公正証書遺言は勝手に開封してもよい?
遺言書が見つかったら勝手に開封してはいけない、そんなことを聞いたことはありませんか?
中には、私の場合手元にあるのは公正証書遺言だけど、それでも中身を見てはいけないの?と疑問に思っている方もいらっしゃるかと思います。
まず結論から言ってしまうと、お手元にある遺言書が「自筆証書遺言」か「秘密証書遺言」の場合は、勝手に開封してはいけません。
しかし、「公正証書遺言」の場合は勝手に開封しても特に問題はありません。
話はこれで解決してしまいましたが、ここからはもう少し踏み込んで、公正証書遺言とはどんなものなのか、自筆証書遺言などとはどう違うのか、自筆証書遺言の場合であれば勝手に開封してはいけないのはなぜか、といった疑問にもお答えしていきます。
公正証書遺言は公証人と調整しながら作ってあるので検認は不要!
みなさんは遺言書にも種類があるのをご存知でしょうか?実は一口に「遺言書」と言っても、その作り方や保管方法が違う3種類の遺言書のパターンが存在します。実際に実務上使われているのは「公正証書遺言」か「自筆証書遺言」です。
このうち公正証書遺言は、遺言者が公証人と呼ばれる公証役場の担当者と調整をしながら遺言書を作成するもので、作成時に相続人以外の証人が2人必要であったり、原本が公証役場に保管されたりと、手間がかかる分信用度の高い遺言書となっています。
一方の自筆証書遺言は、公証人の関与は無く、全て自分の手書きで作成をするもので、特に証人も必要ありません。そのため、公正証書遺言に比べると、信用度が落ち、原本も本人保管となるため、勝手に開封をしてしまうと内容の改ざんがされたり、偽造されたりする恐れがあります。
ここから分かることは、公正証書遺言は信用度も高く、改ざんの恐れが無い、自筆証書遺言は改ざんの恐れがある、ということです。
そのため、自筆証書遺言が発見された場合は、誰かが勝手に開けてしまうと内容について改ざんされてないか?といった疑念が残ってしまうので、相続人全員で裁判所に行って開封をしなければなりません。この手続を「検認」と呼び、これが遺言書は勝手に開けてはいけない、と言われる原因です。
ちなみに、自筆証書遺言であっても、2020年7月10日からは法務局で保管してもらうことができ、この場合は内容の改ざんの恐れもないことから検認手続は不要になります。
さて、ここで本題の公正証書遺言はどうかというと、公正証書遺言は公証人の関与のもとで作成し、そのまま原本は公証役場に保管されるというものです。
そのため、内容についても誰かが改ざんできるものではなく、わざわざ裁判所に出向いて検認手続をする必要はありません。ただ、やはり相続人間の信用の問題もありますので、相続人全員が集まったタイミングで内容を確認するのが良いでしょう。
検認前に開封すると罰金が課せられる?
公正証書遺言の場合は、すでに説明しているとおり、検認は不要ですので、勝手に遺言書をみても問題ありません。しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合はどうでしょうか?
実は、自筆証書遺言や秘密証書遺言を検認前に開封してしまうと、5万円以下の過料を課せられる可能性があります。そんなっ、遺言書を軽い気持ちで開けただけなのに、、とお思いかも知れませんが、遺言書とはそれほど重要なものなんだと思いましょう。
※過料であり罰金ではないので前科はつきません
また、自分に不利な内容だからといって遺言書を隠してしまったり、自分の取り分を多くしたいなと、中身を差し替えたり変造してしまうと、相続人としての権利を失います。このような行為は絶対にしないようにしましょう。
ここまでの内容を最後に振り返ると、まず、遺言書には3つの種類があります。そのうち、公正証書遺言は公証人と作成をして、公証役場で原本を保管する、という方法で作成されますので、改ざんなどの恐れがなく、裁判所での検認手続きを経ないで開封することが出来ます。
しかし、公正証書遺言以外、つまり自筆証書遺言と秘密証書遺言の場合は勝手に開封してしまうと内容の改ざんなどの問題に繋がりますので、必ず裁判所で検認手続きが必要になります。
この検認手続き前に勝手に自筆証書遺言を開封してしまうと5万円の過料を課せられる可能性がありますので注意しましょう。
もし、遺言書作成について私の場合はどうしたらいいの?とお困りの場合は、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。※検認手続きは司法書士もしくは弁護士の業務になります。