外国人技能実習生の総合保険の選び方
法務省ガイドライン「技能実習生の入国・在留管理に関する指針」には、以下の記載があります。
【技能実習生の入国・在留管理に関する指針】
毎年、不慮の事故や疾病に遭遇する技能実習生が見受けられることから、関係法令に基づき健康保険等に加入することはもちろんのこと、これらの公的保険を補完するものとして民間の傷害保険等に加入することについても、技能実習生の保護に資するものといえます。
技能実習生は、健康保険や労災保険などの公的保険への加入義務がありますが、慣れない日本の生活様式や気候によって体調を崩すほか、病気やケガに備えて、民間の傷害保険等に加入することが上記の指針のように推奨されています。
ただ、技能実習生の総合保険といわれても、どのような点に注意して、保険を選んでよいのかがわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は、技能実習生の総合保険の選び方について解説します。
1.技能実習生が総合保険に加入する必要性
技能実習生は、雇用契約期間中は社会保険や雇用保険に加入することとなるため(日本人社員と同様に加入義務があります)、保険に関してはそれで充分と思われがちです。
しかし、大きな病気やケガをしてしまうと、医療費は高額になり、高額療養費制度を利用したとしても、家族に頼ることが難しい技能実習生1人では支払うことが困難になるケースも多く、結局は会社が負担することになってしまいます。
また、技能実習生は、日本に入国してから原則2ヵ月間は座学で講習を受け、この講習中は雇用関係がないので、この研修期間中に病気やケガをした場合も、実際には会社が負担することとなってしまいます。
さらに、最近では、他人にケガをさせてしまった場合に賠償しなければならない額も高額化しています。
休日に技能実習生が自転車を運転し、サイクリングを楽しむこともあるでしょう。このとき、運転を誤り、老人とぶつかり大けがをさせてしまうということも十分に起こりうるでしょう。特に、技能実習生の母国とは交通状況や道の舗装具合がことなるため、自転車のスピードが出やすい傾向があります。見知らぬ日本の慣れない道で、人とぶつかってしまうというケースは多く、そのような場合に備える保険の重要性は非常に高いと言えます。
このように技能実習生が保険に入ることは、技能実習生を保護するだけでなく、受け入れ企業の突発的な出費に備えるためにも重要です。
2.補償範囲
外国人技能実習生総合保険とは、一般的に、海外旅行傷害保険に外国人研修生特約、技能実習特約、治療費用の支払責任の一部変更に関する特約等をセットしたものをいいます。
技能実習生の総合保険の加入者、被保険者は以下の通りです。
・保険加入者 : 実習実施機関または監理団体(企業単独型の場合はその企業)
・被保険者(保険の対象となる方):技能実習生
総合保険を選ぶ際は、補償期間と補償内容がポイントです。
補償期間
先ほど述べたように、技能実習生は、出国から研修期間が終わるまでは、受け入れ企業と雇用関係がないので、企業の健康保険には加入できません。
したがって、国民健康保険、健康保険等の資格取得の時期を考慮し、出国から帰国までの期間もしっかりと補償される保険なのかを確認することが必要です。
また、在留資格「技能実習1号」ないし「技能実習3号」を合わせた初期の講習期間を含む実習実施期間中の全期間をカバーする保険もあります。在留資格の変更に伴う保険加入漏れを防ぐことができるメリットがあります。
補償内容
補償内容は、責任期間中の、急激かつ偶然な外来の事故によるケガや、病気の発病を補償するものを選ぶことをお勧めします。特に建設現場など、危険を伴う作業の場合には、技能実習生の家族の悲しみを少しでも和らげるためにも、手厚い補償内容のものがよいでしょう。
総合保険の補償範囲は一般的に次のものがあります。
・傷害治療費用保険金
・傷害死亡・後遺障害保険金
・疾病治療費用保険金
・疾病死亡保険金
・賠償責任保険金
- 日常生活で誤って、他人の物を壊したり、他人をケガさせて、法律上の損害賠償責任を負担したときに支払われる
・救援者費用等保険金
- 病気またはケガにより死亡したり、危篤状態となったときに、現地からの親族等の渡航費用等が支払われる
保険料
保険料は保険金額や保険契約する会社によって区々ですが、年間1万円~3万円程度です。
技能実習生は、不慣れな日本での生活環境で、思いもよらない事故にあってしまうことがあります。また、損害賠償責任や医療費が高額となった場合には、家族からお金を借りることはなかなか難しいでしょう。
実務の内容にあった保険を選び、技能実習生の不安をなくし、実習に集中できるようしてあげましょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応