アメリカ留学のB2ビザ(短期観光ビザ)の滞在期間について
「アメリカの留学先の学校がI-20を発行できない」
「1か月間アメリカに旅行したいけど、ESTA(電子認証システム)を申請したら却下されてしまった!」
「日本で仕事しているからアメリカに就労目的もないし、1か月後には必ず帰国するけど、観光ビザで渡米できる?」
このような場合、短期観光ビザであるB2ビザを取得できれば渡米が可能になります。本記事では、そんな便利なアメリカB2ビザの滞在期間や取得手続きの流れなどについて解説します。
アメリカの短期観光ビザ・B2ビザとは
B2ビザは、6か月以内の滞在を目的とする観光ビザです。日本は米国のビザ免除プログラム(Visa Waiver Program)参加国に含まれるので、滞在予定が90日以内である場合はB2ビザを取得する必要はありません。したがって、労働や居住を目的とせずにアメリカ国内で90日以上6か月以内の滞在を予定する場合に適したビザといえます。
B2ビザの概要
B2ビザは以下のように、アメリカ大使館または総領事館が定めた有効期間内に渡米1回につき最大6か月間滞在できる観光ビザです。
滞在期間 |
6か月まで(最初の入国地の入国審査官の判断で設定される) |
---|---|
ビザの有効期間 |
最大10年(米大使館または総領事館の判断で設定される) |
滞在中の就労の可否 |
不可 |
B2ビザの目的
B2ビザは、以下のような目的に適合します。
- ・アメリカ国内(アメリカ領の諸島内を含む)の各都市を訪問すること
- ・アメリカに滞在する家族・友人・知人の訪問及びホームステイ
- ・就労ビザで渡米する親族に同行すること
- ・アメリカ国内の医療機関で診察、治療、施術などを受けること
- ・アマチュアのスポーツ選手の競技会参加(無報酬)
- ・アマチュアの音楽家・パフォーマーの米国内イベント参加(無報酬)
- ・アメリカ国内での博覧会、展示会、イベントなどへの参加
- ・旅行中に一時的に学校の短期プログラムに参加すること
- ・ボランティア活動(無報酬)
- ・I-20が発行されない学校(学位取得や職業訓練を目的としない)への滞在期間内の留学
B2ビザ取得の取得要件
アメリカ移民国籍法(INA)第214条b項は、『すべてのアメリカビザ申請者は現地への移民を希望していると仮定する』と定めています。したがって、B2ビザを含めてアメリカ国内での居住を目的としないBビザの申請にあたっては、その仮定を覆すために以下の事項について証明する必要があります。
- ・申請者の主な住所及び社会的・経済的な拠点がアメリカ国外にあること
- ・滞在が短期的かつ一時的であること
- ・ビザで認められた目的の範囲内の活動をすること
- ・滞在中の予定の大枠が決まっていること
- ・滞在費用の全額を支払う資力があること
B2ビザの滞在期間について
本章では、B2ビザの滞在期間について、有効期間との違いや延長の可否、延長手続きなどについて解説します。
※なお、ビザ申請に係る費用などの金額表示について、1ドル=150円で換算しています。
滞在期間
B2ビザの滞在期間は最大6か月です。ただし、滞在期間は申請者自身ではなく入国地の入国審査官がその都度決定します。
これは渡米1回あたりにアメリカ国内に滞在できる期間となるので、有効期間内であれば帰国後、再び渡米して6か月まで滞在できます。
滞在期間は延長できる?
滞在中にやむをえない事情が生じた場合は、B2ビザの延長を申請できます。延長期間は最大6か月です。ただし、B2ビザは一時的・短期的な滞在を前提としています。
そのため、延長が認められるのは、当初の滞在期間ではどうしても目的を達成できない必要な事情がある場合に限られます。
延長申請は渡米3か月後から滞在期限の42日前まで
延長申請は、滞在期限の42日前までに行う必要があります。ただし、最初にアメリカ国内に到着してから3か月以内は延長申請が認められていません。
たとえば滞在期間が4月1日~9月30日で米国内に4月1日に到着した場合、延長申請が可能な期間は4月1日から3か月以上経過した7月1日から、9月31日の42日前にあたる8月19日までとなります。
B2ビザ延長申請の必要書類
B2ビザの延長申請に必要な書類は以下の通りです。
- ・入力が完了した延長申請フォームI-539
- ・ICチップ搭載の有効なパスポート
- ・延長を希望する理由を説明した詳細な書面
- ・延長期間の滞在費用全額を支払う資力を証明する資料(銀行明細書)
- ・B2ビザ延長料金370ドル(55,500円)支払いの領収書
- ・I-94カード(出入国カード)の原本またはコピー
滞在期間と有効期間の違い
「滞在期間」と「有効期間」は言葉が似ていて混同しやすいため、注意が必要です。
「滞在期間」とは、有効期間内の渡米1回あたりに連続して米国内に滞在可能な日数または月数を指します。これに対して有効期間とは、そのビザによってアメリカに渡航することが認められる期間(厳密にいえばアメリカの入国審査を受けられる期間)をいいます。
たとえば、ビザの有効期間が「2023年4月1日から2033年3月31日」と設定された場合、この期間は同一のビザで複数回渡米できますが、渡米1回あたりに米国内に滞在できる期間は6か月以内に限られます。
また、最終の滞在では2033年3月31日までに米国を出国しなければ不法滞在となります。
一方で、「有効期間」は「アメリカの入国審査を受けられる期間」を意味します。有効期間内の毎回の入国・滞在を保証するものではありません。入国が認められるかどうかは、最初の入国地の空港の審査官が判断します。
ビザ発給後の初回の入国が拒否される可能性は低いですが、滞在中に生じた事情によっては次回以降の入国審査に影響するので注意が必要です。
再入国は可能?
ビザの有効期間の間であれば、同一のB2ビザで再入国できます。制度上は渡米の回数に制限はありません。
ただし、B2ビザの場合は職業的な活動が認められないだけに、渡航頻度が高く、かつ1回あたりの滞在期間が6か月、またはそれに近いような場合は入国審査官に移民の意思があると疑われる可能性があります。
入国審査官にその旨を質問された場合は、「移民の意思がないこと」を英語で明確に示して理解してもらう必要があります。
90日未満の渡米の場合はB2ビザ取得不要
日本国籍を持つ人で、滞在期間が90日未満の場合は、ビザ免除プログラムが適用されるのでB2ビザは取得不要です。
この場合、渡航前に電子渡航認証システム(ESTA)を取得する必要があります。ESTAの有効期限は2年間で、90日未満の滞在に限って有効期限内の複数回の渡米が認められます。
滞在期間が90日未満であっても、何らかの理由でESTAを取得できなかった場合はB2ビザを申請する必要があります。B2ビザの審査はESTAに比べると時間を要するため、渡航直前にESTAを申請して拒否されてしまった場合は、航空券や滞在スケジュール変更の手間と費用がかかってしまいます。
90日未満の観光目的の渡米の場合であっても、ESTA申請が通る可能性は100%ではないので、早めの申請をおすすめします。
B2ビザの取得の流れ
本章では、B2ビザの取得の流れや各手続き・面接で注意することなどについて解説します。
B2ビザ取得の流れ
B2ビザ取得のための手続きの流れは以下の通りです。
申請フォームDS-160を提出する
まず、発給資格を審査するオンライン申請フォームDS-160に必要事項を入力します。必要事項入力が完了すると、申請IDとバーコードが発行されます。IDを手帳などに控え、バーコードは読み取りができるよう印刷してください。
DS-160は年齢に関係なく、B2ビザによる渡航者すべてに必要です。自分で入力することが難しい年齢の子どもについては、必ず家族の代表者が必要事項を入力してください。
B2ビザの料金の支払い
DS-160の申請と同時に、クレジットカードでB2ビザの料金を支払います。2023年6月よりB2ビザの申請料は185ドルとなっています。支払いが完了したら領収書をB2ビザのサポート書類ファイルに追加してください。
アメリカ大使館・領事館での面接を手配する
14歳から79歳までのB2ビザ申請者は米国大使館または領事館での面接を受ける必要があります。オンラインで面接日時を予約したら、確認書が郵送されるので面接当日に持参します。
なお、申請手続きを札幌総領事館・福岡領事館のいずれかで行う場合は、書類の提出方法が持参ではなく郵送となります。書類の到着日・消印などの規定はありませんが、面接予約日の3日前までに到着するように郵送手配してください。
B2ビザのサポート書類(添付書類)を用意する
面接当日までに以下のサポート書類を用意してファイルにまとめ、当日大使館に持参してください。
- ・有効なパスポート(ICチップを搭載したもの)
- ・過去10年間にパスポート発給を受けていた場合はその失効したパスポート
- ・証明写真1枚(サイズ5cm x 5cm、カラーで6か月以内に撮影、背景白色、眼鏡・帽子未着用)
- ・DS-160(オンラインで入力して印刷したもの)
- ・ビザ申請料金の支払い証明書
- ・滞在理由を詳細に記した手紙
- ・滞在期間をカバーする資金があることを証明する書類(滞在予定日数1日あたり266ドル[39,900円]以上の残高があることを示す銀行明細書。申請者に十分な収入がない場合は保護者または申請者の資金をサポートする方の銀行明細書)
- ・本国とのつながり:日本国内の事業者との雇用契約書、日本国内に所有する不動産の証書など、滞在終了時に日本に帰国することを証明するもの
- ・オプションとして、米国内に居住・滞在する家族からの招待状(観光目的のみの場合は不要)
- ・申請者に関係する警察の記録、または犯罪履歴がないことを示す当局からの手紙
また、下記のいずれかに該当する方は、特定の追加書類を添付する必要があります。
- ・アメリカ渡航履歴がある場合:過去の訪問内容に関する書類
- ・学生の場合:学校の成績証明書または卒業証明書
- ・企業の従業員の場合:雇用主からの手紙と過去3か月の給与明細書
- ・米国に滞在する親族を訪問する場合:その親族の米国での在留資格を証明する書類のコピー
- ・医療を受ける目的の場合:医師による、診断・治療に関する手紙
- ・過去に有罪判決を受けた履歴がある場合は当該判決の謄本とその英語訳
取得において注意すること
B2ビザ取得においては以下の点に注意する必要があります。
(1)日本語で書かれた書類には英語訳を添付すること
提出する書類はすべて英文で作成されている必要があります。そのため、原本が日本語の場合は、翻訳サービスを利用して英語訳を添付しなければなりません。英語訳が添付されていない書類は受理されないので、原本が日本語の書類のすべてに英語訳をつけるようにしてください。
(2)14歳未満・80歳以上の申請者は原則として面接が免除される
14歳未満の子どもと80歳以上の高齢者については、面接が免除されるので必要書類を郵送して審査を受けることになります。ただし、以下のいずれかに該当する場合は面接が必要となります。
- ・申請の時点で日本に居住または滞在していない
- ・過去にESTA申請で渡航認証を拒否されたことがある
- ・イラン、イラク、北朝鮮、スーダン、シリアのいずれかの二重国籍を持つ
- ・日本国内、またはアメリカを含む他国・地域で逮捕歴がある
(3)パスポートが返却されるまでは航空券の手配をしないこと
B2ビザの申請から発給までは1か月程度かかります。また、途中で審査状況について問い合わせることは認められません。そのため、航空券の手配はビザ発給済みのパスポートが手元に届いてから行ってください。
面接で注意すること
大使館(領事館)での面接にあたっては、以下の点に注意してください。
(1)面接のための大使館来館時の持ち込み物に制限があること
保安上の理由で、以下の物の持ち込みは禁止されています。なお、スマートフォンや携帯電話については1台のみ持参することが認められます(入館時に受付に預けます)。
- ・パソコン、カメラ、タブレット、スマートウォッチ、USBメモリ、CD、MP3及び音楽プレーヤーなどを含むすべての電子機器
- ・食品全般
- ・鋭利な刃物類(ハサミ含む)
- ・タバコ類
- ・ライター、マッチなどの発火物
- ・素材を問わず縦横25cmを超える鞄、リュックサック
(2)面接官の質問への回答の際に注意すること
面接で注意すべきことは、
- ・居住の意思を持たないこと
- ・滞在が終わったら必ず帰国すること
これらを明確に示すことです。B2ビザの面接で居住の意思があると疑われるような回答をすると申請を却下される原因となります。
また、英語が話せない場合は日本語で質問を受けて回答することが認められています。B2ビザの面接では英語を流暢に話せるかどうかが審査に影響することはありませんので、安心してください。
大使館(領事館)の面接では、以下のような質問をされることが多いです。
- ・滞在理由
- ・希望する滞在期間としてその時期を選んだ理由
- ・滞在期間(場合によっては、より短い期間で目的を達成することが可能か否か)
- ・滞在場所(訪問する都市・地域)
- ・滞在費用はどのくらいか、全額を支払うことが確実に可能か
- ・どのような仕事をしているか、収入はどの程度か
- ・(家族・友人などを訪問する予定がある場合)招待状を見せてもらえるか
- ・帰国の意思があるか
ほぼすべての質問で「居住の意思があると疑っている」と思ってください。
たとえば、申請者の職業についての質問は、日本国内で安定した収入を得ている(ので米国に居住する意思がないと推定できる)かどうかを聞いていると考えられます。
まとめ
アメリカB2ビザは、就労や職業訓練・学位取得を目的としない一時的・短期間の非移民ビザと位置づけられています。
そのため、以下の書類や意思をもった上で、面接にて伝える必要があります。
- ・あくまでビザ免除で滞在できる90日間ではカバーできない旅行や家族・友人の訪問、無報酬の活動のみを行う目的であること
- ・滞在期間終了時には必ず帰国する意思があること
- ・帰国することを証明できる書類
また、一般的には過去にビザ申請却下の履歴があるとB2ビザ取得のハードルが高くなります。ただし、ビザの発給審査はその時々の国際情勢にも影響されるので、1回却下されたからといって、その後もビザ取得が不可能になるわけではありません。
確実にB2ビザ取得を可能にするため、申請をお考えの方は是非ビザ申請手続きを専門とする行政書士事務所にご相談ください。