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農地の相続手続と遺産分割協議書の書き方

農業を営んでいた人(親等)が亡くなり、遺族(子供など)が亡くなった人の残した農地を相続するようなケースがあると思います。

 

農地の相続は、宅地など農地以外の土地を相続する場合と違い、注意をしなくてはいけないポイントがあります。そのポイントは「農業委員会への届出」になります。

 

農地の相続手続きの流れをザックリと説明すると、

①遺言書の有無と内容確認

亡くなられた人が遺言を残していないか? また遺言書があった場合は、その内容を確認します。遺言書がある場合は、農地を遺族の中の誰が相続するのか指定があれば、その遺族が原則として相続をする事になります。

②相続人調査・相続財産調査

亡くなられた人が農地以外にもどのような種類の遺産(相続財産)を残していたか?また、亡くなられた人の農地を含め、残した遺産を誰が相続する権利があるのか?   相続ができる権利のある遺族を見定めるための調査をします。

③遺産分割協議(遺産分割協議書の作成)

相続財産(遺産)と遺産を相続する権利のある遺族が分かったら、遺産を誰がどのように相続するかを協議し、その議事録を作ります。亡くなった人が遺言書を残していて、その遺言書ですべての遺産について遺族のうちだれが相続するか指定してある場合以外は遺産分割協議をする必要があります。

④農地の名義変更

農地も宅地と同じ「土地」という遺産になりますので、名義変更が必要になります。これは法務局で名義変更が必要になります。この名義変更のことを「所有権の変更登記」といいます。

なお、登記手続きは、司法書士でなければ代行できません。

⑤農業委員会への届出

農地を相続して、名義を変更した場合は、その農地のある市区町村の農業員会に届出が必要になります。

⑥相続税の申告

亡くなった被相続人の遺産の価格によっては、相続税の申告を税務署に行い、相続税を納付する必要があります。

以上が農地を相続した場合の流れになります。

農地の相続特有の点としては、⑤の「農業委員会への届出」になります。一般の宅地などの土地の場合は農業員会への届出は必要ではありません。

 

なぜ農地の場合だけこのような届出が必要なのでしょうか?

 

農地には農業法という法律の規制がからんできます。通常農地の名義変更(所有権の変更=権利の移転)には農業委員会の許可が必要になります。例えば所有する農地を他人に売って、その他人がその農地で引き続き農業を行う場合等のケースです。

 

また、農地を他人に売って、その他人がその農地を農業以外の目的で使用する場合はその農地のある都道府県知事の許可が必要になります。

 

農業法という法律は農業の生産力を保護するための法律で、個人が勝手に農地を売買したり、農業以外の目的で使用してしまうと、農地が減り、農業の生産性が低下してしまう恐れがあるため、農業法で農地の権利移転を管理しているのです。

 

「許可」と「届出」の違いは一言でいえば、「許可」は必ず認められるものではなく、不許可にされる場合があり、「届出」は出せば必ず認められるものです。そのため一般的には「許可を得る」方が難しいということになります。

 

農地の権利移転は通常は「許可制」ですが、相続など一部の理由による場合は「届出」で良いとされています。相続の場合は特別に優しく見てあげるよ。ということです。

 

ちなみにこの農業委員会への届出は、相続してから10か月以内にしなくてはいけません。この10ヶ月を守らないと罰金を取られることもありますので、ご注意ください。

農業委員会への届出は、農業委員会から届出書を入手して、必要事項を記入して提出する必要があります。

また、遺産分割協議をした結果、相続をすることになった際の注意事項として、「遺産分割協議書」の書き方があります。

 

遺産分割協議書は、だれがどの遺産をどれくらい相続するのかを決める遺産分割協議の議事録となりますので、その記載の内容は明確に記載していく必要があります。

 

そのため、遺産分割協議書に記載する農地の情報は法務局で農地の登記簿謄本(全部事項証明書)をまず入手して、その登記簿謄本を見ながら、農地の所在地や地番、地目、地積(土地の面積)を正確に記入する必要があります。

 

 

 いかがだったでしょうか?農地の相続手続きについてお分かりいただけたでしょうか?
相続手続に必要な書類の収集や、遺産分割協議書の作成、農業委員会へ届出は行政書士等の専門家に代行してもらう事も可能です。相続手続きを行う際は行政書士に依頼をする事をお勧めいたします。