遺言執行者が先に死亡していた場合にはどうすればよいか?
相続手続きで、亡くなった人の遺言がある場合、その遺言通りに相続手続きを行う「遺言執行者」が決められていることが多いです。
この遺言執行者が、遺言を遺した人よりも先に死亡してしまった場合、その後の手続きはどうなるでしょうか?
ここでは、遺言執行者が行うべきことと、その執行者が先に死亡していた場合、どうすればよいかについて説明をしていきます。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、亡くなった方の代わりに、遺言書に記載されている内容を実現する人のことを言います。
具体的には、相続人の確定や相続財産の調査、相続財産の管理、相続財産の分配(名義変更等)をすることになります。
遺言執行者を選任するメリット
遺言執行者を選任しなくても、遺言が無効になるわけではなく、効力は変わりません。
それでは、遺言執行者を選任するメリットは何でしょうか。
遺言を遺す人は、「きちんと遺言の内容通りに相続手続きしてくれるだろうか」と不安になるものです。そこで、代表者として遺言執行者を選任しておくことで、執行者には義務が生じますので、遺言通りに手続きをしてくれる可能性が高くなります。
また、法律上、認知をする場合等、遺言執行者を定めなければできない手続きもあります。
遺言執行者の行うこと
遺言執行者は、「遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」と定められており、遺言を実現させる義務が課されます。
実際には、次のようなことを遅滞なく行わなければなりません。
①相続人の調査
②相続財産の調査並びに相続財産目録の作成
③各種相続財産の名義変更等の手続
これらを全て行うことは簡単なことではありません。時間と手間がかかるだけでなく、すべての手続にマニュアル等が存在するわけではないので、初めて相続続きをするという方にとっては一つ一つの任務がとても難しく感じられるはずです。かといって、相続手続きを進めずにいるわけにはいきません。
そこで、遺言執行者は相続人に限られず、行政書士等の専門家を選任しても良いことになっています。
遺言執行者の選任・委任
遺言執行者としての任務を確実に行ってほしいと思うときは、行政書士等の専門家に依頼するのがオススメです。
遺言執行者としての任務は誰に依頼してもいいのですが、相続に詳しい行政書士に依頼すれば、相続人や相続財産の調査から名義変更等の各種手続きまで、全てスムーズに進めてもらうことができます。
さらに、相続人として遺言執行者に指定されたけど、とても自分ではできそうにないと思うときは、遺言執行者としての職務を第三者に委任することもできます。
これは2020年7月の改正法によるものです。
これまでは、「やむを得ない事由」がなければ、他の人に遺言執行者としての任務を依頼することはできなかったのですが、法改正によって、そういった事由がなくてもできるようになりました。
また、この際、相続人等の同意を得る必要もありません。
そのため、相続財産目録の作成だけお願いしたい等という場合でも、状況にあわせて必要な範囲で委任を受けてくれるはずです。
遺言執行者が亡くなっている場合
それでは、この遺言執行者が遺言をした人よりも亡くなってしまった場合、どうすればよいでしょうか。
法律では、以下のように定められています。
「遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる」
つまり、遺言者や相続人が家庭裁判所に出向いて、別の遺言執行者を選任することができるようになっています。
しかし、家庭裁判所での裁判手続きとなるとなかなか大変ですし、時間もかかります。
そのため、遺言執行者が先に亡くなっても問題ないように準備しておくことが大切です。
具体的には、以下のような手段が考えられます。
①遺言執行者を複数選任しておく
遺言執行者は、一人だけでなければならないという規定はありませんので、あらかじめ複数人を執行者として遺言書に記載しておくと、一人が亡くなってしまった場合に備えることができます。
ただ、あまりにも多く選任してしまうと、かえって遺言執行者としての任務もやりづらくなってしまうことが考えられますので、この点は注意が必要です。
②予備の遺言執行者を選任しておく
「遺言執行者〇〇が亡くなった場合は、〇〇を遺言執行者とする」と予備的な遺言執行者を決めておくことで、一人が亡くなった場合に対処することができます。