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在留特別許可と配偶者の関係|日本人配偶者がいた方が許可率が上がる?
ご本人はもちろんパートナーに不法滞在などの事情がある場合、「在留特別許可」の申請を検討するケースは少なくないのではないでしょうか。とはいえ、なかなか周囲に相談しづらく、疑問や不安を抱えてしまうこともあるかと思います。
この記事では、在留特別許可と配偶者の関係について、押さえておきたいポイントを解説します。
在留特別許可と配偶者
在留特別許可に明確な基準はなく、個々の事案ごとに法務大臣の裁量によって決定されます。ただし、なんの方向性もなく思いつきで決定されるというわけではありません。入国管理局「在留特別許可のガイドライン」の「特に考慮する積極要素」には、下記を含むいくつかの積極要素が掲載されています。
(3)当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を
除く。)であって,次のいずれにも該当すること
ア 夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること
イ 夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること
※引用元:法務省入国管理局|在留特別許可に係るガイドライン(平成18年10月・平成21年7月改訂)
「積極要素」とは、在留特別許可を与える方向に有利に働く事情のことです。上記を積極要素として掲げていることから、日本人との婚姻は積極要素に該当し、在留特別許可を与えられる可能性が高まることが分かります。
日本人配偶者がいれば在留特別許可が下りる?
前述のとおり、日本人との婚姻は積極要素に当てはまります。ただし、結婚して日本人配偶者がいるからといって、必ずしも在留特別許可が下りるとは限りません。
許可・不許可の決定については、
・日本人との婚姻の実態があるのかどうか
・素行
・生活状況
など、その他の事情も踏まえた上で総合的に判断されます。
日本人の配偶者がいたとしても、許可されない可能性もあるという点には注意が必要です。
日本人配偶者がいる場合の許可・不許可事例
日本人配偶者がいる場合、どのようなケースで在留特別許可が下り、またどのようなケースで不許可となるのでしょうか。過去の事例から、いくつか具体例をピックアップしてご紹介します。
※事例引用元:出入国在留管理庁|在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について
法務省入国管理局|在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について(平成28年)
許可事例
配偶者が日本人の場合に、在留特別許可された事例です。
発覚理由 |
出頭申告 |
出頭申告 |
警察逮捕 |
当局摘発 |
---|---|---|---|---|
違反態様 |
不法残留 |
不法入国 |
不法入国 |
不法残留 |
在日期間 |
約3年3月 |
約7年2月 |
約17年9月 |
約15年 |
違反期間 |
約3年 |
約7年2月 |
約17年9月 |
約1年 |
婚姻期間 |
約9月 |
約7月 |
約5月 |
約16年 |
夫婦間の子 |
無 |
無 |
1人 |
3人 |
刑事処分等 |
無 |
無 |
入管法違反(不法在留)により,懲役2年6月・執行猶予3年の判決 |
無 |
許可内容 |
在留資格:日本人の配偶者等 |
在留資格:日本人の配偶者等 |
在留資格:日本人の配偶者等 |
在留資格:日本人の配偶者等 |
特記事項 |
逮捕までに約12年同居しており,調査の結果,夫婦の同居実態等に信ぴょう性が認められたもの。 |
在留期間更新許可申請を失念したもの。 |
不許可事例
一方、配偶者が日本人の場合に在留特別許可されなかった事例は以下のとおりです。
発覚理由 |
出頭申告 |
当局摘発 |
出頭申告 |
警察逮捕 |
---|---|---|---|---|
違反態様 |
不法残留 |
資格外活動 |
不法残留 |
偽造在留カー |
在日期間 |
約13年3月 |
約1月 |
約3年4月 |
約7年8月 |
違反期間 |
約13年 |
約1月 |
約1年3月 |
|
婚姻期間 |
約5年 |
約1月 |
約7月 |
約1年 |
夫婦間の子 |
無 |
無 |
無 |
無 |
刑事処分等 |
無 |
無 |
無 |
入管法違反により,懲役1年6月,執行猶予3年 |
特記事項 |
スナックを経営し,複数の不法残留者を雇用していたもの。 |
在留資格「短期滞在」の許可を受けて在留中,専らホステスとして稼動していたもの。配偶者との同居実態なし。 |
婚姻・同居の実態に疑義がもたれたもの。 |
在留資格「人文知識・国際業務」で本邦に在留中,雇用先を退職し,アルバイト先の責 |
配偶者が収容されたら仮放免手続きを
配偶者が出入国在留管理局に収容された場合は、仮放免手続きの申請を検討しましょう。ここでは、仮放免手続きの概要や注意点について解説します。
仮放免手続きとは
「仮放免」とは、出入国在留管理局に収容されている外国人を、本人の請求もしくは職権により、一時的に収容施設から身柄の拘束を解いてもらう措置のことです。
手続きにおいては、仮放免許可を受けようとする外国人が収容されている地方出入国在留管理官署に
・仮放免許可申請書
・身元保証書
・誓約書
のほか、仮放免の申請理由を証明する資料や身元保証人に関する資料などを提出します。
申請すれば必ず認められるというわけではなく、個別の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案した上で判断されます。
仮放免手続きの注意点
仮放免手続きを申請できるのは、収容されている外国人、またはその代理人、保佐人、配偶者、直系の親族もしくは兄弟姉妹です。そのため婚約者や内縁の配偶者の場合、仮放免を請求することはできません。
たとえ仮放免が許可されたとしても、その効果はあくまで一時的なものです。在留資格が付与されるわけではないため、原則として就労ができない点には注意が必要です。
また、仮放免許可を受けている外国人に、
・指定された住居地を変更する
・行動範囲外の場所へ出かける
といった必要が生じた際は、事前に申請手続きを行う必要があります。
在留特別許可と配偶者に関してよくある質問
普段あまり馴染みのない在留特別許可については、さまざまな疑問を抱えることもあるのではないでしょうか。ここでは、在留特別許可と配偶者に関し、よく寄せられる質問について解説します。
日本人配偶者だけでなく子どももいた方が許可が出やすい?
確かに在留特別許可においては、日本人と婚姻して継続的・安定的な家庭を築いていたり、日本人と血縁関係のある子どもがいたりするケースは、考慮される事情になり得ます。
ただし、子どもがいるからといって必ずしも許可されるとは限りません。許可・不許可の決定は、養育されている実態があるのかどうか・素行・生活状況など、その他の事情も踏まえながら総合的に判断されます。
在留特別許可が下りた直後に離婚したら?
まず、「日本人の配偶者等」のビザ更新が難しくなる可能性が高まります。また、日本人の配偶者としての活動を6カ月間以上行わなかった場合、在留資格取消制度の対象となる恐れがあります。
実態によっては在留資格が取り消しになるため、注意が必要です。
オーバーステイ状態で国際結婚はできる?
オーバーステイ状態であっても、基本的に日本で結婚手続きを完了させることは可能です。また結婚成立後、専門家に依頼するなどの方法でしっかりとした手続きを経て在留特別許可を申請した場合、最終的に「日本人の配偶者等」という在留資格を取得できる可能性があります。
ただし、在留特別許可が下りるかどうかは実態などから総合的に判断されるため、在留特別許可を目的とした結婚は避けるべきでしょう。
まとめ
日本人の配偶者がいる場合は積極要素に該当し、在留特別許可を与えられる可能性が高まります。ただし、在留特別許可が下りるかどうかは実態や素行、生活状況なども踏まえて総合的に判断されます。
さむらい行政書士法人では、在留特別許可申請に関するサポートを行っています。行政書士には法律上『守秘義務』があるため、お客様の情報がほかに漏れることはありません。安心してご相談ください。