技能実習生の評価調書とは?
「技能実習」や「特定技能」に関して調べていると、技能実習生の「評価調書」という言葉を目にすることが多いと思います。
この技能実習生の評価調書とは、技能実習生の実習中の業務中の態度、出勤状況や生活状況などを記載した書面です。作成は、受け入れ機関がします。
1.評価調書の利用場面
評価調書は、技能試験を受験せずに帰国した元技能実習生を再度日本に呼び寄せる場合に必要となる書面です。
技能実習1号から技能実習2号へ移行する際と、技能実習2号から技能実習3号へ移行する際には、「技能実習生等向け技能検定」若しくは「技能実習評価試験」の受験は必須となっていますが、以前は、技能実習2号を修了した際に受験する「技能実習生等向け技能検定」若しくは「技能実習評価試験」は必須の試験ではありませんでした。
したがって、技能実習2号修了後に、そのまま帰国した技能実習生は、技能実習2号の習熟度を証明するものがありません。
そこで、一度帰国した元技能実習生を呼び戻すために、「技能実習生に関する評価調書」というものが必要となります。
技能実習2号までを良好に修了すると、特定技能への在留資格の移行が可能となっています。
技能実習2号を修了したけど、技能検定や技能実習評価試験を受験・合格していない場合で、「特定技能」で働くことを希望している場合は、この「技能実習生に関する評価調書」が技能実習2号を良好に修了したことの証明になり得ます。
2.評価調書の記載事項
技能実習生に関する評価調書に書くべき事項を見てみましょう。
①対象技能実習生の情報
ここには技能実習生の個人情報のほか、実習実施者・職種作業・監理団体などの情報を記入します。
②技能実習実施状況
各月毎に実習をしていた出勤状況を記載します。
③技能検定・技能実習評価試験の受験の有無等
技能検定・技能実習評価試験を受験していた場合は、その合否、受験日、試験名等を記載します。未受験の場合は理由を書くことになります。
④技能実習指導員の所見
技能実習においてどのような技能を修得し、現在、何がどの程度できるか等について記載します。
≪記載例≫
入国当初は半自動アーク溶接機等の各種設備の取扱いやその簡単な整備、溶接製品の梱包等の周辺的な業務の一つ一つに戸惑いが見られ、指導員による指導もなかなか身につかないなど、初めに予定していた実習ペースの見直しも検討するほどであったが、1年目の後半に入った頃から、作業現場における日本語にも慣れてきたのか、初歩的な作業であれば、特段の注意等を行わずとも問題なく作業が行えるように成長した。2年目に入った頃からは、本人としても自信が芽生えてきたのか、作業に積極性が見られるようになり、通常は指導するのも困難な上向姿勢での溶接作業も他の技能実習生よりも早く習熟するなど、技能の著しい向上がうかがえるようになり、簡単な作業であれば、後輩技能実習生に助言をするほどの能力を身につけるようになった。
そして、3年目に入ってからは、前年にも増した熱意ある技能実習への取組み姿勢が見られ、スピードや出来映えも意識した作業を行うなど、技能実習評価試験には残念ながら不合格となったものの、日常の業務においては、下向きや横向きの姿勢での溶接作業は合格者と変わらない程度でできるまでの高い技能の修得を見せた。また、作業に当たり、安全衛生、災害防止の対策についての日本語での指示を正しく理解しながら、事故なく適切に行っていた。
(法務省の記載例より)
⑤生活指導員の所見
生活態度等について、日本語能力にも触れながら具体的に記載します。
⑥技能実習責任者の所見
技能等及び日本語能力の向上、生活態度等の諸状況を踏まえた総合的な評価を記載します。
⑦監理責任者の所見
上記4~6の各所見及び定期監査等における本人との面談等を踏まえた総合的な評価を記載します。
3.評価調書を入手できない場合
冒頭にも述べたように、技能実習生に関する評価調書は、受け入れ機関が主に記入します。しかも、先ほどの記載例のように、かなり詳しく書く必要があり、作成義務はないので、書いて欲しいと頼んでも、応じてくれない場合も少なからずあります。
ただし、評価調書を提出ができない場合でも、法務省から以下の書類を提出することで解決する場合があります。
・評価調書を提出することができないことの経緯を説明する理由書(任意様式)
・当時の技能実習指導員等の当該外国人の実習状況を知り得る立場にある者が作成した技能実習の実施状況を説明する文書(任意様式)
既に受け入れ機関が解散していて、当時の担当者と連絡がとれる場合は有効でしょう。
一方で、元の受け入れ機関に協力が得られないのであれば、受験合格せずに帰国した元技能実習生が、特定技能で働くには、技能検定若しくは技能実習評価試験に合格するしかないでしょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応