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遺言執行を誰かに代理してもらうことは可能?

もしあなたが遺言書によって、遺言執行者に選ばれた場合、これは誰か他の人に代理してもらうことは可能なのでしょうか?

 

遺言執行者に選ばれたけどどんなことをするのか分からない、調べてみたけどなんだか荷が重そう、などと不安に思っている方も多いかと思います。

 

そこで、ここでは遺言執行者は遺言執行を誰かに代理してもらうことは可能?という質問について回答していきたいと思います。

令和1年7月2日以降作成の遺言書であれば復委任はできる!

まず、結論から言いますと、最近法改正がなされたのですが、その新しい法律が始まってから作成された遺言書であれば、遺言執行者は代理人を選任することは可能です。

 

ネット上では、他の人は遺言執行者の代理を出来ない、とされている記事もみられますが、この法改正がなされて間もないということもあり、古い情報が出まわっていると思って下さい。

 

参考までに、古い条文と新しい条文を見比べてみましょう。

 

(旧条文)

1016条1項 遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない。ただし、遺言者がその遺言に反対の意思を表示したときは、この限りでない。

 

(新条文)

1047条1項 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる。ただし、遺言者がその遺言に別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

 

確かに、旧条文では、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができない、とはっきり書いてありますね。そのため、旧民法では遺言執行者が病気によって遺言執行が難しいと行った事情があったり、遺言書に復委任を認める旨の条文がないと、外部の専門家に代理することはできませんでした。

 

しかし、実際には相続財産がたくさんあったり、相続人が大勢居たりすると、法律知識に乏しく、亡くなった方との信頼関係のみで選任を受けた方にとっては、大きな負担となってしまします。

 

負担となるどころか、手に負えない場合もあり、外部専門家を補助的立ち位置に迎えて遺言執行を行うことが通常でした。

 

そのため、もっと簡単に遺言執行を専門家に代理できるようにとのニーズを受け、今回の民法改正が行われています。

 

新しい民法では、特段の事由がないと委任できない、という文言はなくなり、「自己責任で第三者に遺言執行をさせてもいいですよ」と変更されています。

 

これによって、遺言執行人が病気等の特別な事情がなくても、遺言書にわざわざ復委任の条文をいれてなくても、外部の専門家に依頼をすることが可能となりました。

 

ただし、今度は逆に、遺言書に復委任を禁止する規定があれば、復委任はできなくなるとこにもなっていますので、確認が必要です。

専門家に代理を頼んでも、責任を全て逃れるわけではない!

新しい民法では遺言執行人が他の人に代理で遺言執行をさせることができるとわかりました。しかし、ここで注意が必要なのが、自分自身で遺言執行をしなくて良くなったからといって、責任まで逃れることは出来ないということです。

 

しかし、遺言執行人の手に負えない業務や、遺言執行人が急病になった等の特別な事情があって代理人に遺言執行をお願いした時は、代理人が遺言執行業務上で何かをしでかしたとしても、遺言執行人はその業務自体の責任は負いません。

 

ただ、これはしかるべき人を選んでいて、その人の業務遂行を監督していたら、という前提ですので、これらの問題があった場合は、その責任を負うことになります。

遺言執行者は辞退することもできる!

そもそも、誰かに代理をするくらいなら、最初から私は遺言執行者への就職を辞退したい!

 

そう思う方もいらっしゃると思います。遺言執行者にならない、ということは出来るのでしょうか?

 

答えは、「はい、出来ます。」

 

遺言書で、あなたが遺言執行者として指定を受けていても、就任するのもしないのもあなたの事由ですから、特別な理由がなくても辞退可能です。

 

しかし、一度就任してしまってから辞退をするのは、合理的な正当な事由がないと出来ないことになっているため、注意が必要です。

 

故人の意見はぜひとも尊重すべきではありますが、遺言執行者としての義務を理解した上で、果たして自分がそれを行うだけの余裕や能力があるか、しっかりと検討した上で身の振り方を決めましょう。

 

もし、ご自身でこれらの判断が難しい、代理人に任せたい、と感じるようであれば、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家のサポートを受けるのが良いでしょう。
依頼するための費用はある程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、将来のリスクや、そもそも自分自身で手続きできるのかどうか等を比較しながら、検討してみてください。