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在留特別許可に係る要件・考慮事項と許可・不許可事例を紹介

在留特別許可に係る要件・考慮事項と許可・不許可事例を紹介

 

不法滞在が発覚した外国人は、日本に住み続けるために「在留特別許可」を請願するという手段を取れます。しかし、請願したからといって許可が必ず下りるとは限りません。許可を得る確率を少しでも上げるためには、「どういう要件が考慮されるのか」「どういう事例で実際に許可が下りているのか」を把握しておくとよいでしょう。

 

この記事では、在留特別許可に係る要件や考慮事項、および許可・不許可の事例について解説します。

在留特別許可において考慮される要件

在留特別許可を請願する不法滞在者の状況や経歴などによって、許可が下りるか否かは大きく左右されます。

 

ここでは、法務省入国管理局が発行している「在留特別許可に係るガイドライン」を引用しながら、在留特別許可においてどのような要件が考慮されるのかを解説します。

 

※引用元:法務省|在留特別許可に係るガイドライン

積極要素|許可が下りやすい要件

在留特別許可が下りやすい要件「積極要素」の一部を例に挙げ、それぞれの内容を解説します。

(1)当該外国人が,日本人の子又は特別永住者の子であること

不法滞在者の親が日本人か特別永住者である場合、在留特別許可が下りやすくなります。特別永住者とは、入国管理特例法によって定められた在留資格を持つ外国人のことです。

(2)当該外国人が,日本人又は特別永住者との間に出生した実子(嫡出子又は父から認知を受けた非嫡出子)を扶養している場合であって,次のいずれにも該当すること
ア 当該実子が未成年かつ未婚であること
イ 当該外国人が当該実子の親権を現に有していること
ウ 当該外国人が当該実子を現に本邦において相当期間同居の上,監護及び養育していること

日本人もしくは特別永住者との間に血の繋がった子どもがいて、ア~ウの条件全てを満たしている場合、在留特別許可が下りやすくなります。子どもについては、単に親権を持っているだけでなく、一定期間は日本で一緒に暮らしていたという状況も必要です。

(3)当該外国人が,日本人又は特別永住者と婚姻が法的に成立している場合(退去強制を免れるために,婚姻を仮装し,又は形式的な婚姻届を提出した場合を除く。)であって,次のいずれにも該当すること
ア 夫婦として相当期間共同生活をし,相互に協力して扶助していること
イ 夫婦の間に子がいるなど,婚姻が安定かつ成熟していること

日本人もしくは特別永住者と婚姻関係にあって、ア・イの条件を両方とも満たしている場合、在留特別許可が下りやすくなります。婚姻関係については、書類上の関係だけでなく、ある程度の期間一緒に生活していることが必要です。

 

また、2人の間に子どもがいる場合は上で紹介した(2)の要件も満たすことになるため、より許可を得られる可能性が高まります。

(4)当該外国人が,本邦の初等・中等教育機関(母国語による教育を行っている教育機関を除く。)に在学し相当期間本邦に在住している実子と同居し,当該実子を監護及び養育していること

不法滞在者に同居している実子がいる場合、その子が日本で長く暮らしており、日本の小学校や中学校に在籍していれば、在留特別許可が下りやすくなります。子どもの暮らしを守るための措置といえるでしょう。

(5)当該外国人が,難病等により本邦での治療を必要としていること,又はこのような治療を要する親族を看護することが必要と認められる者であること

不法滞在者本人もしくはその親族が、日本での治療が必要な状態である場合、在留特別許可が下りやすくなります。これは、不法滞在者や親族の生命を守るための措置です。

消極要素|許可が下りにくい要件

次に在留特別許可が下りにくい要件「消極要素」の一部を例に挙げ、それぞれの内容を解説します。

(1)重大犯罪等により刑に処せられたことがあること

重大犯罪の前科・前歴がある者に対しては、在留特別許可は下りにくくなります。例えば、殺人や強盗、放火などの凶悪な犯罪行為をした者に、許可が下りる可能性はかなり低いでしょう。

 

「在留特別許可に係るガイドライン」では、「違法薬物及びけん銃等,いわゆる社会悪物品の密輸入・売買」も重大犯罪として挙げています。

(2)出入国管理行政の根幹にかかわる違反又は反社会性の高い違反をしていること

日本の出入国管理に関わる違反や反社会的な違反を行った場合、在留特別許可は下りにくくなるでしょう。

 

「在留特別許可に係るガイドライン」では、「不法就労助長罪,集団密航に係る罪,旅券等の不正受交付等の罪」「不法・偽装滞在の助長に関する罪」「人身取引等,人権を著しく侵害する行為」などが違反行為の例として挙げられています。

在留特別許可の許可・不許可事例一覧

在留特別許可が下りやすい要件・下りにくい要件をご紹介しましたが、抽象的な部分もあるためピンとこない方もいるでしょう。ここでは、在留特別許可が実際に下りた事例・下りなかった事例を、出入国在留管理庁のサイトから引用して紹介します。

※引用元:出入国在留管理庁|在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について

許可事例

在留特別許可が下りる要因としては、全体的に「夫婦間に未成年の子どもがいる」という点が大きく影響していると考えられます。たとえ婚姻期間が短くても、被退去強制歴や逮捕歴があったとしても、子どもの暮らしを守ることは考慮すべき事項として大きいようです。

1.配偶者が日本人の場合

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法残留

在日期間

約1年7月

違反期間

約7月

婚姻期間

約1年6月

夫婦間の子

1人(未成年)

刑事処分等

許可内容

在留資格:日本人の配偶者等
在留期間:1年

事例2

発覚理由

警察逮捕

違反態様

不法入国

在日期間

約17年9月

違反期間

約17年9月

婚姻期間

約5月

夫婦間の子

1人(未成年)

刑事処分等

入管法違反(不法在留)により、懲役2年6月・執行猶予3年の判決

許可内容

在留資格:日本人の配偶者等
在留期間:1年

特記事項

逮捕までに約12年同居しており、調査の結果、夫婦の同居実態等に信ぴょう性が認められたもの。

2.配偶者が正規に在留する外国人の場合

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法残留

在日期間

約3年4月

違反期間

約3年1月

婚姻期間

約7月

夫婦間の子

刑事処分等

許可内容

在留資格:永住者の配偶者等
在留期間:1年

特記事項

配偶者は在留資格「永住者」

事例2

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法入国

在日期間

約6年9月

違反期間

約6年9月

婚姻期間

約8年3月

夫婦間の子

1人(未成年)

刑事処分等

許可内容

在留資格:定住者
在留期間:1年

特記事項

被退去強制歴1回あり。配偶者とは前回の在留時に婚姻。配偶者は在留資格「定住者」

3.外国人家族の場合

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法残留

在日期間

約12年5月

違反期間

約12年2月

家族構成等

配偶者:不法残留(在日期間:約12年5月)
子:本邦出生後、在留資格未取得・12歳
子:本邦出生後、在留資格未取得・9歳
子:本邦出生後、在留資格未取得・6歳

許可内容

家族5人とも、
在留資格:定住者
在留期間:1年

特記事項

家族全員で出頭申告したもの。本人は被退去強制歴1回あり。

事例2

発覚理由

当局摘発

違反態様

不法入国

在日期間

約15年4月

違反期間

約15年4月

家族構成等

子:本邦出生後、在留資格未取得・12歳
子:本邦出生後、在留資格未取得・7歳

許可内容

家族3人とも、
在留資格:定住者
在留期間:1年

特記事項

子2人は、過去に交際していた者(外国籍・交流なし)との間に生まれたが、認知等を受けていないもの。

4.その他

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法入国

在日期間

約16年11月

違反期間

約16年11月

刑事処分等

在留希望の理由

日本人前夫との間に出生した子(日本国籍・4歳)の監護・養育

許可内容

在留資格:定住者
在留期間:1年

特記事項

子の親権者は日本人前夫であるが、実際は本人(在留特別許可された者)が監護・養育していることが判明したもの。過去に在留特別許可を1回受けた経緯あり。

事例2

発覚理由

出頭申告

違反態様

出生後資格未取得

在日期間

約15年7月

違反期間

約15年5月

刑事処分等

在留希望の理由

本邦での学業・生活の継続(本邦出生・15歳)

許可内容

在留資格:定住者
在留期間:1年

特記事項

外国籍両親が所在不明等になり,児童相談所が保護しているもの。

不許可事例

在留特別許可が下りない要因として、「夫婦間に子どもがいないこと」「身分を偽ったり、犯罪行為をしていたりすること」「残留を希望する理由に日本である必要性がないこと」などが挙げられます。

一定程度の婚姻期間があったり、日本での生活基盤ができていたりしても、子どもがいないことや犯罪行為によって不許可となってしまうケースがあるのです。

1.配偶者が日本人の場合

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法残留

在日期間

約7年3月

違反期間

約3年11月

婚姻期間

約3年9月

夫婦間の子

刑事処分等

特記事項

調査の結果、同居・婚姻の実態に疑義がもたれたもの。在留希望理由に病気治療も挙げていたが、医師から本国でも治療可とされたもの。

事例2

発覚理由

当局摘発

違反態様

資格外活動

在日期間

約1月

違反期間

約1月

婚姻期間

約1月

夫婦間の子

刑事処分等

特記事項

在留資格「短期滞在」の許可を受けて在留中、専らホステスとして稼動していたもの。配偶者との同居実態なし。

2.配偶者が正規に在留する外国人の場合

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法残留

在日期間

約18年1月

違反期間

約9年

婚姻期間

約3年5月

夫婦間の子

刑事処分等

所得税法違反により、懲役1年・執行猶予3年(罰金あり)の判決

特記事項

出頭申告した後に在宅起訴され,判決を受けたもの。配偶者は在留資格「永住者」

事例2

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法入国

在日期間

約5年5月

違反期間

約5年5月

婚姻期間

約4月

夫婦間の子

刑事処分等

入管法違反(不法在留)により、懲役2年6月・執行猶予4年の判決

特記事項

被退去強制歴1回あり。出頭申告後に逮捕されたもの。配偶者は在留資格「技術」

3.外国人家族の場合

事例1

発覚理由

出頭申告

違反態様

不法残留

在日期間

約17年10月

違反期間

約17年7月

家族構成等

配偶者:不法残留(在日期間:約15年10月)
子:本邦出生後、在留資格未取得・8歳

特記事項

本人は日系三世であると身分を偽って在留許可を受けていたもの。

事例2

発覚理由

当局摘発

違反態様

不法残留

在日期間

約6年6月

違反期間

約6年3月

家族構成等

子:不法残留(在日期間:約6年6月)・15歳
子:本邦出生後、在留資格未取得・0歳

特記事項

子2人は配偶者(外国籍)との間に生まれたが、既に同配偶者との交流はなく、家族3人で生活していたもの。

4.その他

事例1

発覚理由

当局摘発

違反態様

資格外活動

在日期間

約8年8月

違反期間

約1年4月

刑事処分等

在留希望の理由

資格外活動は行っておらず、同居中の日本人恋人がいる。

特記事項

在留資格「人文知識・国際業務」の許可を受けて在留中、専ら調理人として稼動していたもの。同居中の日本人恋人との婚姻意思なし。

事例2

発覚理由

警察逮捕

違反態様

刑罰法令違反

在日期間

約16年9月

刑事処分等

建造物侵入、窃盗、住居侵入等により、懲役4年6月の判決

在留希望の理由

日系三世である。14歳時に来日しており、本邦に生活基盤がある。

特記事項

在留資格「定住者」の許可を受けて在留中、窃盗団の一員として逮捕されたもの。道交法違反で罰金刑2回を受けた経緯あり。

まとめ

今回は、在留特別許可が下りやすい・下りにくい要件と実際にあった許可事例をご紹介しました。

 

不法滞在している外国人が在留特別許可を受ける確率を高めるためには、許可が下りやすい要件やこれまでの成功事例を把握しておくべきです。しかし、在留特別許可に関する知識を持たない人たちだけで適切な対処をするのは難しいでしょう。

 

「さむらい行政書士法人」では、在留特別許可に関する深い知見により、ほとんどのケースで許可・不許可を事前に判断することが可能です。在留特別許可に関してお困りの方は、当法人までお気軽にご相談ください。

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