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遺言執行はいつやる?手続き開始のタイミングについて

相続の際、亡くなった人の遺言で自分が遺言執行者に指定されているとき、手続きはいつから開始すればよいでしょうか?

 

ここでは遺言執行の手続き開始のタイミングについて解説をしていきます。

遺言執行者の行うこと

まずは、遺言執行者がやらなければならないことを確認しておきましょう。

 

遺言執行者には、遺言を実現させる義務が課され、次のようなことを行わなければなりません。

 

①相続人への通知

②相続人が他にいないか調査

③相続財産の調査並びに相続財産目録の作成

④各種相続財産の名義変更等の手続

 

これらの手続きは、法律上「遅滞なく」行わなければならないとされています。

 

「遅滞なく」というのはすぐにという意味ですので、遺言執行者に指定されたらすぐ手続きに取り掛かる必要があります。

 

この手続きを行わずに放っておくと、相続人から解任されてしまう他に、以下のようなデメリットがあります。

1.税務手続き上のデメリット 

相続に伴う税務上の手続きには期限があります。

 

代表的なものとしては、相続税です。相続税は、遺産総額が(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると、相続することを知った日から10か月以内に申告・納税しなければなりません。

 

相続税申告の主な必要書類

・相続税の確定申告書

・亡くなった人戸籍謄本(生まれてから死亡まで)

・遺言書の写し

・遺産分割協議書の写し、各相続人の印鑑証明書

 

この期限を超えてしまうと、延滞税や無申告加算税といった追徴課税がかかってしまいます。

 

銀行預貯金の相続手続きを放置していた結果、実は亡くなった人の預貯金が予想以上に多く相続税を支払わなければならなかったが期限を過ぎてしまった、というような場合は、高額な追徴課税支払わなければなりません。相続財産の金額によっては相続税がかからない場合もありますので、相続人が相続税を支払わなければならない状況なのかどうかを確定するためにも、遺言執行者は早めに相続財産調査を行い、相続財産目録の作成をしておきましょう。

2.相続放棄をする上でのデメリット

相続人は、遺言で指定された相続を一切しないことを選択することができます。これを相続放棄といい、相続することを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てることで、相続放棄をすることができます。

 

例えば、亡くなった人は自分が長年住んでいた土地建物の他にめぼしい財産はなく、それを長男に継いでもらいたいと考え、遺言で土地建物を長男に相続させることとしていた場合を想定します。

 

このとき長男は、「この建物はかなり老朽化が進んでいて、資産価値もほとんどないから今後の維持費がかかるくらいなら相続せずに放棄したい」と考えた場合、遺言を無視して相続放棄することができます。

 

ただし、相続放棄の期限は3か月です。税務上の手続きより短く、裁判所に提出する書類の取得にも時間がかかりますので、期限はあっという間に過ぎてしまいます。

 

もし、遺言執行者が手続きを放置していて、土地建物以外の財産調査を行わずにいると、「相続放棄すればいいや」と思って相続放棄したところ、その後銀行で亡くなった人の預金解約手続きをしてみたら別に口座を持っていたことが判明し、思っていたよりもずっと預金額が多いことがわかったものの、既に相続放棄してしまったことで新たに見つかった預金額の相続ができなくなってしまった、という事態になりかねません。

 

相続放棄した方が良いのかどうかの判断を正確にするために、遺言執行者としての業務は早めに行い、財産はいくらあるか、借金はいくらあるかをきちんと把握できるようにしておきましょう。

 

いかがでしたでしょうか。遺言執行はいつからやればいいのかについて見てきましたが、できるだけ早くやった方がいいことをわかってもらえたかと思います。遺言執行者としての業務は、全てそのまま専門家に任せることもできますし、手伝ってほしい一部のみを委任することもできるようになっています。

 

 

もし、自分で行うのが難しいと感じたり、戸籍謄本の収集のみを手伝ってもらいたいと考えている場合は、専門家に相談してみると良いでしょう。依頼するための費用はある程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください