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遺言書が複数見つかった場合の対処法

相続手続きの際、亡くなった人の自宅から遺言書がいくつも出てきて、しかも内容が微妙に違うというとき、どの遺言書を有効なものとして取り扱えばよいでしょうか?

 

ここでは、遺言書が複数見つかった場合の対処法についてお答えしていきます。

遺言書の日付を確認する

遺言書を複数作成すること自体に問題はありません。早めに遺言書を作成しておいて、年月の経過とともに修正する必要が出てきたときに書き直すことはあり得ますので、複数の遺言書が見つかるということもあるでしょう。

 

このような場合は、まずは遺言書の作成年月日を確認してみましょう。遺言書は、日付が最新のものが有効になると法律で規定されています。そのため、古い日付の遺言書と新しい日付の遺言書が出てきたときは、新しい日付の遺言書に従って相続手続きを行えば良いことになります。

 

遺言書の種類も問いません。例えば、公証役場で作成してもらう公正証書遺言書と、自分で作成する自筆証書遺言書が出てきた場合、一見、きちんと公証役場で作成してもらった公正証書遺言書の方が優先されるような気もしますが、自筆証書遺言書の方が新しい日付であればそれが有効な遺言書として取り扱われます。

 

一つの遺言書には日付の記載があるが、もう一つにはない、という場合は日付の記載がない遺言書は無効ですので日付の記載がある遺言書に従って相続手続きを行ってください。

遺言内容を確認する

日付を確認して、新しい遺言書が見つかったときは、次にその遺言書が正式なルールに則って作成されたものかどうか、内容を確認しましょう。日付の記載があっても、遺言書のルールに従って作成されていない場合は無効になってしまいます。

 

公正証書遺言書の場合は、公証人が作成しますのでミスはまずないかと思いますが、自分で遺言書を作成する自筆証書遺言書の場合は注意が必要です。

 

自筆証書遺言は、以下のような流れで作成します。

 

①誰に何を相続してもらうか、遺言内容を考える

②遺言書を作成し、保管する

 

たったこれだけで完成しますので、遺言者が好きな内容で何通も書いているような場合もあります。

 

遺言書作成上のルールは、以下のようなものがあります。

 

①必ず自筆すること

②日付を入れる

③署名・押印を行う

 

これらのルールをすべて守っていない自筆証書遺言は、無効になりますので、たとえ新しい日付の記載があったとしても、古い遺言書が優先されることになります。

自筆証書遺言書の書き方

それでは、以下のようなケースを想定して、実際に自筆証書遺言書の作成例を見てみましょう。

 

遺言をしようとする法務太郎さんには、奥さんの法務花子と長男の法務一郎さん、長女の法務貴子さんがいます。そのため、相続することになる人はこの3人です。

 

法務太郎さんには、土地建物(合計評価額4000万円)と銀行預貯金(合計評価額1000万円)、株式(合計評価額1000万円)の財産があります。

 

そこで、土地建物は奧さんの法務花子さんが相続し、預貯金は長男の法務一郎さん、株式は長女の法務貴子さんに相続してもらいたいと考え、以下の内容で、自筆証書遺言書を作成しました。

 

遺言書

 

遺言者法務太郎は、以下の通り遺言をする。

 

第1条 妻法務花子に、別紙財産目録第1条記載の土地建物を相続させる。

 

第2条 長男法務一郎に、別紙財産目録第2条記載の預貯金を相続させる。

 

第3条 長女法務貴子に、別紙財産目録第3条記載の株式を相続させる。

 

第4条 この遺言の遺言執行者として、東京都台東区東上野〇〇 行政書士 〇〇を指定する。

 

令和〇〇年〇〇月〇〇日

東京都台東区〇〇

遺言者 法務 太郎  印

 

別紙 財産目録

第1条(土地・建物)

【土地】

所   在  東京都台東区〇〇町〇丁目

地   番  000番

地   目  宅地

地   積  500.00㎡ 

 

【建物】

所   在  東京都台東区〇〇町〇丁目

家屋番号   123番

種   類  木造

構   造  瓦葺2階建

床 面 積  1階  100.00㎡

       2階   50.00㎡ 

第2条(預貯金)

【預貯金】

1. ○○銀行○支店  普通預金  口座番号00000000 

2. ○○銀行○支店  定期預金  口座番号00000000 

3. ××銀行×支店  普通預金  口座番号00000000

4. △信用金庫△支店 普通預金  口座番号00000000

 

第3条(株式)

【株式】

〇〇証券〇〇支店の法務太郎名義の口座の株式

1. 〇〇株式会社   株式1000株

2. △△株式会社   株式2000株

法務 太郎     印

自筆証書遺言書作成上のポイント

ポイント①

自筆証書遺言書は、遺言する人が必ず全てを手書きで書かなければならず、代筆やパソコンでの文書作成は認められませんし、ビデオの録画や音声の録音も認められません。そのため、この「遺言書」に書かれている文章は全て手書きで作成する必要があります。

 

ただ、別紙の財産目録については、パソコンで文書作成をしても良いことになっています。

 

もちろん、別紙にせずにすべての財産目録を自筆しても良いのですが、正確に財産を記載しようとすると文字数も多くなりますので、誤記や作り直しの手間を考えると、財産目録を別紙にして、パソコンで文書を作成しておくのが便利です。別紙に財産目録をパソコンで作成したときは、財産目録に必ず署名・押印することになっています。

ポイント②

遺言書を作成した日付、署名、押印が必要です。

ポイント③

相続財産に土地や建物などの不動産がある場合は、地番や面積等も書く必要があります。

 

登記簿謄本を取り寄せて確認しながら、正確に記載してください。

 

ここの記載が不正確だと、法務局で相続登記ができない場合があります。

ポイント④

相続財産に預貯金がある場合は、銀行名はもちろんのこと、支店名や口座の種類(普通、定期など)、口座番号等を正確に記載し、きちんと特定できるようにしてください。残高は記載しなくても構いません。

 

また、株式についても同様に、きちんと特定できるような記載が必要です。

ポイント⑤

別紙の財産目録をパソコンで作成したときは、署名、押印が必要になります。

 

 

いかがでしたでしょうか。もし、自分で遺言書を作成するのが難しいと感じたり、作成を依頼したいと考えている場合は、行政書士に相談してみると良いでしょう。依頼するための費用と、相続の金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。