トップページ > よくある質問 > 母子家庭での遺言書の書き方

母子家庭での遺言書の書き方

母子家庭の場合で子供が未成年の場合には、「もしも自分が死んでしまったら子供はどうなるのか」、と考える人も多いのではないでしょうか。そうなった時のために遺言書を作成しておきたいけど、書き方がわからないとお困りの方もいらっしゃると思います。

 

今回は、母子家庭での遺言書の書き方についてご説明していきたいと思います。

 

母子家庭の場合にはなにより子供のことを1番に考えて遺言書を作成します。子供の面倒は誰に見てもらうのが良いのか、子供のために財産をきちんと管理して使ってくれるようにするにはどうしたら良いのか、元配偶者に面倒を見てもらうことは避けたい、等々考えることはたくさんあるものと思います。

 

結論としては、未成年後見制度を利用することは必須で、その他に遺言による信託制度や遺言執行者の選任なども遺言書に盛り込んでおくと良いと思われます。具体的に見ていきましょう。

1、遺言書には3種類ある

そもそも遺言書には通常3種類あります。それは、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」といわれるものになります。

 

自分にはどれがあっているかなどを考えながら作成する遺言書を決めましょう。

 

① 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、読んで字のごとく自分で書く(自筆する)遺言書のことになります。2019年まではすべてを自分で書かなければいけませんでしたが、2019年1月13日以降からは、財産目録の部分については、パソコンでの作成が認められるように法律が改正されました。また、当然のことながら誰かが代筆したり財産目録以外の箇所をパソコンで作成したりすると無効となります。

 

自筆証書遺言を作成する場合には、法律の要件を満たさなければ無効となってしまいます。法律上の要件とは次の4つになります。

 

・本人が、自分自身で書かなければならない(自筆)

・日付を記載しなければならない

・署名をしなければならない

・捺印をしなければならない

 

1番手軽で紙とペンさえあれば手数料もかからないので遺言書の中では作成する人が最も多い遺言書になります。なお、2020年7月1日からは、自分で作成した遺言書の保管を、法務局が代わりに保管してくれる制度が始まりました。自筆証書遺言の保管場所はほとんどが自宅でありましたが、亡くなった後に遺言書が見つからなかったり、捨てられたりする危険がありました。

 

また、自筆証書遺言は見つかった場合には家庭裁判所で検認という手続きが必要ですが、この法務局が保管してくれる新しい制度、「自筆証書遺言の保管制度」では、紛失や破棄されるといった危険がなく、家庭裁判所での検認手続きも不要となるというメリットもあります。さらに、法務局での保管制度を利用しなくても、法改正によって2022年4月からは自筆証書遺言の家庭裁判所での検認手続き自体が不要になる見通しですので、今後作成する人はますます増えていくことでしょう。

 

② 公正証書遺言

公証役場で公証人が作成し公証役場で保管してくれる遺言書になります。1番確実で間違いがないのが公正証書遺言ですが、手数料がかかることや証人が2人必要となるなどがあります。

 

③ 秘密証書遺言

自分で作成した遺言書を公証役場で公証人に「遺言書を作成したという事実」を証明してもらう遺言書になります。遺言書の中身について公証人は確認しないので、現在ではほとんど使用されていないものでもありますね。

2、子供の面倒を見てくれる人を選んでおく

母子家庭では、子供がまだ未成年の場合には親権を持っているのはひとり親のみとなります。もしそのひとり親が亡くなってしまった場合には、未成年後見人という人を家庭裁判所が選任します。簡単にいいますと、子供の面倒を見てくれる人を家庭裁判所が選びますよ、ということです。

 

家庭裁判所に選ばれるのではなく、自分であらかじめ選んでおきたい場合には、遺言書で未成年後見人を指定する方法をとることができます。例えば自分の母親や父親を未成年後見人として指定しておく(了承も事前にとっておきましょう)ということです。指定の方法は遺言書に記載することです。書き方としては下記の形です。

 

未成年である遺言者の長男(長女など)さむらい太郎(令和○年○月〇日生)の未成年後見人として,次の者を指定する。

 

氏名:○○○○

生年月日:○○年〇〇月○○日

住所:東京都台東区~(住民票のとおりに)

職業:○○

3、遺言による信託制度を活用する

未成年後見人を遺言書で指定したとしても、元配偶者が親権者変更の申し立てをおこなった場合には、元配偶者が親権者になる可能性もあります。さまざまな理由で元配偶者を親権者にされてしまうと、子供のための財産を親権者が自由に使えてしまうことになり、困る。どうしても子供のための財産を守りたい!という方の場合には、遺言による信託という制度を活用することが望ましいです。

 

最悪親権者が元配偶者のもとに渡ってしまったとしても、遺産を管理する権利だけは元配偶者に移らないようにできるのです。それが遺言による信託で、これは読んで字のごとく遺言によって信じて託すことができる制度です。つまり、ひとり親【委託者】が亡くなった後に、(例えば)母【受託者】に財産の管理などを託して、子供【受益者】の生活費などを給付してもらう、ということです。書き方の文例は下記になります。

 

遺言者の財産を次の通り信託する。

 

《信託の目的》受益者である長男(長女など)さむらい太郎(令和○年○○月〇〇日生)の教育と幸福な生活を確保することを目的とする。

 

《信託財産》

遺言者名義の預貯金

・○○銀行××支店 普通預金 口座番号○○○○

・○○証券に預託している株式,公社債,投資信託,預け金,その他預託財産全て及びこれに関する未収配当金その他一切の権利

 

・上記以外の遺言者の有する財産全て

 

《受託者》

氏名:○○○○

生年月日:○○○○年〇〇月〇〇日

住所:東京都台東区~(住民票のとおりに)

職業:○○

 

《受益者》

氏名:さむらい太郎

生年月日:○○○○年〇〇月〇〇日

住所:東京都台東区~(住民票のとおりに)

職業:○○

 

《信託給付の内容》

受託者は信託財産の管理運用を行い,受益者の意見を聞き相当と認める額の生活費等を給付する。

 

《信託期間》長男(長女など)さむら太郎(令和○年○○月〇〇日生)が満20歳の誕生日を迎える日まで

4、遺言執行者を選んでおこう

遺言執行者とは、亡くなった方の代わりに、遺言書に記載されている内容を実現する人のことを言います。この遺言執行者を選任しなくても、遺言が無効になるわけではなく、効力は変わりません。

 

ただ、遺言を遺すほうにとっては、「きちんと遺言の内容通りに相続手続きをしてくれるだろうか」と不安になるものです。そこで、遺言の内容とおりに相続手続きをしてくれる代表者として遺言執行者を選任しておくことで、執行者には義務が生じます。

 

したがって、遺言通りに手続きをしてくれる可能性は高くなりますので、自分で選んでおくと良いでしょう。もちろん家庭裁判所が選任することもできますが、信頼のおける人に頼んでおけるのであればそれに越したことはないでしょう。書き方の文例は下記になります。

 

遺言執行者として次の者を指定する。①記載の者が執行できない場合には②記載の者が執行するものとする。

 

①(例えば母親など)

氏名:○○○○

生年月日:○○○○年〇〇月〇〇日

住所:東京都台東区~

職業:○○

 

②(例えば父親など)

氏名:○○○○

生年月日:○○○○年〇〇月〇〇日

住所:東京都台東区~

職業:○○

 

遺言者は遺言執行者に対し,信託設定に関する執行事務の他,遺言者名義の預貯金その他金融資産の名義変更,払い戻し,解約等ほか遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を与える。

5、付言事項で気持ちを伝えよう

遺言書には法定遺言事項といって、遺言書に記載することで法的効力が認められるもの以外のことを書くこともできるのです。これを付言事項といい、法律的な効力はないのですが、この付言事項で、自分自身の気持ちを伝えることができますので、書いておいて損はないと思います。文例は下記になります。

 

付言事項

 

〇〇(子供の名前)は私の宝物です。

〇〇がいてくれたことで、私はとても幸せだったよ。

○○が今までと変わりなく暮らせるように、おばあちゃん(おじいちゃん等)にお願いをしておきました。

〇〇が幸せな人生を歩めるよう,心から願っています。

 

お母さん(お父さん等)、先に逝く親不孝者でごめんなさい。お母さん(お父さん等)の子供に生まれてよかったです。最後まで手間をかけて申し訳ありませんが、相続の手続きや〇〇(子供の名前)の生活のこと、私の分までどうかよろしくお願いいたします。いつも助けになってくれてありがとう。心から感謝しています。

 

いかがでしたでしょうか。今回は、母子家庭での遺言書の書き方についてご説明させていただきました。未成年後見人には信頼のおける方を選ぶのと同時に、遺言による信託についても考えたほうが良い場面もあるものと存じます。

 

 

一言で遺言書といっても書き方を間違えるだけで無効となってしまいますので、準備を怠らずに作成することが大事になります。もしも自分で作成が難しいと感じるような場合には行政書士等専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は本人の財産によってある程度かかりますが、自分自身でする場合の時間や手間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。