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APEC各国の移動を円滑にするAPECビジネストラベルカード(ABTC)の取得方法とは?
さまざまな国や地域に渡航するビジネスマンにとって、長期のビジネスビザは非常に便利なものです。
信用できるビジネスマンの申請手続きを省略するため、APEC(アジア太平洋経済協力会議)の協力下の21か国では、各国共通で申請できる『APECビジネストラベルカード(ABTC)』が整備されています。
APECビジネストラベルカード(ABTC)とは?
APECビジネストラベルカード(ABTC)とは、APEC(アジア太平洋経済協力会議)地域内におけるビジネス関係者の異動を円滑にすることを目的とした特別なカードです。
申請することで、APEC(太平洋経済協力)ならびに移行中の経済体のメンバー間において、情報が共有されます。
通常、外国人が他国へ入国するにはビザの取得が必要ですが、APECビジネストラベルカード(ABTC)なら、参加対象国19か国への入国の際、ビザが不要となります。
APECビジネストラベルカード(ABTC)の概要
APECビジネストラベルカード(ABTC)はAPEC経済の統合を促進する措置のひとつとして交付されるものです。
このため、APEC経済においては入国が容易かつ迅速になり、ビジネスと国際貿易を促進する動機付けにもなります。
APECビジネストラベルカード(ABTC)の参加対象国
APECビジネストラベルカード(ABTC)への参加対象国は以下のとおりです。
- オーストラリア
- マレーシア
- 韓国
- ブルネイダルサラーム
- メキシコ
- チリ
- ニュージーランド
- 台湾(中国台湾)
- 中国
- パプアニューギニア
- タイ
- 香港
- ペルー
- ベトナム
- インドネシア
- フィリピン
- 日本
- シンガポール
- カナダ※
- 米国※
※ただし、米国、カナダはABTC専用優先レーンの利用はできますが、事前審査の承認は受けられません。
ABTCカードの取得条件
APECビジネストラベルカード(ABTC)を取得するには日本の場合、外務省が省令および告示で定めた次の交付要件を満たしている必要があります。
- 1. 有効な日本国旅券の所持
- 2. 申請書、およびその他の提出書類に虚偽の記載がない
- 3. 犯罪歴がない
- 4. 外務大臣が告示で定めた次のいずれかの要件に該当している
- APECビジネス諮問委員会(ABAC)の日本委員か日本委員代理、あるいは日本委員を補佐する業務に従事している
- 貿易・投資実績があり、企業などの経営者または当該企業などに雇用されていて、貿易などに関する事業をおこなうことが目的で参加国および地域への渡航が必要であると認められる
APECビジネストラベルカード(ABTC)のメリット
APECビジネストラベルカード(ABTC)を取得すると、取得者には次のようなメリットがあります。
- ビザの手続きが免除される
- 出入国審査の通過時間が短縮できる(ABTC専用優先レーンの利用が可能)
- 入国審査で執拗に質問を受けるといったトラブルがない
このように、円滑に出張を進めていくことが可能になることから、出張頻度の高いビジネスマンの中にはAPECトラベルカードの取得を検討する人も増えています。
APECビジネストラベルカード(ABTC)の発行までにかかる期間はどれくらい?
APECビジネストラベルカード(ABTC)は、申請の際に政府が旅行者のAPEC情報をほかのAPECメンバーと共有するため、発行までの期間が通常のビザよりも長くなることがあります。
APECビジネストラベルカード(ABTC)が交付されるまでの流れ
日本においてAPECビジネストラベルカード(ABTC)はおおまかに以下のような流れで取得できます。
- 1. 申請書類の提出
- 2. 審査
- 3. 交付
ステップは少ないけれど、申請方法が基本的に郵送のみであったり、支払い方法が収入印紙のみなど、注意点がいくつかあります。
細かい内容は後ほど説明していきます。
手元に届くまでの期間
申請受理からAPECビジネストラベルカード(ABTC)の交付までには、現在平均およそ9か月が必要です。
ただし、申請書類に不備などがあると、それ以上の期間を要しますのでご注意ください。
書類を準備する期間も考慮して早めに取りかかる必要がある
ビジネス関係者にとってカード取得のメリットは大きいけれど、取得に9カ月もの時間を要します。
そのため、出張などの予定がある場合には申請には時間的な余裕を確保しておく必要があります。
しかしながら、実際にどれくらいの時間を要するかは申請者個々の所属企業の状況などによって異なります。そこで所属企業が用意する書類の準備にはどれくらいの時間を要するのか、関係部署などにあらかじめ問い合わせておくとよいでしょう。
また万が一、書類を準備する期間などに不安がある場合には、ビザの申請代行をおこなう行政書士などに依頼するのもひとつの方法です。
中途発行にすると早めに受け取れる
APECビジネストラベルカード(ABTC)は原則としてすべての参加国および地域からの承認がそろってから発行されますが、一部の国および地域のみの承認でよいのであれば中途発行が可能です。
中途発行なら全参加国および地域の審査結果を待つ必要がないため、通常よりも短い期間で取得できます。
ただし、実際にどれくらいの期間が短縮できるかは、渡航を希望する国および地域から事前審査によって申請がいつ承認されるかによって異なります。
そのため、できる限り早めに手続きに取り組めるようにしましょう。
APECビジネストラベルカード(ABTC)の発行にかかる料金はいくら?
APECビジネストラベルカード(ABTC)の取得には、申請料および返信用の定型封筒、郵便切手などの購入費用が必要です。
- 申請手数料…13,100円(※収入印紙でのお支払い)
- 郵便切手…444円
このほか、行政書士に申請代行を依頼する場合には別途代行費用が発生します。
なお、申請手数料については、収入印紙以外では支払うことができません。
ただし、収入印紙は日本国内のみの取扱いで在外公館では取扱いがないことから、海外在住の場合には関係者や行政書士に入手を依頼しなくてはなりません。
申請時には金額の過不足がないようにしなければならないため、注意しましょう。
APECビジネストラベルカード(ABTC)の申請方法
では実際にAPECビジネストラベルカード(ABTC)はどのように申請すればよいのでしょうか。ここからは申請の流れや必要書類を詳しくみていきます。
申請の流れ
申請の流れについては1~3の通りですが、詳しくは段階ごとに以下のような手続きが必要です。
1. 申請書類の送付 |
以下に示す必要書類を準備し、外務省経済局アジア太平洋経済協力(APEC)室のABTC班に郵送します。 海外に駐在している場合も、在外公館には申請できないため、上記に郵送が必要です。 |
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2. 審査 |
日本国内において、申請要件に関する審査がおこなわれます。 その後、日本からABTC制度の全参加国および地域に対して事前審査が依頼されます。
なお、およそ4か月程度でオンライン上の「ABTCシステム」により、申請者自身が各国および地域による審査状況や申請番号を確認可能です。
また、途中発行の場合には別途手続きをおこなう必要があります。この場合、以下の対応が必要です。
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3. 交付 |
各国および地域からの事前審査結果がそろうと、ABTCの発給および交付手続きがおこなわれます。
交付は原則郵送ですが、特別な事情などがある場合にはE メールあるいはFAXによる交付も相談できます。 |
※APECビジネストラベルカード(ABTC)の受領後はAPEC室あてにEメールで連絡します。
※審査の結果APECビジネストラベルカード(ABTC)不交付の場合は収入印紙付き手数料納付書は返却されますが、その他申請書類等は返却されません。
※APECビジネストラベルカード(ABTC)発行前であれば申請を取下げることができます。
※退職、あるいは要件に満たない会社などに転職した場合APECビジネストラベルカード(ABTC)は速やかに返納しなければなりません。
※紛失または焼失、著しく損傷した場合には再交付を依頼できます。
※すでに有効なAPECビジネストラベルカード(ABTC)を所持している場合には6か月前から新たな交付申請をおこなえます。
申請書類
申請にあたっては、次のような書類が必要となります。
1.APEC商用渡航カード交付申請書 |
外務省のサイトから入手。 |
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2.収入印紙 |
手数料納付書を外務省のサイトから入手の上、規定の金額分を添付。 |
3.顔写真 |
縦45mm×横35mmの写真2枚。 |
4.パスポートの写し |
顔写真と身分事項が記載されたページのコピー。 |
5.在職証明書 |
所属企業などとの雇用関係を証明できるもの。 |
6.所属企業などの登記事項証明書 |
四季報などに掲載されている企業などの場合、提出は免除。 |
7.所属企業などにおける貿易や投資の実績がわかる文書 |
決算書や損益計算書の関係部分の写し。 |
8.所属企業などの業務内容がわかる資料 |
事業報告書や会社の業務概況報告、会社案内など。
※ただし関連資料がホームページに掲載されている場合は、会社案内については免除。 |
申請における注意事項
ビジネス関係者の各国の移動を円滑にできるAPECビジネストラベルカード(ABTC)ですが、申請時には次のような点に注意が必要です。
有効期限はパスポートに準じる
APECビジネストラベルカード(ABTC)の有効期限は5年となっています。
ただし、パスポートの残存有効期限が5年未満の場合、有効期限はパスポートの有効期限に準じます。
収入をともなった事業の運営や報酬を得る活動は処罰の対象となる
APECビジネストラベルカード(ABTC)の活動目的は以下に限定されています。
『短期間の収入あるいはいずれも報酬をともなわない活動および商談や業務連絡、市場調査、また投資のための契約締結、納品後のアフターサービスなど』です。
このため、収入が発生する事業の運営や報酬を得る活動を行った場合は、処罰の対象となります。
個人事業主は必要書類が異なる
個人事業主でも、申請要件を満たしていればAPECビジネストラベルカード(ABTC)の申請が可能です。
ただし、一般の申請者とは必要書類が異なります。
詳細については外務省APEC室ABTC班にメール(abtc@mofa.go.jp)にて問い合わせが必要です。
まとめ
ビジネスマンのなかでも、特にAPEC地域に出張などが多いのであれば、APECビジネストラベルカード(ABTC)の取得がおすすめです。
ただし、交付には通常のビザよりも時間がかかるため、余裕をもった申請をすることで、該当地域内での移動がより円滑にできるでしょう。
申請において、書類の不備やミスが起こると、カードの取得にさらに期間がかかるため、専門の行政書士などに依頼することをお勧めします。