トップページ > 民法改正による遺言執行者の権限強化

民法改正による遺言執行者の権限強化

2018年7月に「民法」という法律が大幅に改正されました。改正された民法の実施は2019年4月から随時行われていますが、その中で「遺言執行者の権限」についても新しい民法で強化がされました。

 

「遺言執行者の権限」がどのように強化されたのか、具体的に解説していきます。

 

まず、そもそも「遺言執行者」を選ぶメリットとしては、亡くなった人が書いた遺言書の内容の実現(亡くなった方の意思の実現)を迅速かつ適切に行う事です。

 

「遺言執行者」がいないと、残された遺族が全て手間のかかる作業を全て行っていくことになります。

 

しかしながら、これまでの「民法」に規定されていた「遺言執行者」の権限や地位はとても曖昧に規定されていたので、「遺言執行者」が遺言書の内容の実現を妨げられるような事もありました。そのため今回「民法」の改正で曖昧な点が改善されています。

①遺言執行者の地位の明確化!

改正される前の民法では、「遺言執行者は、相続人の代理人」と書かれていました。

 

たしかに、相続人たる遺族の為に様々な手続きを代理で行うのが遺言執行者の仕事なのですが、遺言執行者の本来の目的は「遺言書の内容の実現」になるので、仮に亡くなった人が遺言書で「自分の愛人に1000万を遺族する」と書いていた場合、遺言執行者は、愛人に1000万円を支払う為に、必要な手続きを行います。

 

愛人は本来、遺族でもなければ相続人でもありません。そんな愛人に1000万を支払うことは、本来の相続人から見るとマイナスの行為でしかないと思いませんか?だって相続人がもらえる財産が減るのですよ?!

 

代理人とは本来、本人の利益の為に、代わりに何かをやってくれる人になりますから、もし「相続人の代理人」であるならば、相続人が損をする事はできないはずですが、遺言執行者としては、「遺言内容の実現」の為、愛人に1000万円を支払うようにしなくてはいけないのです。

 

「それじゃ相続人の代理人じゃないじゃん」と思われると思いますが、その通りです。

 

その様な矛盾を解消するために、新しい民法では「遺言執行者は、相続人の代理人」という記載は削除されました。

②遺言執行者の権限の拡大

新しい民法では「遺言執行者は相続人」という記載は削除され、その代わりに

 

・遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。

・遺言執行者がその権限内において遺言執行者であると示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生じる。

 

という2点が書かれています。

 

ちょっと難しい文章で分かりづらいとお思いますので簡単に説明すると、遺言書の内容の実現のためなら、仮に相続人に損をさせても、亡くなった人の愛人に1000万を渡す権利がありますよ。自分が遺言執行者であることを示せば、遺言書の内容の実現の為に必要な関連的な行為はほとんどできます。優先順位で一番上なのは「遺言書の内容の実現」ですよ。という事が、民法という法律でしっかり明文化されたのです。

 

このことが民法に記載されたことによって、それまで、限定的であった相続手続きを遺言執行者が単独で行えるようになりました。

例えば、亡くなった人が建物や土地などの不動産を残していた場合、以前の民法のままですと、ある一定の場合でない限りはその不動産を相続した人でないと不動産の名義変更の手続きができなかったのでが、改正された民法の規定では、遺言執行者が単独でもできるようになりました。

 

また、亡くなった人が銀行などの金融機関に預貯金を残していた場合もその口座の名義変更や解約・払い戻しの手続きを遺言執行者が相続人に代わりできる様になりました。

 

今までも限定的にできてはいたのですが、民法の規定が曖昧なため、遺言執行者の行為もあいまいな状況でしたが、民法が改正された為、大手を振って「できる!」ようになったのです。

 

民法改正による遺言執行者の権限強化について解説をしてきましたが、いかがだったでしょうか?

 

少しむずかしい話になりましたが、新しい民法では遺言執行者の権限が拡大されて、強化された事が何となくでもお分かりいただけたかと思います。

 

ただ、遺言執行者は亡くなった人が遺言書で指定しておかないと、家庭裁判所に決めてもらう事になりますので、その場合は少し手間かかります。できれば遺言書に遺言執行人は指定しておく方がいいですね。

 

もし相続の事でお悩みの場合は、行政書士の様な専門家に早めに相談にされる事をお勧め致します!