外国人が造船業で働くための要件や在留資格(特定活動、特定技能)を解説
人手不足が進んでいる造船業界。
法務省によると、造船・舶用工業分野は2019年度からの5年間で、約22,000人の人手不足が見込まれています。
人手不足を解消するために、外国人労働者を受け入れる「特定技能」に興味を持っている人も多いことでしょう。ただし、特定技能の要件や申請プロセスは煩雑で、正直わかりにくいですよね。
この記事では、特定技能の概要や、外国人造船就労者を受け入れるためのフローについて解説していきます。最後まで読むことで、外国人が造船業で働く際におさえておくべきポイントを理解できますので、ぜひご覧ください。
外国人が造船・舶用工業分野で働くための在留資格とは
在留資格「特定技能」とは、造船・舶用工業分野のような人材不足が深刻化している業界にて外国人が働ける在留資格です。
特定技能には、「特定技能1号」もしくは「特定技能2号」にわかれます。
それぞれの概要や違いについて、説明していきます。
在留資格『特定技能1号』
特定技能1号を取得するために必要な日本語能力や技能水準などについて説明していきます。また、特定技能1号で日本に滞在できる期間や、可能となる業務など、受け入れ機関がおさえておきたいポイントも解説します。
概要
特定技能1号は、業界の知識および経験を相当程度持っている外国人が取得することができる在留資格です。
在留期間は、1年、6か月または4か月ごとの更新となっていて通算で5年間、日本に滞在できます。
特定活動1号では、後ほど紹介する特定活動2号と違って、受け入れ機関もしくは登録支援機関による外国人への支援が必要となる点を覚えておきましょう。登録支援機関とは、政府から認証を受けている機関で、外国人の受入から入国後のサポートを委託できる機関です。
要件
特定技能1号の要件など |
確認方法など |
備考 |
---|---|---|
技能水準 |
試験などで確認する |
業界や業務の知識があるか確認する |
日本語能力水準 |
試験などで確認する |
生活や業務に支障はないか確認する |
家族の帯同 |
認められない |
基本的には認められない |
外国人への支援 |
支援は必要 |
生活オリエンテーションなど |
在留期間 |
1年・6か月・4か月 |
通算で5年間 |
特定技能1号の技能水準については、業務に求められる知識があるかどうか試験などで確認されます。また、生活や業務に必要な日本語力についても試験などでチェックされます。一般的には、日本語能力試験N4以上の日本語力が必要です。ただし、外国人が技能実習生として2号を修了している場合は、技能水準も日本語能力水準も、試験が免除になる点はおさえておきましょう。
特定技能1号では、家族の帯同が基本的に認められません。また、外国人造船就労者への出入国時の送迎や生活オリエンテーションの実施など、受け入れ機関または登録支援機関が支援を行う必要があります。
可能な業務
特定技能1号の外国人労働者が、造船・舶用工業分野において就ける業務は、「溶接・仕上げ・塗装・機械加工・鉄工・電気機器組立て」のいずれかです。建築物内部の清掃の業務であれば造船・舶用工業分野ではなく、ビルクリーニング分野であり、コンクリート圧送の業務であれば建設分野であるように、業務によって特定技能1号の分野も異なります。分野が変わると、申請書類も違う書類を出入国在留管理庁に出さないといけません。
外国人造船就労者を受け入れる前には、自社の業務と「溶接・仕上げ・塗装・機械加工・鉄工・電気機器組立て」のいずれかとマッチしているかしっかり確認しておきましょう。
在留資格『特定技能2号』
次に、特定技能2号の概要や、特定技能1号との違いについても説明していきます。
特に、特定技能1号と2号はよく混乱してしまいますので、わかりやすく解説します。
概要
特定技能2号とは、業界における熟練した技能を持っている外国人が取得できる在留資格です。
在留期間は、3年、1年または6か月ごとの更新となっていて、通算の滞在期間に期限がないのが特徴です。更新が許可され続ける限り、ずっと日本に住むことができるのです。
さらに、特定活動2号では、家族の帯同について要件を満たせば認められることもおさえておきましょう。
『特定技能1号』との違い
要件など |
特定技能1号 |
特定技能2号 |
---|---|---|
技能水準 |
試験等で確認する |
試験等で確認する |
日本語能力水準 |
試験等で確認する |
試験等での確認は不要 |
家族の帯同 |
認められない |
要件を満たせば認められる |
外国人への支援 |
支援は必要 |
支援は不要 |
在留期間 |
通算で5年間 |
通算期間に期限はなし |
特定技能2号では、業界の熟練した技能を有しているかどうか試験等を通して確認されます。一方で、試験等で日本語力を確認されることはないという点は、特定技能1号とは違いますね。
また、要件を満たすと、家族の帯同も許可されるのも特徴ですね。さらに、外国人造船就労者への生活オリエンテーションなどの支援も不要なのもおさえておきましょう。
特定技能1号と2号の一番の違いは、在留期間です。特定技能1号では通算で5年間という期限がありますが、特定技能2号では期限がありません。在留期間の延長が許可される限り、ずっと日本に住むことができるのです。
特定活動(特定技能移行準備)
日本にすでに滞在している外国人の在留資格を変更申請する際に、外国人の在留期限が先にきれてしまうか不安を感じる人もいるでしょう。特定技能1号を申請するときに、書類の準備に時間がかかります。さらに、申請しても結果がでるまでに1か月程度の時間を要することが一般的です。
特定活動(4か月・就労可)という在留資格は、特定技能に移行するまでの時間がない方を対象としたものです。「特定技能1号を申請したいけど、その前に外国人の在留期限がきれてしまうか心配」という方は、この特定活動の申請を検討するといいでしょう。
概要
日本に滞在している外国人の在留資格を「特定技能1号」に変更するときには、現行の在留資格の満了日までに在留資格変更を完了しなければいけません。
「申請書類の準備が間に合わない……」
「事前ガイダンスを行う時間がない……」
上記のように、十分な時間がない人もいるでしょう。そこでおすすめなのが、特定活動(4か月・就労可)という在留資格です。この在留資格が許可されると、外国人造船就労者が会社で働きながら「特定技能1号」への移行手続きを行うことができますよ。
提出期限
在留期間の満了日まで約1か月しかないなら、特定活動(4か月・就労可)を申請するといいでしょう。
「申請理由が合理的かどうか」「特定技能1号の申請を本当に予定しているか」などが出入国在留管理庁に認められると、この特定活動が許可されます。特定活動の申請前には、しっかりと必要書類をチェックしておきましょう。
告示特定活動35号
告示特定活動35号とは、企業の適切な計画を踏まえて造船業務につくことを認めたものです。
特定技能と特定活動の違いは少々わかりにくく、混乱することも多いでしょう。特定技能の趣旨は「人手不足が深刻な業界にて人材を確保すること」である一方、特定活動の趣旨は「外国人のさまざまな活動に対応すること」です。
「外国人のさまざまな活動に対応するための特定活動」では、造船労働のほかに、ワーキングホリデーやインターンシップなども含まれます。
在留資格『特定技能1号』の申請方法
特定技能1号の概要や要件がわかったところで、次に申請方法について説明していきます。特定技能1号を申請する際に、必要となる書類や注意点なども解説しますので、参考にしてみてください。
申請方法
日本に住んでいる外国人の在留資格を、「特定技能1号」に変更するための手続きについて紹介します。在留資格変更許可申請書や雇用の経緯に係る説明書などの書類を出入国在留管理庁に提出することが必要です。
外国人造船就労者に関する書類や受け入れ企業に関する書類など、たくさんの書類が求められますので、なるべく時間に余裕を持って準備を進めることが大切でしょう。
必要書類
特定技能1号を申請するために、必要な書類は以下のとおりです。
【外国人造船就労者に関する書類】
• 特定技能外国人の在留諸申請に係る提出書類一覧表
• 在留資格変更許可申請書
• 特定技能外国人の報酬に関する説明書
• 特定技能雇用契約書の写し
• 雇用条件書の写し
• 雇用の経緯に係る説明書
• 徴収費用の説明書
• 健康診断個人票
• 個人住民税の課税証明書
• 申請人の国民健康保険被保険者証の写し
• 国民年金保険料領収証書の写し
• 1号特定技能外国人支援計画書
• 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
【受け入れ機関に関する書類】
• 特定技能所属機関概要書
• 登記事項証明書
• 業務執行に関与する役員の住民票の写し
• 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
• 労働保険料等納付証明書
• 社会保険料納入状況回答票又は健康保険・厚生年金保険料領収証書の写し
• 税務署発行の納税証明書
• 法人住民税の市町村発行の納税証明書
• 公的義務履行に関する説明書
※証券取引所に上場している企業に関する書類は、四季報の写しまたは上場していることを証明する文書のみとされています。
外国人造船就労者に関する必要書類には、在留資格変更許可申請書や、外国人の報酬についての説明書が含まれます。外国人の報酬については、賃金規定に基づき報酬を決定した場合には賃金規定も合わせて提出することが求められます。
また、外国人の健康状態を確認するために、健康診断個人票が必要です。また、外国人への支援を登録支援機関に委託する場合は、機関との契約に関する説明書も忘れないようにしましょう。
受け入れ機関に関する書類には、特定技能所属機関概要書や登記事項証明書が含まれます。また、健全な企業経営がなされているか確認するために、労働保険料等納付証明書や納税証明書の提出も必要です。
なお、証券取引所に上場している企業の提出資料は、四季報の写しまたは上場を証明する文書だけという点もおさえておきましょう。
申請先
外国人造船就労者に関する書類と、受け入れ機関に関する書類を準備してから、出入国在留管理庁に提出します。
なお、日本に住んでいる外国人ではなく、海外に住んでいる外国人を受け入れる場合は、在留資格認定証明書(COE)を取得するという最初のプロセスが必要です。現地の外国人が、現地の日本領事館にてCOEをもとにビザを申請します。
このように、外国人造船就労者が日本か海外、どちらに住んでいるかで申請プロセスが少し異なりますので、注意しておきましょう。
申請にかかる期間
日本に住んでいる外国人を受け入れるときに必要な期間として、2か月から3か月みておくといいでしょう。特定技能1号で働くまでには、「準備1か月+審査1か月」で計2か月かかるといわれています。ただし、必要書類が足りなかったり書類に不備があったりすると、さらに時間がかかってしまい、計3か月かかるケースもあります。
また、海外にいる外国人を受け入れる場合は、3か月から4か月の期間をみておきましょう。特定技能1号で外国人に自社で働いてもらうときには、余裕をもったスケジュールが大切です。
申請の注意点
特定技能1号を申請するときの注意点は、以下のとおりです。
• 日本で発行される証明書は、3か月以内のもの
• 外国語の提出書類は、訳文を添付する必要あり
• スケジュールに余裕をもたせる
出入国在留管理庁に提出する書類には、納税証明書や登記事項証明書などが含まれます。日本で発行される証明書は、3か月以内のものとされています。また、外国語の提出書類は、日本語の訳文を添付する必要があるので、注意が必要ですよ。
一般的に、特定技能1号の申請には、2か月から4か月かかります。
「何を提出すればいいんだろう……」
「この書類の書き方がわからない……」
複雑な申請プロセスのために、途中でトラブルが起こるかもしれません。予定どおり、外国人を受け入れるために、スケジュールに余裕をもたせておきましょう。
受け入れする企業側も準備が必要
最後に、受け入れる企業がどんな準備をする必要があるのか説明していきます。
• 1号特定技能外国人支援計画
• 外国人雇用の条件
企業は、外国人が日本での生活にスムーズに慣れるように支援する必要があります。さらに、外国人のみ報酬額を低くするような不当な扱いをしないことも大切です。ここでは、外国人支援計画と雇用条件にわけて、受け入れ企業が準備すべきことを説明していきます。
事業者側の「1号特定技能外国人支援計画」
1号特定技能外国人支援計画によると、受け入れ機関は以下の10項目に関する支援が求められます。
1. 事前ガイダンス
2. 出入国する際の送迎
3. 住居確保・生活に必要な契約支援
4. 生活オリエンテーション
5. 公的手続等への同行
6. 日本語学習の機会の提供
7. 相談・苦情への対応
8. 日本人との交流促進
9. 転職支援(人員整理等の場合)
10. 定期的な面談・行政機関への通報
受け入れ企業は、外国人が安心して働けるように労働条件や活動内容に関する事前ガイダンスを行うことが求められます。また、社宅を提供することや、日本のマナーを教える生活オリエンテーションを実施することも大切です。
さらに、日本語学習教材の情報を提供したり、相談を聞く機会を設けたりすることも徹底しましょう。地域のお祭りなどの行事を案内することや、3か月に1回以上、外国人と面談することで、外国人労働者が仕事もプライベートも楽しく過ごせる環境を作っていくことが重要です。
外国人雇用の条件がある
受け入れ企業は、外国人との雇用条件が適正かどうか事前にチェックしましょう。例えば、外国人の報酬額を日本人が働く場合の額と同等以上にすることや、所定労働時間を通常の労働者の時間と一緒にすることが求められます。
また、外国人が一時帰国を希望したなら休暇を取得させてあげること、外国人への支援にかかる費用を本人に負担させないことも大切です。加えて、労災保険関係の成立の届出などの措置を講じているかも重要ですよ。
このように受け入れる企業にも条件がありますので、外国人造船就労者に働いてもらう前に雇用条件を1つずつ確認しておきましょう。
まとめ
この記事では、「特定技能」の概要、外国人造船就労者を受け入れるための手続きや注意すべきポイントについて解説してきました。「特定技能1号」の申請書類は少々煩雑であり、外国人への支援計画や雇用条件など、事前に準備すべきことも多いでしょう。
適切に外国人造船就労者を受け入れて、外国人も御社も日々成長していけるよう願っています。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
無料相談
「さむらい行政書士法人」は特定技能ビザなどの入管申請を専門とする行政書士法人です。特定技能ビザ申請のアウトソーシングや、特定技能支援計画の作成支援と支援計画の運用サポートも行っております。
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