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技能実習生に対するパスポート取り上げは禁止

技能実習生の最悪なトラブルの一つとして挙げられるのが、技能実習生の失踪です。採用や実習生受け入れにかかる環境整備や教育にかかる時間や費用を考えると、失踪は受け入れ企業にとって大きな痛手となることでしょう。

 

そのため、失踪を防止する策として、技能実習生のパスポートを預かっておくという方法をとる企業があります。しかし、このような「パスポート取り上げ」は禁止されています。

1.本人から「預かってほしい」と言われたけど…

他の就労ビザで来日している外国人の場合は、本人からパスポートを預かってほしいという希望があった場合は、預かることは可能です。しかし、それはあくまで本人がパスポート紛失を危惧して預かってもらうことを希望した場合であって、返してほしいと言われたら、すぐに返すことができる体制にあることが必要です。したがって、外国人の足止め工作とならないのであれば、原則パスポートの預かりは、禁止されていません。

 

一方で、技能実習生の場合は、年間で1万件と失踪が多いことから、あらかじめパスポートを取り上げるという事態が多く発生し、事実上の強制労働という状況が社会問題化しました。

そこで、技能実習生の場合は、本人から「預かってほしい」旨の意思表示があったとしても、企業(実習実施機関)が保管することは、禁止されています。

2.技能実習制度における不正行為の罰則

パスポートの預かりは、先ほど述べた通り、いかなる理由であっても(本人の申し出があっても不可)実習実施機関が保管することは禁止されています。

もし、保管していた場合は罰則が適用されますので注意しましょう。

 

旅券(パスポート)・在留カードの取り上げ ⇒ 外国人技能実習生受入はれ5年間停止

 

5年間も外国人技能実習生を受け入れることができないことは、企業にとって大きな損失になるでしょう。

このように、受け入れ企業としては知らなかったでは済まされないこともあるので、「不正行為」には十分に注意することが必要です。

 

それでは、パスポートの取り上げ以外にも比較的発生件数が多い不正行為について見てみましょう。

3.技能実習生の受け入れに関する「不正行為」の例

①賃金等の不払い(5年間停止)

技能実習生に対する手当又は報酬の一部又は全部を支払わなかった場合です。これは、勘違いによる計算ミスも含まれる場合もあるので、注意が必要です。

ですから、時間外労働や休日出勤があった場合に、労働基準法第37条に規定する割増賃金として給与計算することを怠らないようにしましょう。

当然、サービス残業は日本人労働者と同様、認められません。

②人権を著しく侵害する行為(5年間停止)

例えば、暴言を繰り返し浴びせるなどし、技能実習生から人権侵害の被害を受けた旨の申告があり、人権擁護機関において人権侵犯の事実が認められた場合や実習実施機関が技能実習生の意に反して預金通帳を取り上げていた場合です。

③技能実習生やその家族等から保証金の徴収等(5年間停止)

技能実習生やその家族、その他技能実習生と密接な関係がある者が、送出し機関や監理団体、実習実施機関等から保証金や違約金が徴収されることは禁止されています。

例えば、技能実習生の失踪を防止するために、技能実習生やその家族等から保証金を徴収したり、逃走した際の違約金を定めていたりした場合がこれにあたります。

また、地方入国管理局、労働基準監督署等に対して「不正行為」を通報すること、休日に許可を得ずに外出すること、作業時間中にトイレ等で離席すること等を禁じて、その違約金を定める行為や技能実習生やその家族等から商品又はサービスの対価として不当に高額な料金の徴収を予定する契約についても、「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」に該当します。

④実習継続不可能時の報告不履行(3年間停止)

例えば、技能実習生が失踪したのにもかかわらず、これを届けることなく、失踪した技能実習生が摘発されるなどして初めて、失踪していたことが地方入国管理局で明らかになった場合です。監理団体や実習実施機関の責めに帰すべき理由がある失踪の場合は、罰則があるので、これを隠すために報告をしないということはやめましょう。

⑤帰国時の報告不履行(1年間停止)

監理団体において、技能実習生の技能実習活動終了後の帰国に係る地方入国管理局への報告を怠っていた場合です。

監理団体が、技能実習活動後に技能実習生が帰国していないことを知りながら、技能実習生が帰国した旨の虚偽の報告を行った場合は「偽変造文書等の行使・提供」になり、5年間の停止処分があります。

 

このようにパスポートの取り上げ以外にも、禁止されている行為が定められています。日本人従業員にはやらないような行為をする際は、不正行為にあたらないかのチェックをすることをお勧めします。

 この記事の監修者

さむらい行政書士法人 代表 / 小島 健太郎

さむらい行政書士法人
公式サイト https://samurai-law.com

代表行政書士

小島 健太郎(こじま けんたろう)

 

プロフィール

2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立

専門分野

外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
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