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遺産分割協議証明書と遺産分割協議書の違い

相続手続きで、銀行預金の解約や名義変更を行う際に、遺産分割協議書を提出してください、と言われることがあるかと思いますが、遺産分割協議書ではなく、「遺産分割協議証明書」というのはあまり聞いたことがないかもしれません。

 

ここでは遺産分割協議証明書と遺産分割協議書の違いについて解説していきます。

遺産分割協議証明書とは?

遺産分割協議書とは、相続人全員の間で合意した、誰が何をどれだけ相続するかについての内容を書面にし、相続人全員がこれに署名押印したものです。

これに対し、遺産分割協議証明書は、内容は遺産分割協議書と同じものですが、相続人全員ではなく、相続人の一人が署名押印したものをいいます。

相続人全員で一つの書類に署名押印をするか、相続人一人ずつが自分用の書類に署名押印したものを全員分作るか、の違いです。

遺産分割協議証明書を作成するメリットは?

それでは、遺産分割協議証明書を作成するメリットがあるのは、どのような場合でしょうか。

 

①相続人同士が日ごろあまり連絡を取っていない

②相続人の人数が多い

③相続人の中に対応が遅かったり、あまり協力的でない人がいる

 

このようなケースでは、遺産分割協議書にすると、やり取りに日数がかかったり、誰か一人のところで止まったりして書類が完成しなくなってしまうことがありますが、遺産分割協議証明書にすることで、自分の署名押印をして遺産分割協議証明書を完成させた相続人は、取りまとめ役の相続人にそれぞれ書類を送ればよいので、対応の遅い相続人は後回しにして書類の準備をできるとこから進めておくことが可能です。

 

逆に、相続人があまりいない場合や、相続人がたくさんいても日ごろから連絡をよく取っている場合は、遺産分割協議書を作成すれば問題ありません。

 

それでは、以下のケースを想定して、実際に遺産分割協議証明書を見てみましょう。

【法務局の相続関係説明図 記載例】

 

亡くなった法務太郎さんには、奥さんと子供2人がいますので、相続人はこの3人です。
このとき、遺産分割協議の結果、借地家のある土地(評価額3000万円)と太郎さんが所有する建物(評価額3000万円)を奧さんの法務花子さんが相続し、預貯金と株式(合計評価額2000万円)は法務一郎さんが相続、法務貴子さんは不動産や預貯金を相続しない代わりに花子さんからお金を2000万円もらうことで合意しました。
法務花子さん、法務一郎さんは同居していますが、法務貴子さんとは日ごろあまり連絡を取っておらず、やり取りもないため、遺産分割協議証明書を作成することにしました。以下の例は、法務貴子さんに署名押印してもらう遺産分割協議証明書です。

 

遺産分割協議書(例)

 

被相続人法務太郎(令和元年6月20日死亡)の相続財産について、被相続人の相続人全員は、協議の結果以下の通り分割することに合意する。

第1条(土地・建物)

相続人法務花子は以下の土地の借地権及び建物の所有権を取得する。

【借地権】

賃 貸 人  上野 市子

借 地 料  月額 金15万円

所   在  東京都台東区東上野〇丁目

地   番  000番

地   目  宅地

地   積  100.00㎡ 

 

【建物】

所   在  東京都台東区東上野〇丁目

家屋番号   123番

種   類  木造

構   造  瓦葺2階建

床 面 積   1階   60.00㎡

      2階   30.00㎡ 

 

第2条(預貯金・株式)

相続人法務一郎は以下の預貯金および株式を取得する。

【預貯金】

1.○○銀行○支店  普通預金  口座番号00000000 

2.○○銀行○支店  定期預金  口座番号00000000 

3.△信用金庫△支店 普通預金  口座番号00000000

 

【株式】

〇〇証券〇〇支店の被相続人口座の株式

1. 〇〇株式会社   株式1000株

その他、〇〇証券〇〇支店に預託している被相続人名義の全財産

第3条(代償分割)

相続人法務花子は、土地の借地権及び建物の所有権を取得する代償金として、法務貴子に対し、金2000万円を支払う。

上記のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証するため、相続人法務貴子は、本書に署名押印をする。

令和元年6月30日

 

住所

氏名 法務貴子      実印

 

この遺産分割協議証明書に、法務貴子さんが署名・押印して取りまとめ役の相続人に送付し、取りまとめ役の相続人は全員分の遺産分割協議証明書を役所に提出します。

 

また、この例で遺産分割協議書を作成する場合、遺産分割協議証明書と記載が異なるのは、赤字にした3か所です。

・タイトル

→遺産分割協議書の場合は、「遺産分割協議書」とします

・相続人全員で合意が成立したことを法務貴子さんが証明する旨の文言

→遺産分割協議書の場合は、相続人全員が合意の成立を証明し、各自が署名押印する、と記載します

・署名押印欄

→遺産分割協議書の場合は、全員が署名押印します。

 

 

 いかがでしたでしょうか。遺産分割協議書と遺産分割協議証明書の違いについて見てきました。どちらを作成するかは、相続人間でスムーズに作成できる方を選ぶと良いでしょう。もし、どちらを作った方が良いか迷ったり、自分で書類を作成するのが難しいと思ったりする場合は、行政書士等の専門家に相談してみると良いでしょう。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。