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贈与と相続時精算課税をわかりやすく解説

相続時精算課税という制度があります。これは2500万円まで贈与税が非課税になる制度です。そのため、節税対策として利用を検討されている方も多いのではないでしょうか?

 

実はこの制度はだれにでも節税効果があるというわけではありません。どんな人にとって節税効果があるのか、逆にどんな人にはお勧めできないのかについて説明していきたいと思います。

相続時精算課税とは、納税を先延ばしにする制度です。

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から20歳以上の子や孫に相続する場合に「通算で2500万円までは贈与税を非課税にするかわりに贈与した人が亡くなった時にその分も相続税を課税する」という制度です。

 

具体例を使って説明していきたいと思います。

【通常の贈与税の場合】

例えば、Aさんが現時点で1億円持っているとします。Aさんが息子のBさんに2000万円を自宅購入の頭金として贈与してあげたいと考えています。

 

Bさんは2000万円を父親であるAさんからもらえば贈与税がかかります。贈与税は110万円まで非課税になりますので、課税価格は2000-110=1890円

この1890万円に贈与税の税率をかけたものが納税額になります。

【相続時精算課税制度を利用した場合】

このとき、相続時精算課税制度を利用するとどうなるでしょうか。

贈与する額は2500万円以内ですので、相続税精算課税制度を利用すれば贈与税は非課税になります!

 

ですが、この時もらった2000万円についても相続の時に相続税を支払うことになります。

 

 

注意!相続時精算課税は自動継続なので110万円の非課税は使えなくなります。

 

 

つまり、上の表の場合、相続時精算課税制度の利用を開始する前の2010年の贈与については110万円の非課税枠を利用できますが、2018年の100万円については110万円の非課税枠の利用はできません。

 

110万円の非課税枠は完全に非課税ですが、相続時精算課税制度を利用した場合の2018年の贈与税の非課税は納税を相続税として先送りしただけですので、110万円の非課税枠を利用したい場合には相続時精算課税制度はお勧めできません。

非課税枠の2500万円を超えた場合はどうなる?

 

非課税枠を超えた場合の贈与税額 相続時精算課税制度の利用を開始してから贈与した額 × 20%

 

通常、贈与税や相続税は累進課税といって、額が多ければ多いほど税率が上がるのですが、相続時精算課税制度を利用した場合の非課税枠を超えた贈与については20%定額課税になります。

 

節税効果があるケース① 将来相続する額が少ない場合

これまで説明してきたとおり、相続時精算課税制度は2500万円が非課税枠とはいっても贈与税が非課税になるだけで相続税として納税を先送りにするだけであり、また110万円の非課税枠も利用できなくなってしまうので、だれにとっても節税の効果があるわけではありません。

 

ですが、将来相続する額が少ない人にとっては節税対策になります!

 

なぜなら相続税には基礎控除といって、3000万+(相続人の数×600万)の相続税がかからない枠があるからです。

 

例えばAが息子であるBに自宅購入の頭金として1000万円を贈与してあげたいとします。

 

このとき、通常であれば110万円をこえる範囲で贈与税がかかりますが、相続時精算課税制度を利用した場合はどうなるでしょうか。

【Aの財産が1億の場合】

Aが1億円の財産を持っていた場合、その財産は基礎控除の額を超えていますので、Aの死亡後、Bは相続税を支払わなければなりません。

だったら贈与する1000万円に対する贈与税を支払うことになっても相続時精算課税制度を利用せず、110万円の非課税枠の範囲で少しずつ贈与をして死亡時の財産を減らした方が節税になる可能性があります。

ただ、この制度は60歳以上の父母や祖父母からの贈与しか利用できませんので、相続までに何年あるかによっても節税効果があるか否かは変わります。

【Aの財産が3000万の場合】

一方、Aの財産が3000万円の場合は基礎控除の範囲内ですので、相続税を支払う必要はありません。

 

ですから相続時精算課税制度を利用すれば1000万円に対する贈与税も相続税も支払う必要がないことになりますので、節税効果は絶大です。

 

完全に基礎控除の範囲内でなくとも、贈与税を支払うより相続税を支払う方が安くなるということもありますので、将来相続する額がそれほど多くないときは相続時精算課税制度を利用すべきか検討してみると良いでしょう。

節税効果があるケース② 値上がりしそうな株式や土地を贈与する場合

相続時精算課税制度を利用した場合、その額は贈与時の評価額で計算することになります。ですから、結果的に相続の時までにその財産が値上がりした場合には、相続時精算課税制度を利用して先に贈与しておいた方が相続税の節税になります。

 

自分にとってどちらが得かわからない場合等は一度専門家に相談してみると良いでしょう。