スタートアップビザとは?取得の要件やポイント、手順を解説
近年、欧州や南米を中心としてスタートアップビザ制度の導入が活発です。日本においても一部の自治体で外国人の起業を促進する規制緩和により、制度の導入が進んでいます。
そこでここではスタートアップビザの詳細と、取得の要件やポイント、手順などを解説していきます。
スタートアップビザとは
通称スタートアップビザは、正式名称を外国人起業活動促進事業といい、日本における起業準備を希望する外国人起業家の在留を認める在留資格です。スタートアップビザを取得した外国人は入国および在留が認められると最長で1年間住所登録ができ、銀行口座を取得したり、オフィスの賃貸契約をおこなうといった起業準備が可能になります。
また、取得に際しては一部地域で設けられている国家戦略特区における「外国人創業人材受入促進事業」と、経済産業省による「外国人起業活動促進事業に関する告示」のいずれかを利用することになります。
これらの制度によって認定されている自治体は、2021年1月時点ではそれぞれ以下のとおりです。
外国人創業人材受入促進事業によって申請が可能となる自治体
- ・仙台市
- ・東京都
- ・神奈川県
- ・新潟市
- ・愛知県
- ・広島県
- ・今治市
- ・福岡市
- ・北九州市
外国人起業活動促進事業に関する告示によって申請が可能となる自治体
- ・北海道
- ・茨城県
- ・愛知県
- ・岐阜県
- ・三重県
- ・京都府
- ・大阪市
- ・神戸市
- ・福岡市
- ・大分県
ただし、スタートアップビザはあくまでも日本における起業準備が前提です。このため、活動範囲は「事務所の選定」「銀行口座の開設」「市場調査」「専門家との打ち合わせ」といった会社設立の準備にかかわる活動に限られます。
スタートアップビザ取得の要件
スタートアップビザは外国人が日本で起業ののち、さらにビジネスをおこなっていくために必要となる「経営管理ビザ」の取得を前提としています。そのうえで、取得にあたっては事業内容(起業準備内容)について直接説明を求められます。
なお、審査については、このあと触れるように、各地方公共団体と出入国在留管理局の2段階でおこなわれます。
その際、確認されるのは以下のような内容です。
- ・資本金について…あらかじめ500万円の資本金の準備が必要です。
- ・起業準備の必要性について…活動計画書によって起業準備の必要性について確認がおこなわれます。
- ・ビザ取得の可能性について…日本で行うビジネスが実現可能かどうかについて確認がおこなわれます。
- ・生活費および活動費について…日本において活動が可能かどうかについて確認がおこなわれます。
以上の説明は原則日本語ですが、英語でも認められます。ただしその他言語については通訳者が必要です。
スタートアップビザ取得における審査のポイント
2段階でおこなわれるスタートアップビザの審査にあたっては、まず各地方公共団体で認定が出されます。このとき重要なのは出入国在留管理局がスタートアップビザはもちろん、のちに取得が必要となる経営管理ビザについても許可するかという点です。この点を確実にクリアするには、押さえておくべきポイントがあります。
- ・経営管理ビザの取得に求められる要件は整えられているか
- ・ビジネス内容が具体的に示されているか
- ・起業の準備にあたって事業内容が具体的に決まっているか
- ・日本滞在中に生活費が賄えるか
これらはどれも日本で展開するビジネスの実現性について精査するもので、経営管理ビザの取得においても注目されるのは要件です。なかでも資本金500万円が準備できているかという部分はもっとも厳重に確認されます。
スタートアップビザを取得する手順は?
スタートアップビザは開業を希望する認定自治体によって使用可能な制度が異なるため、地域を選定してから準備をおこなうのが原則です。
なお、詳細についての確認は必要ですが、いずれの自治体でも、ビザ取得のおおまかな流れは以下のようになっています。
自治体に連絡し、事業計画など書類を提出する
スタートアップビザを取得するためにまず必要なのは、認定自治体への各種書類の提出です。必要となるのは申請書をはじめ事業計画書や履歴書、パスポートのコピー、6カ月間の住居証明、資金証明など、他のビザ申請と比較すると多くありません。ただし、審査の基準となる事業計画書は非常に重要となります。
なお、事業計画書に記載するのはおおよそ次のような内容です。
事業内容…おこなう事業についての説明
- ・事業の実施地域…どの認定自治体で事業をおこなうかについて明示)
- ・事業計画(事業開始にいたるまでどのような準備、活動をおこなうかについての説明)
- ・事業資金(必要となる事業資金と調達方法についての説明)
- ・事業組織(役員とその役割の説明)
- ・事業規模(おこなう事業の規模を明示)
また、申請書類を提出できる者についても定めがあります。
- ・申請をする本人
- ・弁護士会あるいは行政書士会を経て認定自治体を管轄する地方出入国在留管理局長に届け出をおこなう弁護士または行政書士
- ・申請者が経営をおこなうことを予定する国内事業所の職員
- ・国内事業所の設置あたって、申請者本人から委託を受けている者あるいは法人である場合にはその職員
以上の書類と条件を満たしたうえで申請の上、審査を通過すると認定自治体より「創業活動確認証明書」あるいは「起業準備活動確認証明書」が交付されます。
創業活動確認証明書・起業準備活動確認証明書が発行されたら入管へ提出
次に交付された創業活動確認証明書あるいは起業準備活動確認証明書を所管する地域の出入国管理局に持参し、申請をおこないます。一般的に認定されるのはあるいは「特定活動」の在留資格で、発行されるのは起業準備のための6か月のビザとなります。
起業ができればビザを更新する
起業準備は経営・管理や特定活動の在留資格で進めますが、6か月で起業に至らなかった場合でも、起業の見込みがあればさらに6か月間のビザの更新が可能です。つまり、スタートアップビザは更新が必要ではあるものの、この規定によって実質1年間の在留資格が認められていることになります。
また、起業に至った場合には特定活動から「経営・管理」への在留資格の変更手続きをおこないます。
なお、認定自治体によってはビザの期限内であっても月1回程度自治体担当者などと面談がおこなわれ、起業計画の進捗状況などについて確認されることもあります。
書類の提出は行政書士へ依頼しよう
外国人が日本国内で起業するにあたり、はじめから経営・管理の在留資格を取得することは難易度が高くなりますが、スタートアップビザを経由すれば起業準備が容易になります。とはいえ申請が可能な自治体はまだ少なく、認知度も十分ではありません。
さらに申請の際は制度の概要把握や必要書類の正確な理解が必要となり、まだまだハードルは高いといえます。
このため、上記の手続きは申請書類を提出できる者に含まれているように、ビザ申請専門家である行政書士に依頼することも可能です。
行政書士に依頼すれば、スタートアップビザはもちろんのこと、実際の起業準備やその後の経営・管理ビザの取得申請まで一括してサポートを受けることができます。
なかでも、日本における会社設立を目指してスタートアップビザの取得のみならず、のちの経営管理ビザ取得まで視野に入れるのであれば、実績豊富なさむらい行政書士法人へ依頼するのがおすすめです。
さむらい行政書士法人なら、書類の提出にとどまらず、日本語が苦手でも申請取次行政書士のサポートを受けることができます。
まとめ
スタートアップビザの取得は日本における外国人材のビジネスマッチングや交流を促進し、新たなビジネスやイノベーションを生み出す可能性にもつながる制度です。
そこで、日本において起業を目指す外国人であれば、スタートアップビザの取得を前提に自社の事業やビジネスについて検討を重ねてみるのもよいでしょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応
外国人会社設立・支店設置
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