画認定件数は、以下のとおりです。
1号 |
2号 |
3号 |
|
---|---|---|---|
企業単独型 |
7件 |
8件 |
0件 |
団体管理型 |
3984件 |
4274件 |
111件 |
<参照:外国人技能実習機構「令和 3年度業務統計:職種別 技能実習計画認定件数(構成比)」>
また、技能実習生に高い介護技術を学んでもらい、長く働いてもらうためには、3号技能実習まで実施して最長である5年間働いてもらうことが望ましいところです。
しかし、3号技能実習については、優良な管理団体か、もしくは優良な実習実施者しか行うことができません。
優良基準は厳しい要件が定められているため、実質的には「企業単独型」での実施は難しく、統計でも0件となっています。
せっかく技能実習生を受け入れするのであるからには、3号技能実習まで可能である優良な管理団体(一般管理団体)による、「団体管理型」での技能実習を考えると良いでしょう。
そのうえ、優良な管理団体による技能実習では、人数枠に関しても優遇されており、より多くの実習生を受け入れることが可能であることもポイントです。
管理団体はさまざまな団体があり、サポート内容にも違いがあります。
どの管理団体を選ぶのかについては、介護職の技能実習生を受け入れる大きなポイントであるといえるでしょう。
まとめ
介護職の技能実習生の受け入れを考えた場合、その人数枠については、事業所の常勤介護職員の総数によって異なります。
また、技能実習生の総数が常勤介護職員数を超えることはできません。
しかし、人数枠は管理団体の区分によっても異なり、優良な管理団体(一般管理団体)を選ぶことで、優遇された人数枠の受け入れが可能になります。
そのため、優良な管理団体(一般管理団体)による技能実習生の受け入れを考えることが望ましく、管理団体ごとにさまざまな違いがあるため、管理団体選びが重要なポイントとなるでしょう。
介護職の技能実習について分からないことがある場合は、外国人技能実習機構の外国人技能実習機構コールセンターへ問い合わせると良いでしょう。
また、技能実習の在留資格について詳しい、行政書士事務所に相談をすることもおすすめします。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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