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建設業の技能実習生から特定技能へ移行する方法について解説

外国人が日本で就労できる資格に「技能実習」と「特定技能」があります。名称が似ているため混同してしまいがちですが、制度の目的や内容は大きく異なります。

 

建設業の「技能実習」から「特定技能」への移行を考えている人の中には、

 

「特定技能とは?」

「移行はできる?」

「要件はある?」

 

と疑問をお持ちの方も多いでしょう。

 

2つの制度に違いは多いですが、要件を満たせば移行できるケースもあります。

そこでこの記事では、建設業の「技能実習」から「特定技能」へ移行する方法について解説します。

ぜひ、最後までお読みください。

建設業の技能実習制度とは

技能実習制度は、開発途上地域の発展に貢献できる人材を育成することを目的に創設されました。外国人実習生は、日本で技術や技能を学びながら働き、帰国後は修得したスキルを母国の発展のために活用できます。

 

「技能実習」は、国際協力のための人材育成と技能移転が目的であり、労働力を確保するための制度ではありません。しかし、慢性的な人手不足が課題である建設業界では、外国人実習生の受け入れが増えている傾向にあります。

 

国土交通省のデータによると、2022年10月末時点で建設業に就いている外国人116,789人のうち、70,489人が技能実習生でした。建設業で働く外国人のうち、技能実習生が約60%を占める計算です。

在留資格と期間

技能実習制度で外国人を受け入れる方法は、以下の2パターンです。

●1. 企業単独型:実習実施者が海外の現地法人や関連会社から職員を受け入れて実習を行う

●2. 団体監理型:営利を目的としない監理団体が実習生を受け入れて、実習実施者が実習を行う

企業単独型はあまり利用されておらず、団体監理型での受け入れが全体の9割以上を占めています。

 

在留資格の種類は、上記の受け入れ方法によって異なります。

 

企業単独型

団体監理型

1年目

「技能実習第1号イ」

「技能実習第1号ロ」

2〜3年目

「技能実習第2号イ」

「技能実習第1号ロ」

4〜5年目

「技能実習第3号イ」

「技能実習第1号ロ」

 

在留資格は1号〜3号まであり、1号→2号→3号と順にステップアップが可能です。

 

入国から1年目は「技能を修得」するレベルで、1号に分類されます。

 

入国から2〜3年目は「技能を習熟」する段階で、2号に分類されます。2号へは、学科・実技試験に合格しなければ進めません。

 

入国から4〜5年目は「技能を熟達」するステップで、3号に分類されます。3号へは、実技試験に合格しなければ進めません。加えて、3号の実習が行えるのは、優良認定を受けた企業のみです。

 

3号まで進んだ場合、最大5年間の就労が可能です。2号・3号へ進む段階で試験に落ちてしまうと、実習を終了して帰国しなければいけません。不合格の方は、再試験(1度のみ)が認められています。

建設業で働ける職種

建設業では、以下の22職種・33作業が対象です。

職種

作業

さく井

パーカッション式さく井工事

ロータリー式さく井工事

建築板金

ダクト板金

内外装板金

冷凍空気調和機器施工

冷凍空気調和機器施工

建具製作

木製建具手加工

建築大工

大工工事

型枠施工

型枠工事

鉄筋施工

鉄筋組立て

とび

とび

石材施工

石材加工

石張り

タイル張り

タイル張り

かわらぶき

かわらぶき

左官

左官

配管

建築配管

プラント配管

熱絶縁施工

保温保冷工事

内装仕上げ施工

プラスチック系床仕上げ工事

カーペット系床仕上げ工事

鋼製下地工事

ボード仕上げ工事

カーテン工事

サッシ施工

ビル用サッシ施工

防水施工

シーリング防水工事

コンクリート圧送施工

コンクリート圧送工事

ウェルポイント施工

ウェルポイント工事

表装

壁装

建設機械施工

押土・整地

積込み

掘削

締固め

築炉

築炉

建設業の特定技能とは

「特定技能」は、一定の技能を持った外国人が日本で就労できる在留資格として、2019年に設けられました。「特定技能」では人材を確保するのが難しい産業分野において、一定の専門性やスキルがある外国人を即戦力として受け入れられます。

 

少子高齢化が進む日本にとって、労働力の不足は大きな課題です。特に、建設業における人手不足は深刻です。

 

建設業に人が集まらない要因には、以下のような問題点が挙げられます。

  • ● 労働環境が整っていない

週休2日制でなかったり、長時間の肉体労働であったりと、労働環境の過酷さから人が集まらない傾向にあります。働き方改革により改善はされていますが、建設業におけるマイナスイメージを払拭するまでには至っていません。

  • ● 昔ながらの労働スタイルが若者に合わない

建設業では、働き手の高齢化が進んでいます。「仕事は見て覚えろ」というような昔ながらの労働スタイルの現場も多く、若年層には定着しにくい環境と言えます。

 

こうした状況を打開するために、人材確保を目的として建設分野での特定技能が創設されました。

 

「特定技能」は、2019年に始まった比較的新しい制度ですが、受け入れ人数は増加しています。

出入国在留管理庁のデータによると、2023年2月末時点で特定技能1号での在留外国人は146,002名です。その内、建設業での人数は14,554人で、全体のおおよそ10%を占めています。

 

新型コロナウイルスによる入国制限も落ち着き、今後ますます受け入れ人数は増えていくでしょう。

在留資格と期間

在留資格は以下の2種類に分類されます。

●1. 特定技能1号

特定の産業分野における相当程度の知識・経験・技能を要する業務に従事できます。

在留期間は通算5年間で、1年・6カ月・4カ月ごとに更新が可能です。

家族の帯同はできません。

●2. 特定技能2号

特定の産業分野における熟練した技能を要する業務に従事できます。

在留期間は更新の制限がなく、3年・1年・6カ月ごとに更新が可能です。

条件を満たせば、家族の帯同も認められています。

建設業で働ける職種

「特定技能1号」での受け入れが可能な産業は、以下の12分野です。

「建設」と「造船・船舶工業」のみ、2号でも受け入れができます。

 

  • ●1. 介護
  • ●2. ビルクリーニング
  • ●3.  素材形・産業機械・電気電子情報関連製造業
  • ●4.  建設
  • ●5.  造船・船舶工業
  • ●6.  自動車整備
  • ●7.  航空
  • ●8.  宿泊
  • ●9.  農業
  • ●10.  漁業
  • ●11.  飲食料品製造業
  • ●12.  外食業

     

    建設業での対象職種は、以下の3区分です。以前は、業務区分が19区分と細分化されていましたが、2022年に3区分に統合されました。

     

    1. 土木

    型枠施工・コンクリート圧送・トンネル推進工・建設機械施工・土工・鉄筋施工・とび・海洋土木工など

     

    2. 建築

    型枠施工・左官・コンクリート圧送・屋根ふき・土工・鉄筋施工・鉄筋継手・内装仕上げ・表装・とび・建築大工・建築板金・吹付ウレタン断熱など

     

    3. ライフライン・設備

    電気通信・配管・建築板金・保温保冷など

     

    上記3区分について、想定される関連業務は以下のとおりです。

    • ● 原材料・部品の調達や搬送
    • ● 機器・装置・工具などの保守管理
    • ● 足場の組立て・設備の掘り起こし・そのほかの後工程の準備作業
    • ● 足場の解体・設備の埋め戻し・そのほかの前工程の片付け作業
    • ● 清掃・保守管理作業
    • ● そのほか・主たる業務に付随して行う作業

    技能実習との違い

    どちらも外国人が日本で働ける資格ですが、目的が大きく異なります。

     

    「技能実習」は、日本で学んだ技術を持ち帰り母国の発展につなげる、国際貢献のための制度です。学びながら働けるため、受け入れ時点でのスキルや日本語能力の試験はありません。

     

    「特定技能」は、日本の人手不足を補うために外国人を労働者として受け入れる制度です。即戦力としての能力が求められるため、技能レベルや日本語能力を証明する試験に合格しなければなりません。

    建設業の技能実習から特定技能へ移行することはできる?

    建設業の「技能実習」から「特定技能」へ移行することは可能です。

    移行の条件については後述します。

     

    「特定技能」は、以下の4つの基準それぞれに要件が定められています。在留資格の許可を得るには、各基準の要件すべてを満たさなければいけません。

    • ● 外国人の基準
    • ● 受入機関の基準
    • ● 雇用契約の基準
    • ● 支援計画の基準

    建設業特有の要件

    建設業での受け入れの場合、建設業特有の要件も満たす必要があります。ほかの産業とは違い、建設業では国土交通大臣から計画認定を受けなければいけません。

    認定を受けるための要件は以下のとおりです。

    • ● 建設業法第3条の許可を受ける
    • ● 建設キャリアアップシステムへの登録(受入企業・外国人の双方)

    システムへの登録は1〜2カ月かかるため、早めに準備しておきましょう。手続きは、建設キャリアップシステムのホームページからできます。

    • ● 特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入

    手続きは、建設技能人材機構のホームページからできます。

    • ● 日本人と同等以上の月給制での給料

    報酬は、月給制で安定的に支払わなければなりません。日給制は認められないため、注意してください。

    • ● 「特定技能」と「特定活動」で就労する外国人の人数が、受入企業の常勤職人の人数を超えない

    建設業では、受け入れ人数に制限が設けられています。例えば、受入企業の常勤職員が3名であれば、受け入れが可能な外国人も3名までです。

    特定技能人材の要件

    外国人の方は、以下のすべての要件を満たしていなければなりません。

    • ●18歳以上
    • ● 健康状態が良好
    • ● 退去強制の円滑な執行に協力する外国政府が発行した旅券を持っている
    • ● 保証金の徴収などをされていない
    • ● 外国の機関に費用を払っている場合は、金額・内訳を十分に理解して機関との間で合意している
    • ● 送出国で守るべき手続きがある場合は、その手続きを経ている
    • ● 食費・住居費など外国人が定期的に負担する費用について、その対価として付与される利益の内容を十分に理解した上で合意している、かつ、その費用が実費相当の適正な金額であり、明細書などの書面で提示されている
    • ● 分野特有の基準に適合している

    1号では、以下の要件も必要です。

     

    • ● 必要な技能および日本語能力を有していることが、試験や評価方法によって証明できる
    • ● 「特定技能1号」での在留期間が通算して5年に達していない

     

    2号では、以下の要件も必要です。

    • ● 必要な技能を有していることが、試験や評価方式によって証明されている
    • ● 技能実習生の場合は、技能の本国への移転に努めるものと認められる

    特定技能人材になるには

    特定技能人材になるには、主に以下の2パターンがあります。

    ● 各種試験に合格する
    ● 技能実習から移行する

    各パターンについて、以下で詳しく見ていきましょう。

    試験に合格する

    「特定技能」は、即戦力として働ける専門性やスキルが求められます。技能実習を経ない場合は、一定の技能と日本語の水準を満たさなければなりません。

     

    「特定技能1号」で求められる試験は以下の2つです。

     

    1. 技能試験

    「建設分野特定技能1号評価試験」に合格しなければなりません。

    国土交通省が定めた実施要領に従い、学科と実技によって試験が行われます。

     

    学科試験

    実技試験

    問題数

    30問

    20問

    試験時間

    60分

    40分

    出題形式

    真偽法および2〜4択式

    真偽法および2〜4択式

    実施方法

    CBT方式

    CBT方式

    合格基準

    65%以上

    65%以上

     

    試験のレベルは、技能検定3級相当の水準です。

    図面を読み取り、指導者の指示・監督を受けながら、適切かつ安全に作業を行える技能や理解力が求められます。一定の専門性・技能を用いて即戦力として働くのに必要な知識が問われる試験です。

     

    試験範囲は、対象の業務区分ごとに異なります。範囲の詳細は、建設技能人材機構のホームページから確認してください。試験内容に合わせたテキスト・試験のサンプル問題もダウンロードが可能です。

     

    ここで言うCBT方式とは、コンピュータを使用した試験を指します。受験者は、コンピュータの画面上に表示される問題を画面上で解答します。

     

    試験の申し込み・実施場所の詳細は、建設技能人材機構のホームページから確認してください。

     

    2. 日本語試験

    日常生活レベルの日本語能力が求められます。

     

    以下のいずれかの試験に合格しなければなりません。

    • ● 日本語能力試験 N4以上

    「読解」「聴解」「文法」「語彙」の4技能を、N1〜N5の5段階で測定します。日本では最もポピュラーな日本語能力試験です。

     

    国内での受験は日本国際教育支援協会、海外での受験は国際交流基金が実施しています。

     

    実施日は、毎年7月と12月の第1日曜日の年2回です。

    • ● 国際交流基金日本語基礎テスト A2以上

    JFT-Basicと呼ばれ、就労のために来日する外国人が遭遇する生活シーンでのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定します。

    「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4セクションで構成された問題が約50問出題され、試験時間は60分間です。

     

    試験の申し込みや詳細については、国際交流基金のホームページから確認してください。

    技能実習から移行する

    「技能実習」から移行できる条件は以下のとおりです。

    • ● 「技能実習2号」を良好に修了している

    ここで言う「良好に修了している」とは、「技能実習2号」を2年10カ月以上終了し、技能検定3級もしくは技能実習評価試験の実技に合格、または出勤状況や技能の修得状況を総合的に考慮し判断されます。

    • ● 「技能実習」の職種・作業と「特定技能1号」の業務に関連性がある

    従事しようとする業務が「技能実習2号」の職種・作業と関連していなければなりません。

     

    上記の条件を満たし「技能実習」から移行できる場合は、技能試験・日本語試験は免除されます。

    移行の流れ

    以下は、すでに日本に在留している外国人が「技能実習2号」から移行する流れです。

    1. 「技能実習2号」を良好に修了

    技能試験・日本語試験は免除されます。

    2. 求人に申し込む・職業紹介事業所による求職のあっせん

    3. 受入機関と雇用契約を結ぶ

    受入機関が実施する事前のガイダンス、健康診断の受診も行います。

    4. 在留資格変更許可申請

    在留資格を「技能実習」から「特定技能」へ変更しなければいけません。出入国在留管理局で申請をしてください。必要書類などはホームページから確認できます。

    5. 審査

    変更申請の審査にかかる期間は、通常2週間〜1カ月です。

    6. 就労開始

    在留資格の変更後は、遅滞なく以下を行う必要があります。

    • ● 受入機関などが実施する生活オリエンテーションの受講
    • ● 住民登録
    • ● 給与口座の開設
    • ● 住宅の確保

    まとめ

    この記事では、建設業の「技能実習」から「特定技能」へ移行する方法について解説しました。

     

    「特定技能」は、日本で特に人手が不足している産業において、一定レベルの技能や知識を持つ外国人が就労できるビザの1つです。「技能実習」が国際貢献を目的としているのに対し、「特定技能」は国内の労働力の確保を目的としています。

     

    「技能実習2号」を良好に修了し、従事しようとする業務が「技能実習2号」の職種・作業と関連している人は移行が可能です。移行できる場合、通常「特定技能」で必要とされる試験が免除されます。

     

    人手不足と高齢化が進む建設業では、「特定技能」が問題解決のきっかけになると期待されています。ただし、建設業特有の要件もあるため、申請の際は注意して準備を進めてください。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

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「さむらい行政書士法人」は特定技能ビザなどの入管申請を専門とする行政書士法人です。特定技能ビザ申請のアウトソーシングや、特定技能支援計画の作成支援と支援計画の運用サポートも行っております。

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