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介護の技能実習から特定技能に移行する方法とは?

給与の低さなどから介護職は離職率が高く、少子高齢化や採用困難などもあいまって、現在介護業界は他産業よりも深刻な人手不足に直面しています。

 

一方で急速な高齢化によって介護を必要とする高齢者は増加し続けており、需要と供給のバランスが大きく崩れようとしています。

こうした社会的背景とともに政府の後押しもあり、現在注目を集めているのが外国人技能実習生の介護への受け入れです。

 

そこでここでは介護職における外国人技能実習制度とはどのようなものなのかをはじめ、受け入れの際のポイントと、特定技能に移行する方法についてお伝えします。

介護職の外国人技能実習制度とは

外国人技能実習制度は外国人材の受け入れ制度のひとつで、本来は労働力の確保を目的とするものでなく、開発途上国などへの技能移転を目指す制度です。一方原型となったのは1960年代後半に海外の現地法人などで社員教育としておこなわれていた研修制度で、これが評価されたことから外国人技能実習は制度化されました。

 

また技能実習には1号と2号があり、1号は基本的に職種を問いませんが、2号に移行する場合、実技のほかに学科試験、またはこれに準ずる検定や試験への合格、技能実習計画の提出などが必要です。そしてこれらの条件を満たすことで、1号での1年間実習後も2号に移行し、2年目3年目の実習が可能になります。

 

このうち特に介護職については、上記以外に別途2015年2月4日の「外国人介護人材受け入れの在り方に関する検討会中間まとめ」における、提言の内容にならった要件もあります。

介護職の追加における基本的な考え方

2015年の技能実習制度への介護職の追加にあたっては、職種特有のさまざまな懸念に対応することを前提として制度設計がおこなわれています。そのための要件とは次の3つです。

 

  • 1.介護職は「外国人が受け持つ単純な仕事」という印象を持たれないようにすること
  • 2.外国人技能実習生に対しては日本人と区別されることのない処遇を確保するとともに、日本人労働者の処遇や労働環境の改善の努力が損なわれないようにすること。
  • 3.介護サービスにおける質を担保し、利用者に不安を与えないようにすること。

以上の要件を満たすとともに、介護職についての外国人技能実習制度は、このあと詳しくご紹介する、固有の要件もあります。

外国人技能実習生を受け入れる方式

次に、介護職の外国人技能実習生の受け入れは、以下の2つの方式があります。

①企業単独型…日本国内の企業など、実習実施者が海外の現地法人や合弁企業、取引先企業についての外国人材を受け入れ、技能実習をおこなう方式。

②団体監理型…事業協同組合のほか商工会などの営利を目的としない監理団体において外国人技能実習生を受け入れ、技能実習を実施する方式。

なお、現状外国人技能実習生の受け入れの多くは団体監理型となっています。

介護職の技能実習制度に関する要件

では、ここからは介護職固有の要件についてより詳しくみていきます。

実習生側の要件

介護職の外国人技能実習制度における要件は、実習生側において日本語能力と職歴が必要となります。

日本語能力の要件ついて

介護職の技能実習生は、技能を修得の際の指導や介護施設の利用者らとコミュニケーションを図るため、一定水準以上の日本語能力を有することが必要です。このため、1号技能実習生および第2号技能実習生は以下のような日本語能力にする要件を満たしていなければなりません。

第1号技能実習

日本語能力試験N4への合格か、同等以上の能力を有すること

第2号技能実習

日本語能力試験N3への合格か、同等以上の能力を有すること

※上記の日本語能力試験は日本語を母語としない人の日本語能力を認定する語学検定試験で、このうちN3は日常的な場面における日本語が理解できる程度、N4は幅広い場面において用いられる日本語が理解できる程度となります。

職歴の要件ついて

職歴については同等業務従事経験とも呼ばれることもあり、団体監理型の技能実習では日本で従事する業務と同種の業務に外国で従事したことがあるか、あるいは技能実習に従事する特別な事情があるか否かが要件となります。なお、一例として次のような場合が該当します。

  • ・外国の介護施設や居宅などで高齢、あるいは障害者の日常生活における世話や機能訓練、療養のための世話などをおこなった経験があること
  • ・外国において看護課程を修了しているか看護師資格を有していること
  • ・外国政府によって介護士認定などを受けていること

実習実施者側の要件

一方、実習実施者側の要件として必要となるのは指導員と事業所に関する体制や、さらには抱える技能実習生の人数です。

技能実習指導員の要件ついて

外国人技能実習生を指導する技能実習指導員については、このうち1名以上について介護福祉士の資格か、これと同等以上となる専門的知識あるいは技術を有する看護師などであることが必要です。

また、外国人技能実習生5名に対し、1名以上の技能実習指導員を選任していなければなりません。これは技能実習制度そのものの基準ではないものの、介護職種の場合には要件として設定されています。

事業所の体制にかかる要件ついて

さらに外国人技能実習生を受け入れる事業所の体制については次のような要件があります。

  • ・利用者が居宅において受けるサービス以外の業務で介護などの業務をおこなう事業所であること
  • ・開設後3年以上を経過した事業所であること
  • ・外国人技能実習生に対し夜勤業務やそのほか少人数での業務あるいは緊急時の対応が求められる業務について、利用者の安全の確保などのために必要な措置を講じている事業所であること

なお、訪問介護などの際には適切な指導体制を取ることが難しいことなどから、技能実習の対象とはなりません。また業務中は昼夜にかかわらず必要となる範囲のなかで介護職員を指導者に配置したうえで、利用者の安全確保に必要となる措置を講じる必要があります。

外国人技能実習生の人数にかかる要件ついて

各事業所の外国人技能実習生はその総数でも要件が設定されています。また常勤介護職員(介護などを主たる業務としておこなう職員)の総数に準じて設定されることから、これを超えてはいけません。そしてこの総数には、たとえ常勤であっても介護などを主たる業務としておこなっていない職員について人数枠算定の基礎からは除外されます。

その他の要件

上記の2つの要件のほかにも、技能実習には要件があります。

技能実習の内容についての要件

技能実習の内容については、外国人技能実習生の入国後の講習として科目や講師についての要件が定められています。また日本語科目と介護における基礎的な事項を身につける介護導入講習について定められている要件は具体的な教育内容とその時間数です。

監理団体についての要件

監理団体についてはその法人形態、技能実習計画の作成および指導、受入人数枠拡大の可否を決定する優良要件に関する定めがあります。

介護職の技能実習生受け入れのポイント

以上のような要件を満たしたうえで、介護職において技能実習生の受け入れでは、次のような点がポイントとなります。

実績のある受け入れ機関を選ぶ

現状、外国人技能実習生の受け入れが団体監理型主流の介護業界にあっては、まずは事業協同組合などの監理団体を探すことからはじめます。

このとき大切なのは、外国人技能実習生の受け入れ実績があり、信頼できる監理団体を選ぶことです。特に介護分野の受け入れが豊富であればなおよいでしょう。

また、介護は単純労働ではなく、コミュニケーションや専門的技術を必要とすることから、介護業界あるいは介護職種にかかわる労務の知識や知見、母国語相談対応といった体制が整っているか、さらには送り出し機関との関係性なども重視すべきです。

信頼できる受け入れ機関を探す

実績とともに重要なのが受け入れ機関の信頼性です。監理団体や送り出し機関によっては悪質なブローカーを使っていたり、賄賂の授受がおこなわれている場合もあります。さらになかには技能実習生から高額の料金を徴収し、多額の借金を負わせるケースもみられることからこうした悪徳業者には注意が必要です。

また選定する受け入れ機関が技能実習機構(OTIT)から過去に重い処分を受けていないかなどチェックしておく必要があります。

受け入れ態勢を整備する

監理団体を通じ、実際に外国人技能実習生の受け入れが決まった時点で、ともに働きながら指導していくのは現場の介護職員となります。このため経営者や人事部門のみで技能実習生の受け入れを決定し、その後は現場任せではいけません。

そこで受け入れの際にはその背景や方針を早い段階でメンバーと共有のうえ、受け入れ以前には技能実習制度そのものや送り出し国、同時に実習生に対する理解や、体制を整備しておく必要があります。

介護分野の外国人技能実習生は在留資格を「技能実習制度」から「特定技能制度」へ移行することはできる?

外国人技能実習制度は日本の介護分野を支えるひとつの柱になることが期待される一方で、在留期間が満了となると外国人技能実習生は帰国しなければなりません。これは外国人技能実習生の位置づけがあくまでも技術を学びにきていることが前提だからです。

しかしながら、貴重な労働力として期待できるようになったにもかかわらず、在留期間の満了とともに外国人技能実習生が帰国してしまうのは介護分野にとって損失となってしまいます。

そこで検討が必要となるのは在留資格の切り替えです。その方法として介護分野における「技能実習制度」から「特定技能制度」への移行があります。

「技能実習生」と「特定技能」の違い

では技能実習制度と特定技能制度はどのような点が異なるのでしょうか。それぞれみていきましょう。

目的

技能実習制度と特定技能制度ではその目的が根本的に異なります。そもそも技能実習制度については国際貢献がその趣旨であるのに対し、特定技能制度はその目的が労働力不足を補うことです。このため労働者とな

外国人は技能実習生よりも多くの業務に携わることができます。また必要とされる能力も高く設定されていることから、特定技能制度の場合、即戦力として外国人材を雇用することが可能です。

対象国

技能実習制度と特定技能制度ではその対象国も異なります。特定技能の在留資格は原則国籍を問わず可能とされますが、送り出し国との間でトラブルを回避するため、受け入れに関しては協定を結んでいるケースが大半です。特にイランとトルコ国籍の外国人については、他国で帰国の命令をされた自国民を入国不可にするため、難民としての受け入れが必要になることから、そもそも特定技能制度の対象国から除外されています。

在留期間

許可されている在留期間についても技能実習制度と特定技能制度は異なります。このうち技能実習は最長で5年間の実施ですが、特定技能であれば1号では通算5年、さらに2号であれば在留期間の上限が撤廃されます

つまり特定技能制度を利用すれば、より長期間外国人を雇用できることになります。

方法

実際の技能実習から特定技能への切り替えについては、まず国内外で実施される試験に合格しなければなりません。そのうえで地方出入国在留管理局へ移行のための申請と書類の提出が必要です。またこの審査の期間はおよそ1~2か月となります。そして、審査に通過すると「特定技能1号」の在留資格認定証明書が発行され、技能実習から特定技能への移行が完了します。

試験内容

上記技能実習から特定技能への切り替えにおける介護分野の試験内容については以下のとおりとなります。

介護技能評価試験

60分/全45問

介護日本語評価試験

30分/全15問

ただし、以下いずれかの条件を満たしていれば、移行に必要な技能試験と日本語試験が免除されます。

  • ・介護分野における第2号技能実習の修了
  • ・介護福祉士養成施設を修了
  • ・EPA介護福祉士候補者での在留期間4年間を満了

「特定技能」に移行させる際の注意点

技能実習生から特定技能への移行は継続的な労働力の確保という点で多くのメリットがあります。しかし一方で注意しなければならない点もあります。

費用の負担増を考慮する

外国人技能実習生が特定技能へ移行すると、給与は「日本人と同等以上」となります。これは特定の技能を有しているという点で合理性がありますが、技能実習生の場合よりもより多くの給与を支払うことになります。

また、技能実習制度から特定技能制度の移行にかかる手続きや登録支援機関への委託も費用がかかります。このため受け入れ側としては費用面での負担が大きくなることを考慮しておかなければなりません。

転職してしまうこともある

特定技能の在留資格は技能実習よりも規制が緩和されることから、外国人であっても一定の範囲内で転職が可能になります。これは外国人側ではメリットといえますが、受け入れ側にとっては労働力の流出につながるため、注意が必要です。

納税や届け出の義務を遵守しているか確認する

特定技能への移行にあたっては外国人が技能実習の期間に納税をきちんとおこなっていたか、また各種届出義務を遵守していたかなどを確認しておく必要もあります。これは、税金の未納や届出義務を怠っていると、技能実習から特定技能への移行の際、審査において不利な要素となってしまうからです。

技能実習2号を「良好に修了」しているか

技能実習から特定技能に移行するには技能実習生が技能実習2号を「良好に修了」している必要もあります。この「良好に修了」とは、技能実習1号開始から2年10か月経過し、能検定3級などの試験に合格しているか、実習先が作成した書面があれば認められます。

まとめ

以上、介護職における外国人技能実習制度と特定技能制度への移行についてみてきました。日本においては団塊の世代が後期高齢者となり超高齢社会を迎える「2025年問題」が目前に迫っています。これにより、介護分野では今後さらなる人手不足に悩まされ、需要と供給のバランスは大きく崩れかねません。

 

そこで外国人材を活用できる外国人技能実習制度や特定技能制度を上手に利用することで人手不足を補い、介護スタッフの負担軽減やひいてはサービスの質の維持などが期待できるようになります。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

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「さむらい行政書士法人」は特定技能ビザなどの入管申請を専門とする行政書士法人です。特定技能ビザ申請のアウトソーシングや、特定技能支援計画の作成支援と支援計画の運用サポートも行っております。

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