技能実習生に対するボーナス・賞与の考え方
技能実習生に対するボーナス・賞与をどうしたらよいかと悩まれている事業主の方も多いのではないでしょうか。
なるべく安く雇いたいからということで、最低賃金上昇以外による昇給をするのみでボーナス・賞与はなしとする企業も多くあります。賞与については出さなければいけない、ということはありません。しかし、ボーナスは、技能実習生の仕事へのモチベーションを上げる上で大変効果があります。
ここでは、技能実習生へボーナスを出すかどうかの判断材料を提供していきたいと思います。
1.ボーナスの効果
技能実習生のトラブルとして、最も危惧される一つが「失踪」ではないでしょうか。技能実習生の失踪件数は、年々増加し、今や年間1万人もの技能実習生が失踪しています。
法務省が発表している新制度下で受け入れた技能実習生の失踪者数の割合が以下になります。
前年末の在留技能実習生の人数 | 失踪技能実習生の人数 | 失踪割合 | |
---|---|---|---|
平成26年 | 155,206人 | 4,847人 | 約3.1% |
平成27年 | 167,626人 | 5,803人 | 約3.5% |
平成28年 | 192,655人 | 5,058人 | 約2.6% |
平成29年 | 228,588人 | 7,089人 | 約3.1% |
平成30年 | 274,233人 | 9,052人 | 約3.3% |
技能実習生の失踪理由の一つとなっているのが賃金の問題です。技能実習生の失踪には、賃金問題による失踪が約7割を占めています。
税金、社会保障、住宅費などの諸費用が引かれた後、技能実習生の手元に入るお金は多くの場合、10万円前後と言われています。このお金で暮らしていく分には、あまり苦労する額ではありませんが、技能実習生の多くは母国に仕送りをしています。技能実習生の多くが発展途上国の母国の田舎に家族を残し、その家族が母国でも苦しい経済状態に見舞われているケースが多くあります。
したがって、少しでも多く家族のために仕送りをしたいという理由で、お金に関してはシビアな面があります。
ですから、頑張った分が反映されやすいボーナスが出ると、非常に喜ぶ傾向があります。技能実習3号まで働けば5年間働いてくれます。企業にとっても、真面目に仕事を覚えていった技能実習生には、長く居てもらいたいことでしょう。したがって、積極的に頑張っている実習生には、今までの頑張りを慰労する意味と今後もやる気を維持してもらい、失踪せずに満期修了まで働いてもらうためにも、ボーナスを支給するという企業が増えています。
ボーナスを支給したいけど、頑張った技能実習生全員には渡せないという場合は、役職手当として、その役職者(リーダー)だけボーナスを支給するという方法があります。
役職の設定は様々あると思いますが、例えば、何十人も技能実習生がいる場合には、監理が行き届かないという場合もあると思います。その場合には、勤務態度が良好で、日本語レベルも高い技能実習生をリーダーにし、実習生の要望や不満等を聞き、伝えてもらうパイプ役の役職を与えればよいでしょう。
このようにリーダーを設定することは、技能実習生にも責任感が生まれるというメリットもあります。
外国人の場合は、日本人と価値観が異なる場面も多く、叱責の方法や褒め方、管理方法も日本人とは違う方法の方が、効果がある場合も多くあります。したがって、リーダーとしてパイプ役がいると、多くの場面で助かる場合が多いことでしょう。
2.実際にどのくらいの額をどのくらいの頻度で出せばいいの?
ボーナスを支給するとして、実際にどのくらい出せば、仕事へのモチベーションアップにつながるでしょうか。リーダーとして、日ごろから様々な苦労をしている場合には、基本給に反映させるという方法もあります。一方で、そこまで頻繁にリーダーとしての仕事がない場合には、トラブルに応じてボーナスを支給するという方法が一般的です。この額は、リーダーとしての苦労に応じた額にするのが適切なことが多く、一概にいくらとは言えませんが、高額である必要はありません。
では、頑張った人一律に支給する場合はどうでしょう。会社の利益が多い場合には、多く支給しても構いませんが、あまり多く支給してしまうと、もらえるのが当然という風潮になり、つけあがってしまったという話も聞くので注意が必要です。
大体の目安ですが、半年に1回、金額は3000円から5000円程度でよいでしょう。
ちょっとしたお小遣い程度であれば、仕送りに回すというより自分のために使い、リフレッシュできるというメリットもあります。
このようにボーナスを支給する場合は、一度だけ高額というよりは、支給し続けられる範囲に収める方が継続的にモチベーションを維持できるのでよいでしょう。
この記事の監修者
プロフィール
2009年4月 行政書士個人事務所を開業
2012年8月 個人事務所を行政書士法人化し「さむらい行政書士法人」を設立
専門分野
外国人VISA・在留資格、外国人雇用・経営管理、永住・帰化申請
入管業務を専門とし、年間1000件以上の相談に対応