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遺言執行者は相続の登記はできるのか?

相続手続きで、亡くなった人の遺言がある場合、その遺言通りに相続手続きを行う「遺言執行者」が決められていることが多いです。

 

相続財産に不動産があるとき、この遺言執行者は相続に伴う名義変更の登記申請まで行えるのでしょうか?

 

ここでは、遺言執行者は相続の登記はできるのか?という疑問にお答えしていきます。

遺言執行者は相続登記できない

原則、遺言執行者は相続登記の申請を行うことはできません。裁判で争いになったこともあり、判決では相続が開始することによって相続人が登記申請をする権利を持つことになるため、遺言執行者が相続登記を申請する権利も義務もないとされています。

 

ただ、これは原則で、例外的に遺言執行者が登記申請をする場合もあります。

 

例えば、「遺贈」のケースです。遺言執行者が相続登記の申請ができないのは、あくまでも相続人に不動産が相続されるケースであり、第三者に不動産が遺贈される場合は、遺言執行者のみが登記申請できることとなっています。

 

このような場合に相続人に登記申請を任せると、相続人以外の第三者に遺贈したくないと思った相続人によって妨害されてしまう可能性があるためです。

 

このように、遺言執行者は原則相続登記の申請を行うことができませんが、例外的に登記申請を行う場合があります。

遺言執行者の行うこと

遺言執行者は例外的に登記申請を行うだけだとすると、遺言執行者を選任するメリットはあるのでしょうか?

ここで遺言執行者がやらなければならないことを確認しておきましょう。

 

①相続人への通知

②相続人が他にいないか調査

③相続財産の調査並びに相続財産目録の作成

④各種相続財産の名義変更等の手続

 

このように、遺言執行者が行うことは相続登記以外にもいろいろあり、なかなか大変な手続きであることがわかります。④の相続財産の名義変更に登記申請は原則含まれませんが、銀行での手続きや有価証券の手続き等は遺言執行者が行いますので、遺言執行者を選任する意味は大いにあるといえそうです。

 

また、遺言を遺す人は、「きちんと遺言の内容通りに相続手続きしてくれるだろうか」と不安になるものです。そこで、代表者として遺言執行者を選任しておくことで、執行者には義務が生じますので、遺言通りに手続きをしてくれる可能性が高くなります。

 

さらに、法律上、認知をする場合等、遺言執行者を定めなければできない手続きもあります。

 

そのため、遺言がある場合は、遺言執行者も選任されることが多くなっています。

第三者への委任(専門家へ任せる)

遺言執行者の任務を行う上では、役所から戸籍謄本を収集したり、銀行に出向いて手続きをしたりと、すべて自分で行うのはなかなか大変な手続きです。

 

そこで、遺言執行者としての職務を第三者に委任することができるようになっています。

 

これも2019年7月の改正法によるもので、これまでは、「やむを得ない事由」がなければ、他の人に遺言執行者としての任務を依頼することはできなかったのですが、法改正によって、そういった事由がなくてもできるようになりました。

 

そのため、この遺言執行者を行政書士等の相続手続きに詳しい専門家に依頼することで、さまざまな手続きがスムーズに進み、より遺言が実現される可能性が高くなります。

 

この第三者への委任は、遺言執行者としての任務すべてを委任することももちろんできるのですが、一部のみを手伝ってもらいたいという場合も可能です。

 

例えば、遺言執行者の任務は基本的に自分で行おうと思っていても、役所問い合わせの際に求められる「亡くなった人の生まれてから死亡するまでの戸籍謄本」の収集は大変だからここだけ頼みたいと思っているような場合も、専門家に依頼することが可能です。

 

いかがでしたでしょうか。遺言執行者としての業務は、全てそのまま行政書士等の専門家に任せることもできますし、手伝ってほしい一部のみを委任することもできるようになっています。もし、自分で行うのが難しいと感じたり、戸籍謄本の収集のみを手伝ってもらいたいと考えている場合は、専門家に相談してみると良いでしょう。依頼するための費用はある程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。