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退去強制について徹底解説!

退去強制というのは、「日本にとって好ましくない」と認められる外国人を日本の領域から強制的に退去させる行政手続きで、「出入国管理及び難民認定法(以後、入管法)」第24条の1号〜10号に詳しく規定されています。

 

対象となるのは、原則として日本に在留するほとんどの外国人です。ただし在留資格や身分・所属に応じていくつかの特例も用意されています。

 

たとえば在留資格「特別永住者」には入管法は適用されず、「日本の統治を破壊するような内乱」や「外国との国交に関する罪」のように重大な国家の利益を侵害する場合に限り退去強制の処分を行ないます。

 

また外交官・領事官や駐日アメリカ軍の兵士が「日本にとって好ましくない」と判断される場合には、入管法ではなく別の手続きによって出国させることになります。

退去強制の対象となる人

どのような人を退去強制させるか(あるいは入国拒否するか)の判断は、国際法上、それぞれの国の裁量に任されています。もちろん、日本も例外ではありません。

 

とはいえなんのルールもないまま、思いつきや気まぐれで外国人を退去させるようでは法治国家とは言えません。これは「国際人権B規約 第13条(外国人の恣意的追放の禁止)」という国際条約にも規定されています。

 

このため日本では、入管法第24条の第1号〜第10号の中で退去強制の事由を細かく規定しています。主なものをピックアップすると以下の通りです。

 

1)有効なパスポート等を持っていない

いわゆる「不法入国者」といわれる人たちです。具体的には次のケースが該当します。

・パスポートそのものを持たずに入国した人

・他人名義のパスポートで入国した人

・写真・氏名・生年月日などなどが改ざんされたパスポートで入国した人

 

2)上陸の許可を受けていない

いわゆる「不法上陸者」と呼ばれる人たちで、有効なパスポートを持っているか否かは関係ありません。具体的には次のケースが該当します。

・上陸許可の証印や記録を受けずに入国した人

・コンテナ船などの乗組員で、特別上陸許可(寄港地上陸・通過上陸など)を受けずに入国した人

 

3)偽造パスポート等の作成・流通に関わっている

組織的に活動する外国人ブローカーなどのことで、パスポートや文書を偽造・変造する人、提供する人、それらを手助けする人などを広く含みます。

 

4)在留資格に定められた活動以外のことをしている

いわゆる「資格外活動者」といわれる人たちです。具体的には、次のような事例が考えられます。

・留学生ビザで入国した人が、学校に通わず就労する

・特定分野の就労ビザで入国した人が、深夜・休日等にアルバイトをする

 

5)在留資格の期間が過ぎている

在留期間が過ぎているにもかかわらず、在留資格の更新や期間の変更をしないまま日本に滞在する「不法残留者」と呼ばれる人です。具体的には次のようなケースが考えられます。

・観光等の「短期滞在」で入国し、そのまま在留期間が過ぎる

・「配偶者」の在留資格で入国し、離婚後も在留資格の変更等をしないまま在留期間が過ぎる

ただし入院など、やむを得ない事情がある場合を除きます。

 

6)犯罪行為により懲役・禁錮の実刑を受けている

刑法等の法令に違反し、懲役または禁錮の実刑を受けた人です。該当する犯罪行為としては、不法侵入、通貨偽造、文書偽造、有価証券偽造、支払用カード電磁的記録不正作出、印象偽造、賭博、殺人、傷害、逮捕監禁、脅迫、略取、誘拐、人身売買、窃盗、強盗、詐欺、恐喝、盗品売買などがあります。

 

7)売春関係の業務に従事した

売春関係業務に従事した人は、実刑判決を受けたか否かに関わりなく退去強制の対象です。ただし人身取引等で売春に従事させられていた人を除きます。

 

8)退去命令に従わない

退去命令を受けたにもかかわらず、そのまま日本に滞在し続ける人です。

退去強制の手続きの流れ

日本に滞在中の外国人が退去強制事由に該当すると考えられる場合、基本的に次のような流れで手続きが行われます。

 

1)入国警備官の違反調査

まず最初に、「入国警備官」による違反調査が行われます。入国警備官というのは不法入国者や不法滞在者の調査・摘発などを職務とする公安職員のことです。

入国警備官による調査のきっかけは、第三者からの通報、本人の申告、入国警備官が現場で直接確認した場合などです。違反を示す明らかな証拠がない場合でも、「退去強制事由に該当すると推測させる程度の資料」があれば調査を開始できます。

調査には任意調査と強制調査があり、通常は任意に提出された陳述書や証拠書類による任意調査が行われます。ただし必要に応じて、本人の意思に関係ない「身柄の収容」を含む強制調査を行うことも可能です。

 

2)収容令書による収容

退去強制に該当する客観的・合理的な根拠があると認められた場合、入国警備官は「収容令書」による収容を行ないます。

この収容という手続き自体は、法律上明確に規定されていません。ただし日本では「収容前置主義」が採られていて、退去強制手続きを進めるにあたり容疑者をすべて収容することが原則とされています。

収容の期間は30日間です。またやむを得ない事情があれば延長も可能で、最長60日まで収容することができます。

 

3)入国審査官の違反審査

収容された外国人の身柄は「入国審査官」に引き渡され、さらに審査が行われます。入国審査官というのは、外国人の出入国審査、在留資格審査、入管法違反者の審査、難民認定調査といった審査業務を行う行政職員です。

入国審査官による審査で「退去強制事由に該当しない」と認められた場合、その外国人はすぐに放免されます。

一方「退去強制事由に該当する」と認定された場合、入国審査官は「口頭審理」を請求できる旨を知らせたうえで、審査の結果を書類で通知します。

なお口頭審理が行われるのは、通知日を含む3日以内に外国人が口頭審理を請求した場合です。もし本人が口頭審理を請求しない意思を示せば(たとえば「口頭審理放棄書」に署名した場合)、退去強制令書が発布され退去強制処分が行われます。

 

4)特別審理官の口頭審理

特別審理官による口頭審理では、それまでに行われた入国審査官の認定に誤りがないかどうか再検討します。ちなみに「特別審理官」というのは、口頭審理を担当するために法務大臣から指定を受けた入国審査官のことです。

口頭審理で「入国審査官の認定に誤りがある(退去強制事由に該当しない)」と判定された場合、その外国人はすぐに放免されます。

一方「認定に誤りはない」と判定した場合、特別審理官は「異議の申し出」ができる旨を知らせたうえで、判定の結果を伝えます。

法務大臣の採決が行われるのは、判定日を含む3日以内に外国人が異議の申し出を請求した場合です。もし本人が異議の申立をしない場合は、退去強制令書が発布され退去強制処分が行われます。

 

5)法務大臣の裁決

異議の申し立てでは、以下のいずれかについて「不服の理由を示す資料」が提出されます。

・審査手続きが法令に違反している

・法令の適用が誤っている

・事実を誤認している

・退去強制の処分が著しく不当

「異議に理由がある(上のいずれかに該当する)」と判断されれば、その外国人はすぐに放免されます。

 

一方「異議に理由がない」とされた場合、原則として退去強制令書が発布され退去強制処分が行われます。ただし以下の事情がある場合は、法務大臣により「在留特別許可」を与えることができます。

・永住許可を受けている

・以前日本国籍を取得していた

・人身取引などにより、他人の支配下で日本に在留していた

・その他、特別に在留が許可すべき事情があるとき

 

在留特別許可というのはあくまで法務大臣による特例ですが、国際結婚などに関連して認められる(上記の「その他」)ケースもあります。

 

なおここで説明したのは、あくまで「基本」の流れです。ケースによっては手続きの一部が省略されることもあるので注意してください。

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