相続財産目録の作成は義務なの?
相続財産目録は必ず作らないといけないのでしょうか?
相続人間の関係性や相続財産の量は人によって様々だと思います。中には、相続人はみんな仲良しで、相続財産もあまり多くないという場合もあるでしょう。
結論から言ってしまうと、相続財産目録は基本的に作成義務はありませんが、相続人間の仲が良かったとしても、相続財産が複数あるのであれば将来のトラブル防止のため作成することがおすすめです。
相続財産目録は作成義務がない!
「財産目録」は破産手続きや会社の精算手続きなど、相続以外のシーンでも登場する書類です。これらの手続きでは財産目録の作成は義務となっていますので、財産目録というワードで検索をして、混乱されている方もいるかもしれません。
しかし、相続に関連する「財産目録」に限って見てみると、次のケースを除くと、相続財産目録は作らなくても大丈夫です。
・不在者財産管理人の選任を申し立てる場合
・遺言執行者(遺言書通りに遺産を分けなければならない人)が選任された場合
・相続を限定承認する場合(プラスの財産-マイナスの財産の分だけ相続をする)
これ以外の、例えば、故人が生前に財産目録を作成しておくことや、相続人が亡くなった方の相続財産目録を作成する場合は、法律で義務付けられているわけではなく、あくまで自主的に行うものとなっています。
しかし、実際には相続財産目録を作ることにはちゃんとした意味がありますので、次はその点について説明をしてきます。
相続財産目録を作成するのは簡単、しかもメリットだらけ!
相続財産目録の作成義務は自分が遺言執行者にでもなっていなければ作成義務はない、ということはお分かり頂けたと思いますが、そうでなくても、相続財産目録は作成することをおすすめします。
相続財産目録を作成することで得られるメリットは次のとおりです。
(生前に作成)
・相続人に遺産の内容を知らせられる。
・相続人が相続財産調査をしなくて済む。
・財産を把握しておくことで生前から相続税対策が出来る。
(相続開始後に作成)
・相続をするか、相続放棄をするかの判断材料になる。
・相続税の申告が必要かを知れる。相続税対策の検討に使える。
・相続人全員が遺産の全容を知ることで後々のトラブルを防げる。]
こうして並べてみると、かなり沢山のメリットがあるように思えます。
例えば、生前に相続財産目録を作成することのメリットの一つ、「相続人が相続財産調査をしなくて済む。」については、相続人にとってかなりの負担軽減になります。
自分の所有している財産を一覧にまとめるのは、比較的簡単でしょう。というのも、自分がどのような財産や借金を持っているのかは分かっているものですし、存在が分かっていれば、あとは書類を見ながら情報を書いていくだけで完成します。
一方、相続人が故人の死後に相続財産目録を作成するには、まず相続財産調査から始めなければいけません。相続人も亡くなった方と一緒に住んでいないという場合もあるでしょうし、そんな時には、遺品整理をしながら、預金通帳や土地の権利書、保険証書、借用書などの手がかりをもとに、各取引先や役所に照会をかけながら財産を特定していく必要があります。
亡くなられる方が事前に相続財産目録を作成していると、残された遺族の負担も軽減され、きっと喜ばれることでしょう。
次に、相続開始後に相続財産目録を作成することのメリットとして「相続をするか、相続放棄をするかの判断材料になる。」というものを見てみると、まず、一口に遺産と言っても現金や不動産などのプラスの財産に加えて、借金のようなマイナスの財産が存在します。もし、マイナスな財産がプラスの財産よりも多い場合には、相続をして借金だけ残ってしまったということにもなりかねません。
そういった場合に、相続の放棄をすることが出来るのですが、これの期限が相続開始から3ヶ月で、それまでに裁判所で手続きをしないといけません。
なお、裁判所の手続きは弁護士又は司法書士でなければ代行できません。
遺産の全容が分からない状態では、相続をすべきか、相続を放棄すべきか、正確な判断はできませんよね。ここで相続財産目録を作成しているとプラスの財産とマイナスの財産の金額の差が一目瞭然ですので、その判断に役立つという訳です。
その他にも、相続人全員がどのような遺産がどれくらいあるのかというのを把握しておくことで、後々そんな財産しらない!などと蒸し返されることも防げますし、相続人間のトラブル防止にもなります。
さて、ここまで、相続財産目録の作成は義務なのかどうかについて、そして相続財産目録作成のメリットについて解説をしてきました。
もし、興味はあるけど自分でやるのはちょっと、、と不安と感じるようであれば、行政書士などの専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、将来のリスクや、そもそも自分自身で手続きできるのかどうか等を比較しながら、検討してみてください。