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APECビジネストラベルカード(ABTC)の使い方や滞在日数などを解説

ビジネスで頻繁に海外に行く人にとって、渡航先の国ごとにビザを取得したり、時間のかかる入国審査手続きを受けると大変です。

 

そこでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)では、域内のビジネス目的の移動を円滑にするための出入国許可証「APECビジネストラベルカード(ABTC)」制度を設けています。

 

ABTCカードの発行を受けることにより、制度参加国への渡航や参加国間の移動が各段に容易になります。

 

本記事では、APECビジネストラベルカード(ABTC)の使い方や滞在可能日数、申請手続きの流れなどを解説します。

APECビジネストラベルカード(ABTC)とは?

APECビジネストラベルカード(ABTC)を取得すると、どのようなメリットがあるでしょうか。また、ABTCを申請できる条件はあるでしょうか。

本章ではABTCの概要や申請要件、カードを取得するメリットなどを解説します。

カードの概要

APECビジネストラベルカード(ABTC)とは、APEC域内を頻繁に出張するビジネス関係者の移動を円滑にするために、制度参加国・地域の政府が自国・地域のビジネス関係者に対して発行する渡航・入国許可証です。日本では外務省が申請を受け付けています。

 

カードの有効期限は5年です。ただし、カードの有効期限より前にパスポートの有効期限が来るとカードも失効するので、注意が必要です。

申請の要件

ABTCカードを取得するための条件は、以下の1~3と5のすべて及び、4の(a)(b)(c)(d)のうちのいずれかを満たしていることです。

  • 1. 有効な日本国のパスポートを所持している
  • 2. 申請書その他の提出書類に虚偽の記載がない
  • 3. 犯罪歴がない
  • 4. 次のいずれかの要件に該当する

(a)APECビジネス諮問委員会(ABAC)の日本委員、日本委員代理または日本委員を補佐する業務に従事している

(b)貿易・投資実績がある企業等の経営者または被用者で、貿易等に関する事業を行うことを目的とする参加国・地域への渡航が必要と認められる

(c)ABAC日本支援協議会の構成団体(経団連、商工会議所、経済同友会及び関西経済連合会)の職員、その団体の会員である機関の経営者または被用者で、貿易などに関する事業を行うことを目的とする参加国・地域への渡航が必要と認められる

(d)貿易等に関する事業を行う機関の経営者または当該機関の被用者で、災害復 興活動を行うことを目的とする参加国・地域への渡航が必要と認められる

  • 5. 職業運動選手、報道特派員、芸能人、音楽家、芸術家または同様の職業に従事していないこと

ABTCカードを取得するメリット

商用でABTC制度参加国に渡航する機会が多い方にとって、ABTCカードには以下のような大きなメリットがあります。

  • 1. 短期の商用目的であれば、有効期間はビザなしで何回でも渡航できる
  • 2. 同様に、商用目的であればABTCカード参加国間の移動もビザなしで可能
  • 3. 制度参加国の主要な空港の入国審査でABTC専用レーンを利用できる

ABTCカードでの滞在について

本章では、ABTCカードで滞在できる国、滞在可能な日数、ABTCカードでできる活動など、ABTCカードによる制度参加国滞在に関わる事項について解説します。

ABTCカードで滞在できる国

ABTCカードが利用できる国は、APEC加盟国である以下の21か国・地域です。

アジア諸国

日本・韓国・中国・台湾・香港・インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ブルネイ・ベトナム

環太平洋諸国

パプアニューギニア・オーストラリア・ニュージーランド・米国・カナダ・メキシコ・ペルー・チリ・ロシア

※アメリカ・カナダはAPEC加盟国ですが、ABTCカードは暫定参加国として、電子認証システムによる滞在許可(米ESTA、カナダeTA)取得を条件にABTCカードを利用できます。

※現時点ではアメリカ・カナダ両国による事前審査の承認を受けられません。

ABTCカードで滞在可能な日数

ABTC制度参加国の最大滞在日数は下表のとおりです。国によって異なりますが、おおむね2か月または3か月となっています。

15日

ブルネイ

60日

中国 香港 インドネシア マレーシア パプアニューギニア シンガポールベトナム

90日

オーストラリア カナダ(eTA利用) チリ 日本 韓国 メキシコ ロシア 台湾 タイ 米国(ESTA利用)  

3か月

ニュージーランド ペルー

ABTCカードでできる活動

ABTCはAPEC域内の貿易・投資の円滑化に寄与することを目的とした制度であるため、ABTCを使用してAPEC域内に入国する場合に可能な活動は制限されています。

 

活動制限に違反した場合は、当該参加国・地域の国内法令に従った処罰を科されます。また、ABTCカードの失効手続きをとられてしまう可能性があります。

認められる活動

  • 1. 収入または報酬を伴わない活動
  • 2. 商談、業務連絡、市場調査、投資のための契約締結
  • 3. 納品後の、報酬を伴わないアフターサービスなど

認められない活動

  • 1. 観光、就学、就労
  • 2. 収入を伴う事業を運営する活動
  • 3. 報酬を受ける活動

ABTCカードの使い方

ABTCカードは、主に空港での入国審査時に、パスポートとともに提示します。

 

参加国の主要な空港ではABTC専用レーンを通って迅速に入国審査を受けられます。マレーシア・シンガポール間では陸路での国境通過にも専用レーンがあります。

 

なお、渡航先の国・地域のビザを取得している場合は、ABTCを提示すると短期商用の在留資格を誤って付与され、保有していたビザを取り消される可能性があります。この場合は、保有しているビザを提示して入国することをおすすめします。

ABTCカードに家族などの同行者はつけられる?

ABTCカードは制度参加国でのビジネス目的の滞在・移動を円滑にするための制度なので、渡航国での居住を前提としていません。

従って、『カード取得者本人のみの渡航』が前提となるので、家族などの他者を同伴することは認められません。

ABTCカードの注意点

ABTCカードを取得・利用する上で、以下の点にご注意ください。

(1)ABTCカードはパスポートの代わりにはならない

ABTCカードには有効なパスポート番号が記載されます。そのため、記載されているパスポートの失効にともない、新たに発給を受けることとなった場合は、改めてABTCカードの申請を行う必要があります。

(2)申請から発行までに平均9カ月と時間がかかる

ABTCカード申請者が急増していることなどから、2023年9月現在では申請受理からカード交付までに平均9か月程度かかっています。

申請書類に不備があった場合などには、それ以上の期間がかかる可能性もあります。

(3)事前審査の時点でパスポートの有効期間に条件を設けている国・地域がある

ABTCカード制度参加国のうち、一部の国・地域では事前審査開始時点で申請者のパスポートの有効期間に「6か月以上」などの条件を設けています(下表)。

この事前審査開始時点は、日本の外務省が事前審査を依頼した時点ではなく、事前審査を行う当該国・地域が実際に審査を開始する時点を指します。

 

事前審査の手続きが大幅に停滞している国・地域もあることから、パスポートの有効期間に十分余裕があることを確認してください。

 

【パスポート有効期間にかかる条件を設けている国・地域】

参加国・地域

事前審査開始時点において要求される有効期間

マレーシア

6か月以上の有効期間が必要

フィリピン

6か月以上の有効期間が必要

ブルネイ

6か月より長い有効期間が必要

韓国

6か月より長い有効期間が必要

中国

12か月より長い有効期間が必要

インドネシア

18か月以上の有効期間が必要

申請について

本章では、申請手続きの流れや申請書類、代理申請や中途発行など、ABTCカードの申請手続きの詳細を解説します。

申請の流れ

申請書類提出から交付までの流れは以下のとおりです。

1. 申請書類提出

必要な申請書類(次項参照)を準備の上、外務省経済局アジア太平洋経済協力(APEC)室ABTC班宛に郵送します。

2. 審査

まず日本の外務省で申請要件の審査を行った後、ABTC制度全参加国・地域に対して事前審査を依頼します。審査状況については申請者自身がオンライン上で確認できます。

3. 交付

原則として、制度参加国・地域の事前審査結果がすべてそろったことを外務省が確認した後、ABTCの発給・交付手続き(簡易書留による郵送)を行います。

申請関連

申請に必要な書類と費用は以下の通りです。

申請書類

以下の必要書類を揃えた上で、外務省APEC室ABTC班に郵送します。

外務省側で書類の形式要件をチェックしますが、不備や違反があると差し戻されてしまい、申請をやり直すことになるため、郵送前にチェックする必要があります。

①【一般申請者の提出書類】

新規申請の場合に、一般の申請者が提出を求められる書類は以下のとおりです。

  • 1. ABTC申請書
  • 2. 顔写真(4.5cm x 3.5cm・2枚)
  • 3. パスポートの写し(顔写真と身分事項のページ)
  • 4. 在職証明書
  • 5. 登記事項証明書(四季報などで企業の存在と概要が確認できる場合はその写し可)
  • 6. 貿易・投資実績を示す文書(決算書/損益計算書等、関係部分の写し)
  • 7. 所属企業のパンフレット
  • 8. 返信用定型封筒(1名につき1通) 海外の場合はEMS封筒+送付伝票
  • 9. 郵便切手(封筒に貼付) 国内444円・海外はEMS送料分
  • 10. 収入印紙13,100円分

※5・6・7は、同一事業主に雇用される複数の申請者に共通している場合は1部で足りますが、8・9・10は申請者ごとに1名分ずつ必要となります。

②【ABAC委員・委員代理・委員補佐が申請する場合】

必要書類は1・2・3・8・9・10となります。

③【経団連・日本商工会議所・経済同友会・関西経済連合会の会員企業の関係者が申請する場合】

必要書類は1・2・3・4・7・8・9・10となります。なお、7については申請書に企業の概要が確認できるURLを記載する場合は提出の必要はありません。

④【貿易関連事業で災害復興活動を目的とする場合】

必要書類は1・2・3・4・5・7・8・9・10です。

⑤【直近1年以内に同一企業の申請者がいた場合】

必要書類は1・2・3・4・5・8・9・10です。

申請にかかる費用

ABTCカード申請にかかる費用は、収入印紙13,100円分です。

代理申請も可能

申請書類の署名欄には申請者本人による署名が必要ですが、申請手続き自体は代行業者による代理申請も可能です。

個人の代理申請のほか、企業の部署でABTCを必要とする複数人の申請を一括して代理することも認められています。

中途発行も可能

ABTCカードは原則として、すべての制度参加国・地域の承認が得られてから発行されます。

 

ただし、一部の国・地域への渡航のみを予定している方で、それらの国・地域からの承認があれば足りる場合には、中途発行が可能です。

 

中途発行の場合は、申請者が希望する国・地域のみが裏面に記載されたABTCカードを発行することになります。

 

また、中途発行をした場合でも、ABTCカードの中途発行によるカード交付を受けた後に、新たに承認を受けた参加国・地域を渡航先に追加できます。

 

渡航先を追加した場合、ABTCカードの有効期限は当初の中途発行時の有効期限がそのまま引き継がれます。

まとめ

ABTCカードは、

などの大きなメリットがあります。

 

特に、ABTC制度参加国への出張機会の多い方、出張が見込まれる方は取得をおすすめします。

 

一方で、ABTCカードの発行申請手続きを申請者本人が行うには労力を要し、さらに書類不備による時間ロスのリスクもあります。

業務が多忙な中でも、できる限り負担をかけず、かつ確実にカード発行を受けるため、ABTC申請を希望する方はぜひビザ申請を専門とする行政書士にご相談ください。

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