介護で働く外国人技能実習生の日本語能力の要件はどれほど必要なのか解説
介護職で働く外国人技能実習生はどれくらいの日本語能力が必要なのでしょうか。
介護現場では、利用者とのコミュニケーションがかなり必要だと考えられますが、果たして外国人技能実習生は、難しい日本語でのコミュニケーションが可能なのでしょうか。
この記事では、介護で働く外国人技能実習生の日本語能力の要件について、詳しく解説します。
技能実習制度とは
技能実習制度とはどのような制度なのでしょうか。
ここでは技能実習制度について説明します。
目的や概要
外国人技能実習制度は、日本の技能、技術、または知識を開発途上国などへ移転して、その国の経済発展を担う人材を育成する目的の制度です。
日本の世界における先進国としての役割であり、国内の人材不足を補う制度ではありません。
<参照:厚生労働省「外国人技能実習制度について」>
技能実習生の受入れ機関により、企業単独型技能実習と、団体監理型技能実習とがあります。
企業の海外支店や、外国の送り出し機関により技能実習生を採用し、日本の企業と雇用契約を結び、技能実習生は日本で働きながら技能や技術を学びます。
技能実習は、1年目の技能実習1号、2~3年目の技能実習2号、4~5年目の技能実習3号とあり、最長5年間日本で技術や技能を学んでもらえますす。
<参照:法務省 出入国在留管理庁 厚生労働省 人材開発統括官「外国人技能実習制度について」>
どんな外国人を技能実習生として採用するのか
技能実習生の要件としては、技能実習制度上、以下の要件が定められています。
18歳以上であること |
技能実習制度の趣旨を理解して技能実習を行おうとする者であること |
帰国後に修得をした技能等が必要である業務に従事する予定であること |
企業単独型技能実習の場合は、申請者の外国にある事業所や申請者と密接な関係がる外国の機関の事業所の常勤職員であり、その事業所から転勤や出向して技能実習を行う者であること |
団体監理型技能実習の場合は、従事しようとする業務と同種の業務を外国において従事した経験を有する、又は技能実習に従事することを必要とする特別な事情があること <介護職における職務要件>
|
団体監理型技能実習の場合は、本国の公的機関から推薦を受けて技能実習を行おうとする者であること |
同じ技能実習の同段階である技能実習を過去に行ったことがないこと |
<参照:平成二十八年法務省・厚生労働省令第三号 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則>
介護職については、介護サービス特有の懸念点から、介護固有要件が定められており、主に日本語能力について厳しい要件が定められています。
<参照:厚生労働省「技能実習「介護」における固有要件について」>
日本語能力の要件
介護職の技能実習生は、どの程度の日本語能力が必要なのでしょうか。
ここでは、介護職の技能実習生についての、日本語能力の要件について説明します。
必要な日本語能力の要件
介護職の技能実習生に必要な日本語能力の要件は以下のとおりです。
第1号技能実習
第1号技能実習では、日本語能力試験のN4に合格している者、もしくは同等以上の能力を有すると認められる者であることが必要です。
第1号技能実習での日本語能力については、入国時にN4レベルであることが要件ではありますが、望ましいレベルはN3以上とされています。
第2号技能実習
第2号技能実習および、第3号技能実習では、日本語能力試験のN3に合格している者、もしくは同等以上の能力を有すると認められる者であることが必要です。
第2号技能実習は入国2年目からスタートしますが、その時点では、N3に合格、もしくは同等レベルの日本語能力を有することが要件となっています。
ただし、N3に合格していない場合でも、介護の技能や知識の修得のために継続して日本語の勉強を続ける意思がある技能実習生が、技能実習を行う事業所において、日本語を学ぶものであれば、第2号技能実習を続けることが可能です。
<参照:厚生労働省「介護職種について外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則に規定する特定の職種及び作業に特有の事情に鑑みて事業所管大臣が定める基準等(平成29年厚生労働省告示第320号)」、「平成31年3月29日 一部改正」>
日本語要件は改正されている
介護固有要件についての告示は平成29年に発出されましたが、平成31年に改正されています。
第2号技能実習の日本語要件は、発出当初はN3以上が必須でしたが、平成31年の改正で、日本語を学ぶ意思と、事業所にて日本語を学ぶことができる条件付きで、N3に合格していなくても第2号技能実習を行えるようになったのです。
日本語能力試験とは
日本語能力試験とは、どのような試験なのでしょうか。
ここでは日本語能力試験について説明します。
「日本語能力検定試験」とは
日本語能力試験は、日本語を母語としない人たちの日本語能力を測定して認定する試験として、1984年に、国際交流基金と日本国際教育支援協会の2団体が共催で開始した試験で、世界中で活用されています。
<参照:日本語能力試験JLPT「日本語能力試験とは、目的と沿革」>
日本語の能力を評価する試験はさまざまなものがあります。
文化庁の調査では、23種類の日本語能力評価試験があげられています。
<参照:文化庁「日本語能力評価・試験等一覧」>
介護職の技能実習において求められる日本語能力試験と同等レベルであることを証明するには、日本語能力試験との比較が明確にされている試験において、同等レベルの試験に合格していることを証明する必要があります。
日本語能力試験との比較表がHPにある試験の例は以下のとおりです。
日本語レベル「N」の目安
日本語能力試験における日本語レベル「N」の目安は以下のとおりです。
レベル |
認定の目安 |
|
---|---|---|
読む |
聞く |
|
N1 |
幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
|
幅広い話題について書かかれた新聞の論説、評論など、論理的にやや複雑な文章や抽象度の高い文章などを読んで、文章の構成や内容を理解することができる |
幅広い場面において自然なスピードの、まとまりのある会話やニュース、講義を聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係や内容の論理構成などを詳細に理解したり、要旨を把握したりすることができる |
|
N2 |
日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
|
幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる |
日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要旨を把握したりすることができる |
|
N3 |
日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
|
日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解することができる |
日常的な場面で、やや自然に近ちかいスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる |
|
N4 |
基本的な日本語を理解することができる |
|
基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる |
日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる |
|
N5 |
基本的な日本語をある程度理解することができる |
|
ひらがなやカタカナ、日常生活で用いられる基本的な漢字で書かれた定型的な語句や文、文章を読んで理解することができる |
教室や、身の回りなど、日常生活の中でもよく出会う場面で、ゆっくり話される短い会話であれば、必要な情報を聞き取ることができる |
N5、N4は学習によって得られる知識を主に測定します。
N2、N1は日常的な生活の中で使われる日本語について測定します。
N3はその間の橋渡し的なレベルになっています。
実際の試験問題を見ると、N1レベルはかなり難しい内容になっていますが、N3レベルは実際にコミュニケーションを取る現場であれば、この程度の日本語能力は必要だと思えるレベルです。
<参照:日本語能力試験「N1~N5:認定の目安」、「新しい「日本語能力試験」問題例集」>
日本語能力試験対策はする?
介護職の技能実習生には必要な要件である日本語能力ですが、入国後N3レベルの日本語能力を得るためには、日本語能力試験対策をする必要があるのでしょうか。
ここでは、技能実習生の日本語学習について説明します。
2年目から厳しくなる日本語要件
日本語能力試験合格が必須条件ではありませんが、技能実習2年目である第2号技能実習からは、日本語要件が厳しくなります。
もともとN3程度の日本語能力を持っている技能実習生であれば、悩むことはないでしょう。
しかし、日本に技能実習生として来ることが決まってから日本語を勉強した技能実習生であれば、N3程度の日本語能力はかなり難しい要件だと考えられます。
技能実習生の日本語学習はおこなうべき?
技能実習生の日本語能力については、N3程度に満たない場合は、技能実習生自身が日本語を学ぶ意思を持つことと、技能実習を行っている事業所において日本語を学んでいることが要件とされています。
つまり、技能実習生の日本語能力については、技能実習を行っている事業所側にも責任があるといえるのです。
技能実習生自身も、日本語を学ぶ意思を持つことが必要です。
ただし、独学で日本語を学ぶには、限界があるのではないでしょうか。
日本介護福祉士会では、実習実施者である事業所の日本語指導者向けに、手引きを作成、公開しています。
<参照:日本介護福祉士会「介護分野の技能実習生の実習実施者の日本語学習指導者向け手引き」>
このようなツールを利用しながら、事業所側からも日本語能力の指導を積極的に行うべきでしょう。
技能実習生が日本語能力を身に着ければ、介護現場で役立つだけでなく、介護福祉士の国家資格取得を目指すことも夢ではないでしょう。
介護福祉士資格が得られれば、技能実習生ではなく「介護」の在留資格で継続的な就労も可能になります。
まとめ
介護職の技能実習生は、介護サービスの特性からくるさまざまな懸念点に対応できるように、介護固有の要件が定められています。
日本語能力はそのひとつで、日本入国時には日本語能力試験N4合格、もしくは同等レベルであることが要件です。
技能実習2年目の第2号技能実習では、日本語能力試験N3合格レベルであることが求められ、かなり難しい要件となっています。
ただし、技能実習生が継続して日本語を勉強する意思を表明し、実習実施者である事業所が日本語を学ばせることを条件として、日本語能力試験N3に合格していなくても技能実習を続けられます。
技能実習生が日本語を勉強することは、介護の技術や知識の向上に役立ち、介護福祉士国家試験受験を目指すことも可能になります。
そのため、技能実習生に日本語を学習させることは、とても重要な教育といえます。
しかし、実習実施者の事業所で日本語教育の専門家が配属されている所は少ないのではないでしょうか。
技能実習生の日本語教育について不安がある場合は、監理団体への相談をおすすめします。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
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