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遺言があっても「死後事務委任契約」を活用する場合
遺言書があれば、相続手続は完璧!と思っている人は多いのではないでしょうか?確かに、遺言書があれば、相続手続きにおいて後々になってトラブルを防止する1つの対策にはなりますし、残された遺族の方の負担の軽減にもなります。
ただ、遺言書を作成したうえで、「死後事務委任契約」を作成し、活用する人は実は増えてきています。
遺言があっても「死後事務委任契約」を活用する場合とはいったいどんな時なのでしょうか?
「死後事務委任契約」とは、自分が死んだ後の手続き、例えば、死亡届の提出や、葬儀や埋葬の手配、国民年金や健康保険の諸手続き、公共サービスの料金の支払いや解約などなどの諸手続きを自分に代わり、第三に代わりにやってもらう事を、自分が生きているうちにその第三者と契約する事をいいます。
「死後事務委任契約」の内容を遺言書に盛り込めばいいのでは?と思われるかもしれませんが、実はそうではないのです。
確かに遺言書に記載ができる内容には特に制限は設けられていません。遺言書の付言事項に、自分が死んだあとの葬儀の仕方や、遺骨の埋葬や散骨などの希望を書くことはできます。
しかし、遺言書にこのような希望を書いたとしても、その内容に法的な拘束力、簡単にいうと、遺言を見た遺族の方がその希望を実施しなくても特に罰則を受ける事はないですし、実施しなくても遺言が無効になることはないのです。
遺言書の内容で、法的拘束をもつのは、身分に関する事項、相続に関する事項、財産の処分に関する事項というふうに限定的なのです。
身分に関する事項とは、例えば隠し子を認知する事、相続に関する事項とは財産の分配割合や相続人の指定、財産の処分とは寄付をすることなどです。
これらのことは、法的拘束力をもち、仮に実現されない場合は、強制的に実現することも可能ですが、それ以外の事に関しては強制力を持ちません。
つまり遺言書でできることには限界があるということになります。
遺言書ではできない事を補填できるのが、「死後事務委任契約」になると思って頂いてもよいと思います。
「死後事務委任契約」の内容は、依頼者と受任者(依頼者の死後に代わりに死後事務を行う人)の間で自由に決めることができます。
例えば次の様な内容があります。
・死亡届の提出(関係者への死亡の連絡)
・葬儀・火葬に関する諸手続き
・埋葬・散骨などに関する諸手続き
・供養に関する諸手続き
・病院や施設の退所に関する諸手続き
・社会保険や国民健康保険・国民年金に関する諸手続き
・住居の退去に関する諸手続き
・公共サービスの解約等の諸手続き
・携帯電話やSNS等の解約などの諸手続き
・運転免許証の返納手続き
・ペットに関する諸手続き
などなど
死後に行わなくては(正確には誰かにやってもらわなければ)いけない手続きは結構沢山あります。
「死後事務委任契約」は誰にでも頼む事ができます。別に行政書士の様な国家資格者に依頼をしなくても、親族や親しい友人にお願いすることもできます。
ただし、「契約」の1つなので、「お願いします!」と「了解しました!」という双方の合意は必要になります。
「遺言書」に葬儀や埋葬の方法など希望を書いても100%実現されるという保証はありませんが、「死後事務委任契約」として契約を交わしておけば相手がいいかげんな人でない限りほぼ100%実現は可能になります。
また「遺言書」では残された遺族の為に自分の死後に相続争いが起きないように、遺産の分配方法をしっかりと記載して、財産に関わること以外の項目は「死後事務委任契約」を遺族以外の第三者と契約しておけば、遺族としては、財産だけもらえて、他の面倒な手続きは第三者におまかせ!なんていいとこ取りの相続手続きも可能になります。
この様に「死後事務委任契約」は「遺言書」を補填するものになりますから、遺言書を書いたとしても、「死後事務委任契約」を活用する場面はありますし、むしろその方がより完璧な相続手続きを行うことができるようになります。
以上遺言があっても「死後事務委任契約」を活用する場合の説明になります。
「死後事務委任契約」は自分が生きているうちに、第三者と結ぶ契約になります。自分が死んだ後は当然やり直しができません。
「死後事務委任契約は」専門家でなくても、知人や友人と契約をして、その人に手続きを委任できることはできますが、やはり確実なのは行政書士の様な専門家に相談して任せるのが、より安全・安心だと思います。