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遺言書と遺留分減殺請求の関係

「遺言書を書くときは、遺留分に気をつけないといけない。」

 

そんなことを目にしたことがありますか?

 

遺言書を作れば、好きな人に、好きな割合で、財産を残すことができます。しかし、遺言書を作れば何をしても良いという訳ではありません。

 

配偶者や子ども達が有する、「遺留分」までは侵害しないようにする必要があるんです。

 

もしこれを無視して遺言書を作成した場合、遺留分を有する相続人から遺留分についての財産の引き渡しを請求された際には、応じないといけません。

 

これから遺言書を遺したいけど、遺留分って何なの?どう関係するの?と疑問に思っている方や、遺言書を開封した結果、明らかに自分に宛てられた財産が少ない、これってどうにかならないの?とお困りの方に向けて、ここでは、遺言書と遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)の関係について解説をしていきます。

遺言書は好きな内容で作ることが出来る

まず、前提として遺言書があると自分の好きな内容で財産の継承をさせることが出来ます。

 

例えば、別居している戸籍上の妻ではなく、長年生活をともにした内縁の妻に財産を残す、法定相続人にあたらない孫に財産を残すといったことが出来るようになるわけです。

 

では、例えば次のような遺言書を遺した場合、どんな懸念点があるでしょうか?

 

遺言書

 

遺言者Aは、本遺言書により次の通り遺言する。

 

第一条 遺言者Aは、内縁の妻であるC(住所 大阪府大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号 昭和○○年○○月○○日生)に、遺言者の所有する全ての財産を包括して遺贈する。

 

令和○○年○○月○○日         

住所 大阪府大阪市北区梅田◯丁目◯番◯号

遺言者      A(印)       

 

この例は、単純に全財産を内縁の妻に遺贈するというものです。もしAさんに遺留分のある家族がいなかったらこれで良いのですが、

 

例えば、戸籍上の妻や子ども、親が生きている場合、これらの人たちは、最低限相続することが保証されている「遺留分」を持っているので、財産のすべてを内縁の妻に遺贈するということは出来ません。

 

以下は、遺留分を持っている人とその割合です。

相続人

相続財産全体に対する遺留分割合

配偶者

子ども

配偶者だけ

1/2

子どもだけ

1/2÷人数

親だけ

1/3÷人数

配偶者と子ども

1/4

1/4÷人数

配偶者と親

1/4

1/4÷人数

遺留分を取り戻すのが「遺留分減殺請求」

上記のように、配偶者、子ども、親には遺言書によって遺留分より少ない額の財産しか相続できなかった場合、これを取り戻すことが出来ます。

 

これを旧民法で「遺留分減殺請求」と呼び、これをすることは、一定の相続人にとっては当然に認められた権利です。

 

実際にはどのようにその請求を行うかについては、最もポピュラーな方法は「内容証明郵便」で、遺留分を返せ、と伝えることです。

 

内容証明郵便を使うことで、いつ誰が誰にどんな内容のものを送付したのかを郵便局に証明してもらえるので、受け取った側も見て見ぬ振りはできません。

 

もしそれでも相手が請求に応じない場合は、話し合い、調停、訴訟、という風に進んでいかなければなりません。このように紛争性があったり、そうなりそうな恐れがある場合には、弁護士に相談をしましょう。

民法改正で、金銭での請求に一本化!

実は、遺留分減殺請求として馴染んだ言葉も、現在は民法の改正に伴って、2019年7月1日から名称・内容が代わっています。

 

新しい民法では「遺留分侵害額請求」として使われており、遺留分の侵害額は、現物ではなく、お金で請求するようになりました。

 

例を挙げると、故人Aには3人の息子がいたとします。そして、故人は遺言書で3000万円の価値のある不動産を長男に遺贈しました。

この場合、次男と三男は遺留分を侵害されていることになります。

 

子ども1人あたりの遺留分の額は、上の表に基づくと、

 

(相続財産全体に対する割合の1/2÷人数)

3000万円✕1/2÷3=500万円

 

となります。

 

つまり、次男と三男は、不動産を1人で相続した長男に1人500万円の遺留分侵害額請求をすることが出来ることになります。

 

遺留分減殺請求の場合は、不動産の共有持分を取得されることになりますが、遺留分侵害額請求だと、遺留分の取り戻しが簡単になりました。

 

実際の遺留分侵害額請求のやり方としては、遺留分減殺請求と同じで、内容証明郵便を送ることから始めて、もしそれで効果がなければ協議や調停に進むことになります。

 

さて、ここまでいかがだったでしょうか?

 

これから遺言書を残す予定の方にとっては、遺言書の作成の際に遺留分を無視することで、残された受遺者や相続人の間でなんだかトラブルが起きそうだ、、とイメージが付いたのではないでしょうか?

 

もし、ご自身で受遺者のためにもきちんとした遺言書を作りたいと思ったり、自分の場合は取り戻せる遺留分はあるのか?と疑問に感じるようであれば、一度行政書士や弁護士などの専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。
依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、将来のリスクや、そもそも自分自身で手続きできるのかどうか等を比較しながら、検討してみてください。