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内縁の妻に全財産を残したい場合の遺言書の書き方

「内縁の妻に全財産を残したい」

 

近年、パートナーとの在り方は多様化していると思います。法律上結婚はしていないけれど、何年も一緒に住んで結婚しているに等しい関係にあったり、同性だからと結婚が出来なかったり、もしくは他に法律上の配偶者はいるけど、事実婚の相手と暮らしているというケースもあるかもしれません。

 

もし遺言書がなければ、相続財産は法定相続人によって遺産分割・相続をされることになるので、民法上、これらの内縁の妻(夫)には遺産は行き渡らないことになります。

 

しかし、「遺留分」という配偶者などに最低限保証されている部分を除けば、自分の意思によって内縁の妻などに財産を残すことが出来ます。

 

ここからは、その具体的な例を挙げながら、内容について見ていきます。

必ず遺言書を残す!

例えば、次のような状況の人が居たとします。

 

A氏には戸籍上の妻B氏がいました。A氏はB氏とは20年以上別居状態にあるものの、B氏はA氏との離婚に応じず、戸籍上は夫婦の状態が続いています。しかし、A氏にはB氏とは別に、長年一緒に生活をしている内縁の妻C氏がおり、すっかり連絡を取らなくなったB氏ではなく、これまで支えてくれた内縁の妻C氏に全財産を相続させたいと考えています。

 

さて、このようなケースで遺言書がなかった場合、財産は誰にどのくらい渡ることになるのでしょうか?

 

民法では、遺言書がない場合、法定相続人によって遺産分割がされるものとされています。そのため、ここで法定相続人に当たるのは法律上の妻B氏だけになります。

 

つまり、内縁の妻C氏は遺産分割の協議に参加することすらできず、1円の財産も受け取る権利がありません。

ではどうするのかというと、遺言書を残すしかありません。

 

以下に、遺言書の例を載せておきます。

 

 

遺言書

 

遺言者Aは、本遺言書により次の通り遺言する。

 

第一条 遺言者Aは、内縁の妻であるC(住所 大阪府大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号 昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者の所有する全ての財産を包括して遺贈する。

 

令和○○年○○月○○日         

住所 大阪府大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号

遺言者      A(印)        

 

この例は、単純に全財産を遺贈するというもので、後々、B氏から遺産の2分の1の遺留分侵害額請求がされる可能性がありますので、請求をされた場合には応じる必要があります。

 

そのため、最初から遺留分に配慮した遺言書を作成し、後々のトラブルを回避することも可能です。

次の例が、その場合の書き方の例となります。

 

 

遺言書

 

遺言者Aは、本遺言書により次の通り遺言する。

 

第一条 遺言者Aは、遺言者の有する預貯金を妻市川花子に相続させる。

 

①○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号11111111

②△△銀行 △△支店 普通預金 口座番号11111111

 

第二条 遺言者は、遺言者の所有する下記の不動産を内縁の妻であるC(住所 大阪府大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号 昭和○○年○○月○○日生)に遺贈する

 

 

建物

  所 在    ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯

  家屋番号   ◯◯番◯の2

  種 類    居宅

  構 造    木造瓦葺2階建

  床面積    1階 72.21㎡  2階 59.20㎡

建物

  所 在    ◯◯県◯◯市◯◯町◯丁目◯番地◯ 

  家屋番号   ◯◯番◯の3

  種 類    店舗・居宅

  構 造    木造瓦葺2階建

  床面積    1階 77.33㎡  2階 45.32㎡

 

令和○○年○○月○○日         

住所 大阪府大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号

遺言者     A(印)        

 

書き方のポイントとしては、財産の移転の方法の書き方として「相続させる」ではなく「遺贈する」という風に書くことです。

 

これは、相続させることが出来るのは法定相続人であって、法定相続人以外である内縁の妻C氏には相続させるとは書けないからです。あくまで「遺贈」ですので間違えないように書きましょう。

 

その他、注意点ではありませんが、以下のように遺言執行者の指定をしておくと、さらに財産を残された、内縁の妻の負担を軽減することができるでしょう。

 

第◯条 この遺言の執行者として、下記の者を指定する。

 

住所 大阪府大阪市北区梅田◯-◯-◯

氏名 さむらい太郎

職業 行政書士

生年月日 昭和60年1月1日

 

さて、ここまでいかがだったでしょうか?まず、何もしなければ内縁の妻に財産はほぼほぼ確実に行き渡りません。上記で説明した以外にも生前贈与を行っておくといった対策もありますが、ここでは遺言書について説明をしました。

 

もし、ご自身でこれらの作成を行うことが難しい、不安だと感じるようであれば、行政書士などの専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。依頼するための費用はある程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、将来のリスクや、そもそも自分自身で手続きできるのかどうか等を比較しながら、検討してみてください。