贈与契約書のポイント!農地の贈与と農地転用
お金などを贈与したいと思ったとき、あげたい人ともらいたい人が合意すれば贈与契約は成立するのですが、農地の場合は農地法の許可を取得する必要があります。
そのため、農地の贈与契約書にもこの農地法の許可を前提とした内容で作成しておく必要があります。
ここでは、農地の贈与と農地転用、贈与契約書のポイントについて解説していきます。
農地法の許可とは
農地を誰かに贈与する場合、以下の許可を得る必要があります。
①農地を農地のまま贈与する場合 → 農地法第3条の許可
②農地を農地以外(宅地など)に転用して贈与する場合 → 農地法第5条の許可
この農地法の許可を受けずに所有権移転登記の申請をしても、法務局は受け付けてくれません。
また、農地法の許可も移転登記の申請も行わずに勝手に贈与して農耕作業を始めてしまうと、農地法に反する違法行為となりますので注意してください
。
以下では、それぞれの許可基準について見ていきます。
農地法第3条の許可
農地をそのまま農地として贈与したい場合は、農地法第3条の許可が必要になります。
許可の申請は、申請書を農業委員会に提出することで行います。
申請から1か月程度で、許可要件を満たしていると判断されれば、許可書が交付されます。
許可要件には、以下のようなものがあります。
1.農地の贈与を受ける人が、農地のすべてについて効率的に利用して耕作等を行うこと
2.農地の贈与を受ける人が法人の場合、当該法人が農地所有適格法人か
3.農地の贈与を受ける人が、農作業に常時従事する(年間150日以上)
4.農地面積の合計が50a以上あるかどうか
5.農地の効率的な利用に支障を生じることがないか
上記の要件の2番に、農作業に常時従事する人でないと許可にならないため、第3条の許可は農家の人に贈与場合でなければできません。
農地法第5条の許可
農地を贈与して、その後住宅を建てたい場合のように、農地から転用するときは、農地法第5条の許可を得る必要があります。
農地法第5条の許可は、農業委員会を通じて都道府県知事が許可をすることになります。
ただし、農地が市街化区域内に指定されていれば、都道府県知事の許可は不要で、農業委員会への届出のみで農地を転用して贈与することができます。
第5条の許可要件としては、次のようなものがあります。
1.農地を転用する目的であることが確実と認められること
2.周辺農地への営農条件に支障を生ずるおそれがないこと
3.一時的な利用のために農地を転用しようとする場合は、利用後に農地に戻すことが確実であると認められること
このほかにも、立地に関する審査基準もあり、市街地化が見込まれるような農地であれば許可は出やすく、農用地として指定されているような区域では許可がかなり難しい、といった特徴があります。
贈与契約書作成のポイント
それでは、農地を贈与する場合の贈与契約書の実例を、作成上のポイントとともに見ていきましょう。
農 地 贈 与 契 約 書
贈与者 さむらい太郎(以下「甲」という)は、受贈者 さむらい花子(以下「乙」という)と、下記条項により贈与契約を締結する。
記
第1条 甲は、所有する以下の農地(以下「本件農地」という)を、乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。
所 在 ○○市○○町○○丁目○○番地
地 番 ○○番
地 目 ○○
地 積 ○○㎡
第2条 前条の贈与は、乙が本件農地を農地として利用することを目的とし、その効力は、農地法第3条の許可を得た時に発生するものとする。
第3条 甲は乙とともに、農業委員会に対し、農地法第3条による許可申請手続を行う。
第4条 甲は、農地法第3条による許可がなされた後10日以内に、本件農地の所有権移転登記手続を行い、かつ、乙に対し、本件農地を引渡すものとする。
第5条 各手続に要する費用は、すべて乙が負担する。
第6条 本契約成立後に本件農地に賦課される公租公課については、乙がこれを負担する。
この契約を締結する証として、この証書2通を作成し、甲乙双方が記名捺印のうえ、各1通を保有するものとする。
令和__年__月__日
(甲)住所
氏名 印
(乙)住所
氏名 印
ポイント①
贈与する農地が特定できるように、謄本を見ながら正確に記載してください。
ポイント②
農地を農地として利用することを明記してください。転用する場合は転用目的であることを明記してください。
ポイント③
農地法第3条の許可を得るためには、贈与する人と贈与を受ける人の連名で作成した申請書を提出する必要がありますので、許可を得る手続きに協力してもらえるよう、契約書に記載をしておきましょう。
ポイント④
手続にかかる費用や、贈与した後の土地にかかる税金等については、通常贈与を受けた人が支払うことになるかと思いますので、そのことについて明記しておきましょう。
いかがでしたでしょうか。もし、農地の贈与について悩んでいたり、契約書の作成を依頼したいと考えている場合は、行政書士等の専門家に相談してみると良いでしょう。依頼するための費用と、相続の金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。