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遺言執行での株式の名義変更

遺言執行するうえで、株式の名義変更についてわからない方も多いのではないでしょうか?預貯金の名義変更とは違うことに戸惑ってしまいお困りの方もいらっしゃると思います。今回は、遺言執行での株式の名義変更についてご説明していきたいと思います。

 

結論からいいますと、上場会社の株式を名義変更する場合には、証券会社に遺言執行者用の口座を開設(口座名は「故○○○遺言執行〇〇」という名義で開設)します。口座を開設出来たら同時に移管手続きも完了しますので、あとは通常の取引と同じで電話で売却指示をして現金化し、相続人に振り込むという形になります。

非上場会社の株式を名義変更する場合には、その会社に連絡をして、遺言執行者としての書類を提出することで名義変更が完了します。それでは具体的に見ていきましょう。

1、遺言執行とは

遺言執行とは、遺言書の内容を実現するために手続きをおこなうことをいいます。実際に遺言執行をおこなう人のことを、遺言執行者と呼びます。遺言執行者は、相続人を代表して、相続が始まったら相続人を特定したり、相続財産目録の作成や預貯金や不動産などの遺言執行に必要な一切の手続きをする権限があるのです。とくに子供の認知手続きや相続人を廃除する手続きは遺言執行者しかできないので、重要な役割を担っているといえるでしょう。

遺言執行者の選任方法には次の3つの方法があります。

 

①遺言書で選任する

遺言書であらかじめ「遺言執行者は専門家の〇〇氏とする」というように指定する方法になります。ただ、指定されたからといって必ずしも遺言執行者にならなければならないわけではありません。遺言執行者となることを断ることもできますので、指定する場合には、あらかじめ了承をもらっておくとスムーズに進めることができます。

なお、遺言執行者は信頼できる専門家にしておくことをお勧めいたします。専門知識がないまま遺言執行者となってしまうと、遺言の内容が実現できなくなる恐れもありますので、信頼ができる専門家にお願いをするべきでしょう。

 

②家庭裁判所が選任する

これは遺言書で遺言執行者が指定されていない場合に、家庭裁判所に選任をしてもらう方法になります。相続人が家庭裁判所に遺言執行者選任の申し立てをおこなうのですが、このときに、申し立てをする側(つまり相続人)が候補者を指定して申し立てをすることができます。

候補者を指定した場合には、家庭裁判所はその候補者を遺言執行者として選任することになりますので、こちらも信頼できる専門家を候補者として申し立てをおこなうようにしたほうが良いでしょう(もちろん候補者として指定する人にあらかじめ了承はとりましょう)。候補者がいない場合には、家庭裁判所が備え付けのリストの中から勝手に選任する形となります。

 

③第三者が選任する

遺言書のなかで、「〇〇氏が遺言執行者を選任する」ということを記載してあれば、その人が遺言執行者を選任することになります。〇〇さんが死亡している場合には、②の家庭裁判所が選任する方法になります。

2、遺言執行者としての口座を開設!

上場会社の株式を名義変更する場合については、まずは遺言執行者としての口座を開設しなければなりません。口座名は「故○○○遺言執行〇〇」という名義で開設となります。その際に必要となる書類は下記のとおりです。

 

①遺言書の謄本(公正証書遺言以外の場合は、家庭裁判所の検認済み証明書付きのもの)

②亡くなった人の戸(徐)籍謄本(死亡の事実が記載されているもの)

③遺言執行者の印鑑証明書または資格証明書

※証券会社によって異なることがありますので、必ず証券会社に確認をしてください。

 

書類を提出すると、遺言執行者としての口座が開設され、同時に移管手続きも完了します。その後に現金化して相続人に振り込むという形になります。

3、非上場株式を持っているなら会社に連絡を!

非上場会社の株式を持っている場合は、その会社に連絡をすることになります。特別に遺言執行者の口座を開設するということはないところが多いですが、その会社の株主名簿を書き換えてもらう手続きをすることになります

すこし厄介なのが、血縁関係以外の第三者に株式を相続するような場合です。生前に介護をしてもらった介護士さんに相続させるとか、老人ホームでお世話になった施設長に相続をさせるとか、なかには愛人に相続をさせたいとかの場合です。

 

非上場会社の株式というのは通常、勝手に譲ってはいけないという制限がついています。血縁関係の相続人に譲る場合は問題ないのですが、第三者に譲る場合には、譲ることを承認してもらう手続きをする、というひと手間が入りますので、覚えておきましょう。必要になる書類は、上場会社の際の口座開設と同じところが多いようですが、必ず会社に確認をしましょう。

 

いかがでしたでしょうか。今回は、遺言執行での株式の名義変更についてご説明させていただきました。他の名義変更とは違い戸惑うところもあったかと思います。上場会社の株式と非上場会社の株式とで方法は違いますので、難しいと感じるような場合には行政書士等専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は本人の財産によってある程度かかりますが、自分自身でする場合の時間や手間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。