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相続財産に漏れがあったら遺産分割協議書は無効?

相続手続きで、遺産分割について相続人の間で協議がまとまり、遺産分割協議書を作成したあと、相続財産に漏れがあることがわかったら、作成済みの遺産分割協議書はどうなってしまうのでしょうか?

 

ここでは相続財産に漏れがあったら遺産分割協議書は無効?という疑問にお答えしていきます。

遺産分割協議書はやり直しできない

基本的に、遺産分割協議書はやり直しができません。きちんと相続人全員の間で合意し、全員の署名押印のある遺産分割協議書が作成されたあとで、「やっぱり気がかわった」とか、「もう一度協議したい」と思ってもやり直しはできません。これは、あとで遺産分割協議書に記載のない相続財産が見つかった場合も同じです。

 

ですので、漏れていた相続財産があとで出てきても、遺産分割協議書は無効にはならず、あとで見つかった財産について改めて遺産分割協議を行うことになります。

例外的に無効になる場合

ただし、遺産分割協議書が例外的に無効になることがあります。無効になるのは、以下のようなケースです。

 

① あとで見つかった相続財産が非常に重大であった場合

② 詐欺や強迫によって遺産分割協議が行われていた場合

 

2の詐欺や強迫による場合に無効になるというのは、そりゃあそうだろうと思うような事例ですが、①の、「あとで見つかった相続財産が非常に重大」というのはちょっとわかりづらいかもしれません。

 

実際に裁判で無効になるのは、漏れていた財産のことがわかっていれば、当然その遺産分割には合意しなかったであろうというような場合に限定して認められています。

 

それでは、以下の図のようなケースを想定して遺産分割協議書を見てみましょう。

【法務局の相続関係説明図 記載例】

 

亡くなった法務太郎さんには、奥さんと子供2人がいますので、相続人はこの3人です。このとき、遺産分割協議の結果、土地建物(合計評価額2000万円)を奧さんの法務花子さんが相続し、預貯金と株式(合計評価額1500万円)は法務一郎さんが相続、法務貴子さんは不動産や預貯金を相続しない代わりに2人からお金を500万円ずつ、合計1000万円もらうことで合意したため、以下の内容で、遺産分割協議書を作成しました。

 

遺産分割協議書(例)

 

被相続人法務太郎(令和元年6月20日死亡)の相続財産について、被相続人の相続人全員は、協議の結果以下の通り分割することに合意する。

 

第1条(土地・建物)

相続人法務花子は以下の土地・建物を取得する。

【土地】

所   在  東京都台東区〇〇町〇丁目

地   番  000番

地   目  宅地

地   積  500.00㎡ 

 

【建物】

所   在  東京都台東区〇〇町〇丁目

家屋番号   123番

種   類  木造

構   造  瓦葺2階建

床 面 積  1階  100.00㎡

       2階   50.00㎡ 

 

第2条(預貯金・株式)

相続人法務一郎は以下の預貯金および株式を取得する。

【預貯金】

1. ○○銀行○支店  普通預金  口座番号00000000 

2. ○○銀行○支店  定期預金  口座番号00000000 

3. ××銀行×支店  普通預金  口座番号00000000

4. △信用金庫△支店 普通預金  口座番号00000000

 

【株式】

〇〇証券〇〇支店の被相続人口座の株式

1. 〇〇株式会社   株式1000株

2. △△株式会社   株式2000株

その他、〇〇証券〇〇支店に預託している被相続人名義の全財産

 

第3条(代償分割)

相続人法務花子及び法務一郎は、土地建物、預貯金および株式を相続する代償金として、法務貴子に対し、それぞれ金500万円を支払う。

 

上記のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証するため、本協議書を3通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

令和元年6月30日

 

住所

氏名 法務花子      実印

 

住所 

氏名 法務一郎      実印

 

住所

氏名 法務貴子      実印

 

このように遺産分割協議書を作成したあとで、亡くなった法務太郎さんには第2条で法務一郎さんが相続することになっているものの他に、上場会社の株式が財産としてあったことが発覚したとしましょう。

 

このとき、株式の評価額が百万円程度であれば、この株式について改めて遺産分割を協議することになり、既に決まっている遺産分割協議書は無効にはならないでしょう。

 

一方、実は亡くなった法務太郎さんは家族に内緒で会社のオーナーとなっており、その株式の評価額は1億円以上であった、というような場合はどうでしょうか。

 

第2条で、その他の株式は長男の一郎さんが相続することになっていますから、この遺産分割協議書どおりに一郎さんが全ての株式を相続するとすれば、他の相続人にあまりに不公平ですし、他の相続人は、このような事実が初めからわかっていればこの遺産分割協議書に合意するわけがないと言えそうです。

 

従って、このような場合は遺産分割協議書を無効とし、最初から協議し直すことになりそうです。

 

 

 いかがでしたでしょうか。相続財産に漏れがある場合の遺産分割協議書について見てきましたが、そのような場合も遺産分割協議書は基本的に無効にならず、無効となるのは非常に例外的なケースであることがわかってもらえたかと思います。
もし自分で遺産分割協議書を作成するのが難しいと思う場合は、行政書士等の専門家に依頼すると、代わりに作成してもらうことができます。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。