遺言があっても遺産分割協議書は新しく作れるか?
遺言書が見つかったけど、内容に納得がいかない・・
そんな時、遺言の内容に従わずに遺産分割協議書を新しく作っても良いものなのでしょうか?
遺言書があっても、一定の条件を満たせば新しく遺産分割協議書が作れます。
もちろん遺言書に従って、亡くなった方の希望を尊重できればそれが一番ですが、相続人の思いや、税金の問題など、それぞれに事情があるかと思います。
ここからは、そんな方々に向けて、どういった場合なら遺言書があっても遺産分割協議書を作れるのかを見ていきます。
遺言書と違う内容で遺産分割協議をするには、条件が3つ!
相続人が遺言書と違う内容で遺産分割協議書を作るには、次の条件を満たす必要があります。
①亡くなった方が遺言とは違う内容での遺産分割協議を禁止していない
②相続人全員と受遺者が遺言の内容を知っていて、それと違う内容で遺産分割することに同意している
③遺言執行者の同意がある(遺言執行者がいれば)
それぞれの条件について見ていきましょう。
①亡くなった方が遺言とは違う内容での遺産分割協議を禁止していない
民法では、「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。」としています。
つまり、亡くなった方が遺言で禁止していれば、相続人は遺産分割協議をできない、という風に解釈をすることが出来ます。
②相続人全員が遺言の内容を知っていて、それと違う内容で遺産分割することに同意している
本来であれば、有効な遺言書があればその内容に従って相続をしなければいけません。有効な遺言書とは自筆証書遺言や公正証書遺言のことです。
ですので、それに反する形で遺産分割を行うために、相続人全員の同意が必要になるというのは至極当然ですね。
実際、遺産分割協議書は相続人全員の同意がないと作成は出来ませんから、当たり前といえば当たり前です。
気をつけるべきポイントとしては、まず「受遺者」がいる場合、その人に、遺贈を受ける権利を放棄することに、同意をもらわなければいけません。
他にも、1人の相続人が後になって「遺言書があるなんで知らなかった!知っていたら遺産分割協議なんてしなかった!」なんて言い出したら面倒です。
そういった時のために、遺産分割協議書には、遺産分割協議に参加した全員が遺言書について知っていたことを書いておきましょう。
文例)
なお、被相続人は、平成○○年◯月◯日付自筆証書遺言を残しているが、遺言作成時から遺産の状態や相続人の状況が変化していることから、被相続人の遺志を尊重しつつ、共同相続人の全員及の合意により、この遺産分割協議書を作成した。
③遺言執行者の同意がある(遺言執行者がいれば)
遺言執行者といって、遺言の内容通りに遺産が相続されるよう選任された人がいます。そして、遺言執行者は遺言の執行に関して強い権利と義務を持っています。
遺言執行者は、全てのケースで居るわけではありませんが、もし居た場合、相続人は勝手に遺産を処分するなどして、遺言執行者の遺言執行を邪魔してはいけません。(その遺産の処分は無効になります)
そうなると、遺言執行者がいる場合に、勝手に遺産分割協議書を作って、勝手に遺産の処分をする、ということが無駄なのはお分かり頂けますね。
ではどうするかというと、遺言執行者にも同意をもらいましょう。遺言執行者に同意を得た上で遺産分割協議書を作成し、遺言執行者の同意があることを、遺産分割協議書にも書いておくと安心です。
文例)
~、共同相続人の全員の合意により、遺言執行者の同意の上、この遺産分割協議書を作成した。
(本文)
相続人
(氏名) 相続花子 実印
(住所) 〇〇県〇〇市〇〇町◯丁目◯番◯号
遺言執行者
(氏名) 執行太郎 実印
(住所) 〇〇県〇〇市〇〇町◯丁目◯番◯号
さて、ここまで、遺言書がある場合でも一定の条件を満たせば、遺産分割協議書は新しく作成できるということを説明してきました。
オーソドックスな遺産分割協議書に比べると、あえて記載をしないといけないところや、気をつける点があることがお分かり頂けたと思います。
もし、ご自身でこれらの作成を行うのが難しいと感じるようであれば、行政書士等専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身で手続きできるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。