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特定技能外国人の生活オリエンテーション|登録支援機関で行う具体的内容を解説

登録支援機関は、特定技能外国人の受入れ機関と支援委託契約を結び、さまざまな支援を代行します。その1つに「生活オリエンテーション」がありますが、具体的にどのような情報共有が行われるのか、受入れ機関側も理解しておくことが大切です。

 

この記事では、登録支援機関が行う特定技能外国人への生活オリエンテーションについて、詳しい内容を紹介します。

 

なお、登録支援機関の詳細についてはこちらのページ、1号特定技能支援計画についてはこちらのページをご覧ください。

特定技能外国人支援の「生活オリエンテーション」とは

まずは、登録支援機関で実施する生活オリエンテーションとはどのようなものか見ていきましょう。

生活オリエンテーションの概要

生活オリエンテーションとは、特定技能外国人の入国後、受入れ機関が当該外国人に対し行う「情報提供」のことです。外国人労働者の受け入れを行う事業者が自ら実施することが原則とされていますが、支援委託契約を締結した登録支援機関であれば生活オリエンテーションの実施を委託できます。

生活オリエンテーションの目的

生活オリエンテーションは、特定技能ビザを取得した外国人が日本で生活を始めるに当たって必要な情報を伝えるために行います。日本の法律から日常生活におけるさまざまなルール、文化などを事前に理解してもらうことで、トラブルや孤立を防ぎ円滑に生活を始められるようにする目的があります。

 

また、住居やライフライン、通信手段の確保、行政・金融に関する手続など、就業する上で欠かせない契約や届出のサポートも行います。

 

特定技能外国人が安心して日本に移住し、継続的に働くために、生活オリエンテーションはなくてはならないプロセスです。

生活オリエンテーションの具体的内容

生活オリエンテーションに求められる情報提供・サポートは多岐にわたりますが、大きくは6つの項目に分類されます。省令では以下の通り定められています。

当該外国人が本邦に入国した後(当該外国人が他の在留資格をもって本邦に在留している者である場合にあっては、在留資格の変更を受けた後)、次に掲げる事項に関する情報の提供を実施すること。

(1) 本邦での生活一般に関する事項

(2) 法第十九条の十六その他の法令の規定により当該外国人が履行しなければならない又は履行すべき国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続

(3) 特定技能所属機関又は当該特定技能所属機関から契約により一号特定技能外国人支援の実施の委託を受けた者において相談又は苦情の申出に対応することとされている者の連絡先及びこれらの相談又は苦情の申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先

(4) 当該外国人が十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療機関に関する事項

(5) 防災及び防犯に関する事項並びに急病その他の緊急時における対応に必要な事項

(6) 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項

引用元:e-gov:特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令

 

それぞれの項目を詳しく解説します。

日本での生活について

「本邦での生活一般に関する事項」では、以下の情報提供を行います。

 

・金融機関の利用方法

・医療機関の利用方法等

・交通ルール等

・交通機関の利用方法等

・生活ルール・マナー

・生活必需品等の購入方法等

・気象情報や災害時に行政等から提供される災害情報の入手方法等

・我が国で違法となる行為の例

金融機関の利用方法

金融機関での入出金・振込などの方法や利用可能な時間、ATMの使い方や手数料について説明します。

 

通常、出国に際して当該外国人の自己名義の銀行口座が不要になる場合は口座閉鎖の手続を行いますが、将来再び入国するときのため口座を継続利用したい場合は、出国前に銀行に相談することを伝えておきましょう。

医療機関の利用方法等

症状別に利用可能な医療機関を共有し、医療機関での受診方法や保険証を持参しなければならないことなどについて説明します。

 

アレルギーや宗教上の理由により治療に制限がある場合は、そのことを事前に医療機関に伝える必要があることについても注意喚起します。

 

交通ルール等

一般的な交通ルールについて、下記に挙げるような内容を伝えます。

・歩行者は右側通行であること

・車両は左側通行で、歩行者を優先すること

・自転車を運転する際は自転車損害賠償責任保険に加入しなければならないこと

 

また、自動車やバイクなどを運転する場合、運転免許の取得が必要であることの説明も行いましょう。必要に応じてその取得方法や任意保険の加入方法なども案内します。

 

交通機関の利用方法等

特定技能外国人が就労・生活する地域で主に利用される公共交通機関と、その利用方法を伝えます。下記の内容を説明するとよいでしょう。

 

・通勤に最適な公共交通機関

・勤務先までの経路や所要時間

・通勤定期や切符の購入・利用方法

・交通系ICカードの購入・利用方法

 

生活ルール・マナー

特定技能外国人が就労・生活する地域のゴミの廃棄方法について説明します。ゴミの分別方法や出し方、収集日、粗大ゴミの捨て方などを伝えましょう。

 

また、騒音をはじめとした近隣住民の迷惑となる行為についても事前に共有し、トラブルを防ぎます。空き地や畑など、無断で立ち入ってはいけない場所についても共有が必要です。

 

さらに、喫煙には一定の制限があることについて説明し、喫煙所の存在や禁煙とされている場所・状況についても伝えます。

 

生活必需品等の購入方法等

特定技能外国人が就労・生活する地域のスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、家電量販店など、生活に必要な物品を購入できる場所を共有します。

 

気象情報や災害時に行政等から提供される災害情報の入手方法等

気象情報や災害情報が確認できるホームページやアプリを紹介し、情報の入手方法を確認します。気象庁のホームページでは「Other Languages」のページに多言語での情報がまとめられているため、活用できるでしょう。

 

また、当該外国人の出身国が対象となった外国人向けのコミュニティサイトなどがあれば共有します。

 

我が国で違法となる行為の例

日本国内では違法であり、罰則の対象となる行為についての説明も必要です。主に下記のような禁止事項・犯罪となる事項について解説を行います。

 

・銃砲刀剣類の所持(原則)

・大麻や覚せい剤といった、違法薬物の所持など

・在留カードの不携帯

・在留カードや健康保険証などの貸し借り

・自己名義の銀行口座や預貯金通帳、キャッシュカード、携帯電話の他人への譲渡

・ATMで他人名義の口座から無断で現金を引き出す行為

・他人になりすまして宅配便を受領したり、配達伝票に署名したりする行為

・放置されている他人の自転車等を使用する行為 など

 

これら以外にも、共有しなければならない犯罪行為は数多くあります。必要に応じて詳しく紹介するとよいでしょう。

必要な届出や手続方法について

「法第十九条の十六その他の法令の規定により当該外国人が履行しなければならない又は履行すべき国又は地方公共団体の機関に対する届出その他の手続」では、以下の情報提供を行います。

 

・所属機関等に関する届出

・住居地に関する届出

・社会保障及び税に関する手続

・その他の行政手続

 

所属機関等に関する届出

特定技能所属機関とは、特定技能外国人が所属する受入れ機関のことです。下記のような場合には、特定技能外国人が自身の所属機関(受入れ機関)に関する届出を14日以内に行わなければないことを伝えます。

 

・受入れ機関の名称や所在地が変更された

・受入れ機関が消滅した(倒産・事業所の閉鎖など)

・受入れ機関との雇用契約が終了した

・転職し、新たな受入れ機関と雇用契約を締結した

 

住居地に関する届出

特定技能外国人は、日本への上陸後の居住地について届出を行う必要があります。

 

また、在留資格を変更した際や転居した際は、変更が認められた日や転居を行った日から14日以内に届け出なければなりません。合理的な理由なく90日以上届出を行わなかった場合、在留資格が取り消しとなるケースもあるため、注意喚起が必要です。

 

社会保障及び税に関する手続

社会保障や税は、未納がある場合には在留に関する諸申請が不許可になる場合があることに注意が必要です。

 

社会保障に関する手続

健康保険や厚生年金保険に関する手続や制度については、保険料が給与から天引きされることについて説明し、理解を得ることが大切です。

 

また、国民健康保険や国民年金に関して、特定技能外国人が該当制度の適用事業所以外に所属する場合や離職によって切り替えが発生した場合、手続を自身で行わなければならないことについても伝える必要があります。

 

税に関する手続

源泉徴収や、所得税・住民税が原則として給与から天引きされる特別徴収制度についての説明が必要です。また、住民税の納付の仕組みについては、納税義務の発生期間や離職・転職後の納税方法などについての説明を行います。

 

その他

個人番号(マイナンバー)制度の仕組みについて、行政上の用途やマイナンバーの通知方法、身分証明書として利用可能なマイナンバーカード(写真付きICカード)の取得方法などを説明します。

 

マイナンバーカードがあれば、市町村によってはコンビニエンスストアで住民票の写しなどの証明書を発行でき、各種サービスに利用できるメリットがあることも伝えましょう。

 

その他の行政手続

自転車の防犯登録の方法や、盗難・撤去されたときの対応など、その他の行政手続についても確認を行います。

 

なお、これらの届出や手続を特定技能外国人が行う際、登録支援機関は必要に応じて関係窓口へ同行し、書類作成や申請を補助する役割を担います。特に、国民健康保険や国民年金については、外国人自身が手続を行わなければならないため、同行してサポートすることが望ましいとされています。

相談や苦情の申出を行うための連絡先について

「特定技能所属機関又は当該特定技能所属機関から契約により一号特定技能外国人支援の実施の委託を受けた者において相談又は苦情の申出に対応することとされている者の連絡先及びこれらの相談又は苦情の申出をすべき国又は地方公共団体の機関の連絡先」では、以下の情報を提供します。

 

・相談や苦情の申出に対応する担当者の連絡先

・相談や苦情の申出をできる国や地方公共団体の機関の連絡先

 

相談や苦情の申出に対応する担当者の連絡先

受入れ機関からの契約によって特定技能外国人の支援を行う登録支援機関は、外国人の相談や苦情の申出があった際に対応にあたる担当者の連絡先として、次の2つの情報を共有します。

 

・支援担当者の氏名

・支援担当者の電話番号、メールアドレスなど

 

相談や苦情の申出をできる国や地方公共団体の機関の連絡先

特定技能外国人が国や地方公共団体に相談・苦情の申出を行う際の連絡先についても共有が必要です。次の表に挙げる8つの機関の情報を提供します。

 

機関の名称

相談・苦情の内容

地方出入国在留管理局

入国や在留に関する相談

労働基準監督署

残業代を含む賃金の未払や、労働時間・休暇などの労働条件に関する事項、仕事中にけがをしたときなどの労働に関する相談

ハローワーク

失業等給付の受給手続に関する相談、職業相談

法務局・地方法務局

差別やいじめなど、人権に関する問題の相談

警察署

犯罪被害相談や交通事故事件相談など

最寄りの市区町村

住民税、国民健康保険、国民年金や行政サービスに関する相談

弁護士会、日本司法支援センター(法テラス)

民事や刑事などのさまざまな法的なトラブルが生じた場合の相談

大使館・領事館

パスポートの棄損・紛失などの相談

外国人患者の受け入れ体制が整備されている医療機関について

「当該外国人が十分に理解することができる言語により医療を受けることができる医療

機関に関する事項」では、外国人が病気やけがで医療機関を利用する際、不安なく医療サービスを受けられるような情報提供が必要です。

 

伝えなければならないことは下記の通りです。

 

・通訳人や医療機関向けの通訳サービスが導入されているなど、外国人患者の受け入れ体制が整備されている病院の所在地と連絡先

・医療通訳雇入費用などをカバーする民間医療保険への加入案内

 

外国人が緊急で医療機関を利用する際、コミュニケーションが取りづらいことや通訳などに要した費用が上乗せされるケースがあることは、本人の金銭的・心理的負担につながります。安心して医療を受けられるよう、事前の情報提供が重要です。

緊急時の対応について

「防災及び防犯に関する事項並びに急病その他の緊急時における対応に必要な事項」では、特定技能外国人がトラブルに見舞われた際に自ら行動できる知識の共有が求められます。

 

伝えなければならないことは下記の通りです。

 

・トラブルへの対応や予防方法

・緊急時の連絡先や場所、通報・救急要請などの方法

・気象情報・避難指示などの把握方法や災害時の避難場所

 

トラブルへの対応については、地震や台風といった自然災害はもちろん、事件・事故に備える方法、火災の予防や消火器の使い方など、危険から身を守る方法を伝えなければなりません。また、もしものときに外国人が適切な判断のもと命を守れるよう、緊急時・災害時の対応についても丁寧に共有を行います。

 

災害時に対応するための情報提供元として、携帯電話事業者が無料で一斉送信を行う「緊急速報メール」を活用するよう案内することも推奨されています。

の法的保護について

「出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他当該外国人の法的保護に必要な事項」では、外国人の法的保護に関する知識や対処法、困ったことが起きた際の連絡先などについての情報共有を行います。

 

伝えなければならないことは下記の通りです。

 

・入管法令や労働関係法令に関する知識

・入管法令や労働関係法令への違反がある場合の相談先と連絡方法

・特定技能雇用契約に反することが行われた場合の相談先と連絡方法

・人権侵害があった場合の相談先と連絡方法

・年金の受給権や脱退一時金制度に関する知識と、それらの相談先・連絡方法

 

外国人が法的に認められた制度を利用したり、権利を行使したりする際はもちろん、権利を侵害されたと感じたときに自ら助けを求められる環境を提供することが求められます。

生活オリエンテーションに関する注意点

生活オリエンテーションの実施に際し、注意しなければならないことはいくつかあります。

当該外国人が十分に理解できる言語で行う

生活オリエンテーションは、特定技能外国人が不自由なく日本で生活できるよう実施します。内容が伝わってこそのオリエンテーションといえるため、実施の際は当該外国人が十分に理解できる言語で行うことが原則です。

 

登録支援機関によって、複数の言語での生活オリエンテーションに対応していることがあります。必要に応じて当該外国人の母国語に対応している登録支援機関への依頼を検討しましょう。

8時間以上、支援体制を整えて実施する

生活オリエンテーションは、最低でも8時間以上行うことが義務付けられています。また、特定技能外国人が内容を十分に理解し、不安なく生活を始められるようにすることが目的であるため、納得できるまで丁寧に教えることが大切です。

 

動画の視聴やテレビ電話を用いた生活オリエンテーションの実施も認められていますが、特定技能外国人が疑問を持ったり理解できなかったりするポイントについては、質問しやすく、すぐに回答できる体制を整えていなければなりません。

 

なお、同一事業所の技能実習生が特定技能ビザに変更して業務を継続するような場合は、時間を短縮することが可能です。ただし、その場合も4時間以上行わなければ、適正な生活オリエンテーションが行われたと認められないケースがあります。

必要に応じて手続に同行する

行政手続や住居・通信手段の契約などを行う際、特定技能外国人だけでは書類作成や内容の理解が困難な場合があります。こうした場合、窓口の案内や説明だけでなく、実際に手続に同行してサポートを行うことが求められます。

 

特に国民健康保険や国民年金に関しては、特定技能外国人自身が手続を行わなければならず、未納があると在留期間の更新や在留資格の変更が不許可になることもあるため、同行して書類作成・提出を補助することが望ましいでしょう。

実施後は「生活オリエンテーションの確認書」に署名してもらう

生活オリエンテーションを実施し、完了した際は、特定技能外国人が「生活オリエンテーションの確認書」への署名を行います。確認書は、出入国管理局で配布されている雛形を使用するとよいでしょう。

 

確認書への署名は義務化されているため、日時についても忘れずに記載します。

まとめ

生活オリエンテーションは、特定技能外国人が職場・日常生活ともに支障なく、安心して過ごせるようにするために行う重要なプロセスです。

 

支援委託を受けた登録支援機関は、省令に基づくサポートを漏れなく丁寧に行い、特定技能外国人の支援に努めなければなりません。そのためには当該外国人の母国語による説明を行ったり、手続・契約などの窓口に同行したりといったきめ細やかな配慮が必要です。

 

生活オリエンテーションの適正な実施は、特定技能外国人の孤立を防ぎ、心配事のない快適な生活をサポートすることにつながります。時間をかけて取り組めば、特定技能外国人の早期離職やトラブルを防止する手段になり得るでしょう。

 

さむらい行政書士法人は、特定技能ビザ取得の支援を行っています。外国語に堪能なスタッフも在籍しているため、コミュニケーションに懸念を感じている場合も安心です。まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応

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