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自筆証書遺言と公正証書遺言書の違いをわかりやすく
相続に備えて遺言書を作成したいと思ったとき、どうせ遺言書を作るなら公証人に確認してもらって公正証書遺言書にしておきたいと考えておられる方もいるかと思います。
ここでは、自分で遺言書を作成する「自筆証書遺言」と、公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の違いについてわかりやすく解説していきます。
自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、公証人が関与せず、遺言書を作成する本人が自筆で遺言書を作成したものです。自分で作成することができるため、手軽に作成することができますが、その反面、気を付けて作成しないと無効になってしまいます。
作成上のルールは、以下のようなものがあります。
①必ず自筆すること
全ての遺言を「自筆する」必要があり、一部を代筆したり、ビデオの録画や音声の録音も認められません。
②日付を入れる
③署名・押印を行う
その他、メリットとデメリットについて見てみましょう。
自筆証書遺言のメリット
①費用がかからない
自筆証書遺言は、自分で紙に書けばいいだけで遺言書が完成しますので、公正証書遺言のように、公証人に手数料を支払う必要もありません。
②手軽に作成できる
自分で紙に書けばよいので、書き直しも自由ですし、誰かに依頼する手間もかかりません。
自筆証書遺言のデメリット
①無効になる可能性がある
自分で気軽に作成できる反面、要件を満たさずに遺言自体が無効になってしまう場合があります。無効にならない場合でも、記載内容が不明確で相続人の間で意見の相違が出て争いになってしまう可能性もあります。
②家庭裁判所の検認が必要
自筆証書遺言は、遺言が有効か、偽造されていないかを確認するために、家庭裁判所で「検認」してもらう必要があります。
ただし、2020年7月からは自筆証書遺言を法務局で保管できるようになり、このときは家庭裁判所の検認は不要です。
③遺言書自体が発見されない可能性がある
亡くなった人が相続人に遺言書の存在を知らせていないと、死後、遺言書の存在に気が付かない場合があります。遺言を確実に遺したい場合は、相続人に知らせておくか、専門家へ依頼することを検討した方が良いでしょう。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは公証役場で公証人に遺言書を作成してもらう遺言書のことです。
自筆証書遺言は気軽に費用もかからずに作成できる反面、無効になってしまうリスクがあったり、亡くなった後に裁判所の手続が必要だったりします。
一方、公正証書遺言は作成こそ大変ですが、亡くなった後の裁判所での検認は必要なく、公証人が関与しているため無効になる可能性も低いです。また、公証役場で管理されるため紛失の危険がありません。
公正証書遺言書作成の流れ
公正証書遺言書の作成は、以下のような流れで進めます。
①誰に何を相続してもらうか、遺言内容を考える
②公証役場に連絡して、公証人に①の遺言内容を伝える
③必要書類を公証役場に提出する
④遺言者、証人2名で公証役場行く
⑤公証役場で公正証書遺言の内容を確認し、遺言者、公証人、証人2名が署名・押印をする
⑥手数料を支払い、公正証書遺言書の完成
これらの手続きをすべて完了させるには、公証役場との日程調整にもよりますが、おおむね1か月程度とみておくと良いでしょう。
公正証書遺言を作成する場合には、必ず証人が2名必要になります。
この証人は、未成年者や相続人になる人、公証人の関係者はなることができませんので、あらかじめ証人になってくれる人を探しておきましょう。
公正証書遺言のメリット
公正証書遺言のメリットは、以下の3つが考えられます。
①偽造・紛失のリスクがない
公正証書遺言は、公証人の立ち会いのもと作成され、その後公証役場で保存されますので、偽造されるおそれや、紛失のリスクもありません。
遺言者には公証役場で保存する原本のコピーが交付されますが、これを失くしてしまっても再発行してもらえます。
②家庭裁判所の検認が不要
公正証書遺言は、自筆証書遺言のように家庭裁判所の検認を受ける必要がありません。
③文字が書けない人でも遺言書を作成できる
自筆証書遺言は、全てを自筆しなければならず、代筆は認められませんが、公正証書遺言は文字が書けない方や、話すことが難しい方、耳が聞こえない方でも作成できるようになっています。
公正証書遺言のデメリット
一方、公正証書遺言のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
①作成に時間・費用がかかる
公正証書遺言は、公証役場とやり取りをしながら手続きを進める必要があり、証人2名も必要であることから、日程調整も大変な手続きです。
また、作成そのものにも公証役場へ支払う費用がかかります。
いかがでしたでしょうか。自筆証書遺言と公正証書遺言の違いについて見てきました。もし、自分で遺言書を作成するのが難しいと感じたり、公証役場とのやり取りや必要書類の収集を手伝ってもらいたいと考えている場合は、行政書士等の専門家に相談してみると良いでしょう。依頼するための費用と、相続の金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。