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贈与契約書を遡って作成することは可能か?

贈与契約書を作成する際に、日付を遡ることは可能なのか?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。また、実際に契約した贈与がおこなわれてしまったので、あとから贈与契約書を作成した時に日付を遡る必要があるのでどうしたらよいかと、お困りの方もいらっしゃると思います。

 

今回は、贈与契約書を遡って作成することは可能か?という疑問にお答えをしていきたいと思います。

 

結論しては、法律的にはただちに違法とはされませんが、後々の紛争リスクや、そもそも何かを隠そうとしたのではないかと疑われる要因になりますので、お勧めしません。

1、バックデイト

贈与契約書を作成するさいに、様々な理由で実際の契約締結日より前に遡って契約についての効力を発生させたいと考えることがあります。たとえば、メールや口頭などで先に贈与する旨の約束をして贈与行為をしたけど、後日、契約書として正式に作成することになった場合などに、こういった要望が生まれるのではないでしょうか。

 

このような場合に、契約書締結日自体を、実際の締結日ではなく、異なる日にしてしまうという方法をバックデイトといいます。

この日付を遡る(バックデイト)すること自体には、直ちに違法にはなりません。しかし、それは全く問題がないということでもありません。たとえば、贈与契約書において日付を遡る(バックデイト)することで贈与税の時効が成立しているように見せかける、脱税目的のバックデイトは違法行為です。

 

また、他の人よりも先に自分が契約をしたかのようにみせかけて、自分のほうが優先順位は上だと主張するような権利侵害的な目的でのバックデイトも当然ながら違法です。

 

日付を遡った(バックデイトした)ところで、第三者にはわからないだろうと考えている浅はかな人もいるかもしれません。しかし、たとえば印紙を貼り付ける贈与契約書の場合、印紙の図柄は定期的に変更されますので、契約日と図柄に齟齬があった場合、税務署はすぐにわかります。

 

また、法律に変更などがあった場合、契約日と契約内容に矛盾が生じることがあります。どういうことかというと、遡った(バックデイトした)日付時点では存在していなかった法制度に関する条項が含まれている場合などです。

したがって、日付を遡って(バックデイトして)贈与契約書を作成することは、リスクが高いので避けるべきです。

2、遡って効力を発生させる方法

日付を遡って(バックデイトして)贈与契約書を作成しなくても、契約書の条項に文言を付け加えることで、契約した日より遡って効力を発生させることができます。その文言とは下記になります。

 

「本契約は、契約締結日にかかわらず、平成〇〇年〇〇月〇〇日より遡って効力を有するものとする。」

 

「本契約は平成〇〇年〇〇月〇〇日以降に締結された個別契約に適用するものとする。」

 

このように、契約を遡って効力を持たせることは、当事者が合意している以上、有効に行うことができるのです。

3、確定日付

贈与契約書の日付について、調査する側(例えば税務署等)はとことん疑ってくるものになります。そんな時には、契約書に確定日付を入れておくことで、後々になって贈与契約書を締結した日を証明しなければならない場合には、この確定日付が証拠となるのです。方法は下記の2つあります。

①公証役場でもらう

これはなにも、贈与契約書を公正証書にしなければならない、というような話しではありません。当事者が押印済みの贈与契約書に、確定日付といって、日付入りの押印を公証人にしてもらう方法になります。1回700円で確定日付を入れることができます。

②郵便局でもらう

もうひとつは、郵便局でもらう方法です。公証役場よりも安価で利用しやすいのでお勧めです。方法としては、当事者が押印した贈与契約書に、最低郵便料金分の切手63円分(令和2年8月現在)を貼り、郵便局で消印をもらう方法です。郵便局は比較的どこにでもありますので、公証役場に出向いて確定日付を押印してもらうよりも簡易でお勧めです。

 

いかがでしたでしょうか。今回は、贈与契約書を遡って作成することは可能か?という疑問にお答えさせていただきました。日付を遡るバックデイトという行為はリスクが高いので避けたほうが良いものと思われます。

 

もしも日付を遡る必要がある贈与契約書を作成したいとお考えの場合には、一度専門家に相談することをお勧めいたします。もちろん違法行為はできませんが専門家のサポートを受けることで手続きを可能な範囲内で円滑に、確実に進めることができます。

 

依頼するための費用は作成する契約書の内容によってある程度かかりますが、自分自身でする場合の時間や手間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。