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胎児が相続人の場合の遺産分割協議書の作り方

相続が始まったときに、あなたや、奥様が妊娠していた場合、赤ちゃんは相続人になれるのでしょうか?また、遺産分割協議書はどのように作るのでしょうか?

 

ここでは、胎児(まだお腹の中にいる赤ちゃん)がいる場合の遺産分割協議書の作り方について解説をしていきます。

 

遺産分割協議書例(不動産をお母さん名義にする場合)

 

遺産分割協議書

 

被 相 続 人

相続太郎(令和◯年◯月◯日 死亡)

最期の本籍 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地

最後の住所 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯号

登記簿上の住所 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯号

 

上記被相続人の死亡により開始した相続の相続人である 相続花子、及び 相続一郎の特別代理人 特代太郎 は、その相続財産について、次の通り分割を協議し、決定した。なお、本遺産分割の趣旨は、未成年者の子どもの養育費や生活費にあてるため後記不動産を売却することを目的とし、便宜的に相続花子へ登記名義を移すものとする。

 

1. 次の不動産は、A野花子が取得する。

 

建物

 所 在    ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯

 家屋番号   ◯◯番◯の2

 種 類    居宅

 構 造    木造瓦葺2階建

 床面積    1階 72.21㎡  2階 59.20㎡

 

建物

 所 在    ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯

 家屋番号   ◯◯番◯の3

 種 類    店舗・居宅

 構 造    木造瓦葺2階建

 床面積    1階 77.33㎡  2階 45.32㎡

 

以上証明のため、相続人及び特別代理人は本書を作成し、署名押印する。  

 

令和◯年◯月◯日

 

住所 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯号     

相続人 相続花子    印

 

住所 ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯号     

相続人相続一郎の特別代理人 特代太郎    印

 

まず、大まかなポイントしては、以下の点を抑えておきましょう。

 

1. 遺産分割協議書は胎児が生まれた後に行う。

2. 遺産分割協議のために、赤ちゃんには特別代理人を付ける。

3. 赤ちゃんが相続する財産が、法定相続分より少ない場合、合理的な理由を書く。

ではここから、解説に入ります。

遺産分割協議書は生まれた後!

まず、遺産分割協議書は、赤ちゃんが生まれた後に行いましょう。なぜなら、赤ちゃんがまだ胎児の時に遺産分割協議書を作成しても、万が一死産で生まれてきた場合、協議が一からやり直しになってしまうためです。

 

どういうことか簡単に説明をすると、赤ちゃんは、お母さんのお腹の中から体が外に出た時点で、法的な権利を持つことになります。

つまり、一度生きて産まれてから亡くなった場合には、一度権利を取得したあとに権利を失うことになります。

 

一方で、お母さんのお腹の中で死んでしまえば、一度も権利を持たずに亡くなってしまったということになります。

 

これがもたらす違いは次のとおりです。

(生きて産まれてから亡くなった場合)

A男とB子には妊娠中の第一子が居ました。しかしA男が亡くなり、相続が開始。その後B子は無事に出産をしたものの、赤ちゃんもすぐに亡くなってしました。この場合、最初に亡くなったA男の遺産を相続するのは、B子と生きて産まれた赤ちゃんになります。その後、赤ちゃんが亡くなったため、赤ちゃんの遺産をB子が全て相続し、最終的にはA男の遺産は全てBに子に渡ることになります。

(お腹の中で亡くなった場合)

A男とB子には妊娠中の第一子が居ましたが、A男が亡くなり、それに続いて、赤ちゃんもお腹の中で亡くなってしまいました。この場合、赤ちゃんは相続する権利を一度も持たずに亡くなってしまったので、A男の遺産の相続人は、B子だけでなくA男の親や兄弟になる可能性があります。

お母さんは代理人になれない!

さて、赤ちゃんが無事に産まれてきてくれたら、次は遺産分割協議書の作成です。

 

でも、生まれたての赤ちゃんはまだ物事を判断できないので、代わりに遺産分割協議に参加する代理人が必要になります。

 

ここで、気をつけなければいけないのが、お母さんは赤ちゃんの代理人にはなれないということ。普通の感覚ではお母さんは赤ちゃんの代理人になれると思いがちですが、法律では違うのです。

 

例えば、お母さんが赤ちゃんの代理人として遺産分割協議書を作成した時に、赤ちゃんの財産を全て自分のものにするという内容で、赤ちゃんに不利な遺産分割協議書を作れてしまいます。

 

そうならないよう、赤ちゃんのために、裁判所で「特別代理人」という人を選任してもらわなければなりません。

なお、裁判所への申立は弁護士又は司法書士でなければ代行できません。

 

裁判所で特別代理人選任申立てを行う際には、「遺産分割協議書(案)」というものを同時に提出する必要があります。

 

これは裁判所が、親の都合の良いように遺産分割協議書が作られていないかを事前にチェックするためです。

 

そこで抑えるべき作成ポイントとしては、

「なお、本遺産分割の趣旨は、未成年者の子どもの養育費や生活費にあてるため後記不動産を売却することを目的とし、便宜的に相続花子へ登記名義を移すものとする。」

のように、「赤ちゃんが相続する財産は、法定相続分より少ないけど、これは赤ちゃんの利益を害するためじゃないですよ、ちゃんとした理由があるんですよ」という理由の説明を遺産分割協議書に組み込むことです。

 

これをすることで、特別代理人が選ばれ、無事に遺産分割協議を終えることが出来ます。

 

 もしご自身でこれらの作成を行うのが難しいと感じるようであれば、専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身で手続きできるのかどうか等を比較しながら、検討してみてください。