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公正証書遺言書を無視できるのか?

亡くなった人が、公正証書遺言を残していたけれども、その内容を「無視」して公正証書遺言の内容とは全然違う内容で遺産の分配はできないか?

 

時々そう言った質問を受ける事がありますが、答えとしては「できなくはないけど、問題起こる可能性があるなら止めた方が良い」という答えになります。

 

なぜそのような答えになるのかを解説していきます。

 

亡くなった人が遺言書を残していた場合、特に「公正証書遺言書」を残していた場合、原則、遺言書が無効でない限りは、その遺言の内容に従って、亡くなった人の遺産は、残された遺族に分配していくことになります。

 

「公正証書遺言書」は公証役場で公証人という法律の専門家が作成した物になりますので、基本的に「無効」になる可能性は低いため、遺言書の内容が優先します。

 

過去の裁判所で遺言書の内容を無視して、遺族が話し合って、遺言書の内容とは違う内容の遺産分割を行った事に対する判例でも、「遺言書の有る場合は、遺産分割協議の余地はない」とはっきり否定をされてしまっています。

 

ですから原則としては、遺言書の内容通りに遺産は分配しないといけないという答えになります。

 

ただ例外として、遺言書で遺産を分配される遺族が全員同意して、遺留分の問題も発生しないという場合は遺言書の内容を「無視」することは物理的にはできます。

 

それが仮に公正証書遺言であったとしてもです!

 

「物理的に無視できる」とは、遺言書が残っている場合は、全ての相続手続きに遺言書の原本や謄本が必要になってきます。

 

例えば、遺産に不動産があった場合には、その不動産の名義変更の手続きを法務局で行う必要がありますし、遺産に金融機関の預貯金があった場合では、預貯金のある金融機関で口座の名義変更や解約の手続きを行う必要があります。

 

それらの手続きの際、遺言書がある場合は遺言書を必ず提出しなくてはいけなくなります。これが原則になります。

 

ただ・・・。「遺言書」があるのに、「ない」と言ってしまえば、法務局や金融機関に提出必要はなくなります。遺言書の代わりに遺族で話あった「遺産分割協議書」を使用して、それぞれの手続きはできてしまいます。法務局も金融機関も「遺言書がない」と言われれば、おそらくそれ以上の確認をしてきません。

 

遺族全員が、遺言書の内容に納得がいかず、遺言書の内容とは違った遺産の分割に同意していれば、当然「遺言書はない」という事の口裏を合わせることが現実的にはできてしまいますので、遺言書の有無がわかることもなくなります。

 

そのため、「嘘をつかなくてはいけない」という事にはなりますが、「物理的に手続きは進められます」ので、亡くなった方の遺言書の内容を「無視」することは可能です。

 

ただし、遺言書を無視するのは止めておいた方が良いと思います。

その理由として、下記の2点の問題があります。

 

①遺産を相続にする遺族全員の同意は永遠に続くかどうか信用できない

遺産を相続する遺族が最初は、遺言書の内容を無視する事に同意をしていたとしても、将来的に、「やっぱり同意しない!!」という事を言い出す可能性は全く否定できないのです!

 

人の心は移ろいやすいという言葉もあるように、一旦は協力しようと団結したのに、後々になって離脱する遺族もいると思いますので、その点後々問題になる可能性もあります。

 

②亡くなった遺言者の気持ちに反する行為になる

亡くなった方が遺言書、しかも公正証書遺言まで作成していたということは、亡くなった人は、「遺言書」の内容を是非にも守って欲しいとおもっていたはずです。

 

公正証書遺言を作るにも公証役場にお金を払って作っていますから、亡くなった人の気持ちを考えると、内容を「無視」する行為は決していい行為とは思えません。

 

遺言書は亡くなった方が残された遺族に送る最後のメッセージの様なものですから、その気持ちを考えると「遺言書を無視する」という行為は、とても酷い行為に思えてしまうからです。

 

以上2つの理由から、遺言書の内容を「無視」するという行為は、「物理的にできなくはないけど、あとあと問題が発生する可能性もあるのでやめた方が良い」という事になります。

 

なお、亡くなった人が残した遺言書に「遺言執行者」がいる場合は、更に「無視」はできなくなりますし、遺留分や遺贈の指定がある場合も当然「無視」はできませんので、原則遺言書の内容通りに遺産を分配する方がよいとおもいます。

 

 

相続手続きの専門家である行政書士は遺言書の作成サポートから、相続が発生した後の相続手続きのサポートまで行うことができます。相続や遺言でお悩みの際は専門家に早めに相談されることをお勧め致します。