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技能実習生の雇用保険・健康保険・厚生年金の適用について
技能実習生を受け入れることを検討している方には、技能実習生に雇用保険・健康保険・厚生年金の適用があるのか、あるとした場合はどうしたらよいのかについて疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、技能実習生も雇用保険・健康保険・厚生年金の適用があります。
今回は、技能実習生の雇用保険・健康保険・厚生年金の適用について解説します。
それぞれに関して、見てみましょう。
1.技能実習生の雇用保険
雇用保険には、次の2つの機能があります。
①生活・雇用の安定や就職の促進のために失業等給付を支給する機能
②失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図る機能
簡単にいえば、仕事がなくなった時に労働者がすぐに生活に困らないようする公的な保険の役割を果たします。
この雇用保険は、労働者を一人でも使用するすべての事業に対し事業主や労働者の意思に関係なく強制的に適用されます。したがって、技能実習生が「雇用保険は要りません」と言ったとしても加入が必須となっていますので、注意が必要です。
なお、農林水産事業の一部は暫定任意適用事業とされ、その事業に使用される労働者の2分の1以上の同意を得て事業主が任意加入の申請をし、認可を受けたときに適用事業になります。
暫定任意適用事業は以下の通りです。
労働者5人未満の個人経営の事業であって、次の業種に該当するもの
①土地の耕作・開墾、植物の栽植・栽培・採取・伐採の事業その他農林の事業
②動物の飼育、水産動植物の採捕・養殖の事業、その他畜産、養蚕、水産の事業
技能実習生を雇用することとなった場合は、その日から10日以内に保険関係成立届を所轄の労働基準監督署長又は公共職業安定所長に提出します。
2.技能実習生の健康保険
新規上陸許可される技能実習生に対しては、技能実習1号イまたはロの在留資格により1年又は6ヶ月の在留期間が決定されるため、被保険者に該当します。したがって、健康保険には加入しなければなりません。
技能実習生は、講習期間中はまだ雇用されていないので、国民健康保険に加入します。
講習終了後は、実習実施機関が健康保険適用事業所である場合は健康保険に加入します。
団体監理型受入の技能実習生は、講習が終了し実習実施機関で技能実習を開始する日から資格を取得し、被保険者となります。
技能実習生は、団体監理型の講習期間を除けば雇用労働者であるので、原則として被用者保険である健康保険に強制加入となります。しかし、健康保険の適用を受けない従業員5人未満の個人事業所又は従業員5人以上の農林水産業・ホテル旅館業・クリーニング業等の非適用業種の個人事業所に使用される場合は、原則として国民健康保険が適用され、その被保険者となります。
国民健康保険の加入手続については、技能実習生が居住する市区町村へ転入の届け出(住所を定めてから14日以内に行うこと)に合わせて、国民健康保険の加入の手続を行います。
会社の業績が悪化したということを理由に、厚生年金保険を国民年金に、健康保険を国民健康保険に変更はできません。
3.技能実習生の厚生年金
厚生年金保険は、法人事業所及び、農林水産業・ホテル旅館業・クリーニング業等のサービス業を除く5人以上の従業員を常時使用する法人以外の事業所に強制的に適用される年金制度です。
国民年金と同様に老齢・障害・死亡に関して必要な給付を行うことを目的としています。
厚生年金保険制度は、被用者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、被用者及びその遺族の生活安定と福祉の向上に寄与することを目的とするものであり、事業主との間に一定の使用関係が認められれば、被用者の意志にかかわらず、強制的に適用されます。
外国人技能実習生については、厚生年金保険の適用事業所に使用される者となった場合は厚生年金被保険者となり、被保険者期間中に障害又は死亡という保険事故が発生したときは保険給付が行われます。
適用事業所で働く人は採用と同時に厚生年金保険の被保険者となるので、技能実習生の場合も事実上の使用関係が発生した資格取得日(実習実施機関配属日)から5日以内に事業主が所轄年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出します。
保
険事故が発生せず、帰国したときは脱退一時金が支給されます。
技能実習生は、脱退一時金制度があります。
脱退一時金の請求要件の主なものは以下の通りです。
①請求者が、外国人であること
②厚生年金保険の保険料を6ヶ月以上納めていること
③日本に住所を有しないこと
④厚生年金保険の障害年金等を受ける権利を有していないこと
⑤出国から2年以内であること
なお、国民年金にも脱退一時金があるので、保険料を納めている場合には対象となります。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応