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遺産分割協議と相続放棄の違い

ご家族が亡くなったとき、相続財産をもらわずに別の相続人にすべて相続させてあげたいと思っている場合や故人に借金がたくさんあったなど、様々な理由で相続をしない決断をされている方もいらっしゃると思います。

 

こういった場合の遺産分割協議で事実上相続放棄する方法と、法的に相続放棄の手続きをする場合の違いについて説明していきます。

遺産分割協議とは?

遺産分割協議とは、相続人の間で「誰が何を相続するのか」を決めることです。こうして決めたことを書面にして署名押印したものを『遺産分割協議書』といいます。

 

相続人間で遺産分割協議書を作れば、そこで決めた内容は他の相続人に主張することができます。

 

また、預金等を相続するときは、銀行に遺産分割協議書を提出すれば、銀行も相続する権利を持っている人をそれで確認できますので、相続手続きを進めることができます。

相続放棄とは?

相続放棄とは、家庭裁判所でする手続きになります。この手続きをすることで、相続放棄をした人は、「もともと相続人ではなかった」として扱われることになります。

 

そのため、借金の返済義務等も放棄することができます。

 

すべての権利・義務を放棄することになるので、「この不動産だけ相続して、他は相続放棄する」というようなことはできません。

借金を負いたくない場合は相続放棄の手続きを!

遺産分割協議で「預金も不動産も一切相続しない代わりに借金も負わない」と決めたとしても、それは相続人以外の人に主張することはできません。

 

例えば、亡くなった方にお金を貸していた銀行等は、相続人ではありませんので、相続人全員に返済を請求することができます。

一方、裁判所で相続放棄をしていれば、「もともと相続人ではない」ということになりますので、銀行もその人には返済を請求することはできないのです。

 

ですから、「財産も負債も相続したくない」という場合には、相続放棄をした方が安心です。

 

借金はないから大丈夫!と思っていた場合にも後から知らなかった借金の返済を請求されることもあるので、面倒ですが、相続放棄の手続きをするようにしましょう。

他の相続人に相続させてあげたい場合は遺産分割協議のほうがいい場合も!

相続させてあげたい人がいる場合には遺産分割協議が良いでしょう。

 

その理由は、相続放棄してしまうと別の人に相続する権利が発生する可能性があるからです。

 

例えば、両親と子供1人の家庭で、お父さんが亡くなったとします。このとき、相続人は配偶者であるお母さんと、子供が相続人になります。この時、子供が「自分は遺産はいらないからお母さんにすべて相続させてあげたい」と思って相続放棄の手続きをするとどうなるでしょうか。

 

相続放棄では「もともと相続人ではなかった」ことになりますから、子供がいなければ次はその亡くなった方の両親に、ご両親が亡くなっていれば兄弟に相続権が発生します。

 

これではお母さんに全てあげたかったはずなのに、他の人と分けて相続することになってしまいます。

 

 

この場合に、お母さんにだけ相続させてあげたいのであれば、相続放棄はせずに二人で遺産分割協議書を作成するとよいでしょう。

 

一方で、お母さんが子供に相続させてあげたいと思った場合は、相続放棄をしてもその相続権が別の誰かに移るということはありません。

 

ですから、リスクを避けるためには、相続放棄をした方が良いことになります。

 

他の相続人に遺産をすべて相続させてあげたくて相続の放棄を考えているのであれば、自分が相続放棄した場合に相続権はどうなるのか、遺産分割で済ませる場合のリスク、相続放棄の手続の手間等を検討してどちらを取るか選択する必要があります。

 

 いかがでしたでしょうか。遺産分割協議書と相続放棄の違いについて説明してきましたが、もし、自分で遺産分割協議書を作成するのが難しいと思う場合は、行政書士等の専門家に依頼すると、代わりに作成してもらうことができます。なお、裁判所の手続きは弁護士又は司法書士でなければ代行できません。
また、遺産分割協議書を作成する上では、亡くなった人の戸籍謄本を、生まれてから現在まですべて取得し、相続人情報を特定して作成することが前提になります。
自分で戸籍謄本を取るのが難しいと思った場合も、専門家に依頼することで代わりに取得してもらえたり、相続手続きを任せたりすることもできます。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。