預貯金の名義変更で相続税はかかるのか?
「故人の預貯金を名義変更したいけどそもそも相続税がかかるのかどうか不安」、「相続税ってなに?」と相続手続きをする際に、相続税がかかるのかどうか気になっている人も多いのではないでしょうか?
なかには、「相続財産は少額の預貯金しかないから相続税ってかからないだろう」、「故人名義の財産以外は相続財産ではないから相続税はかからないだろう」、と思っている人もいるかもしれません。
今回は、預貯金の名義変更で相続税はかかるのかどうかについて説明していきたいと思います。
1、相続税とは
そもそも相続税とは何でしょうか。相続税とは、人の死亡によって財産が移転する際に課される国の税金のことです。ようするに亡くなった方(故人)の財産を相続することに対して税金が課されてしまうのです。
故人の財産に対してまでも税金が課されるなんてひどい話ですが、法律で決まってしまっていることなので仕方がありません。
ただし、相続したすべての人に相続税が発生するわけではありませんのでご安心ください。相続する財産価格によって相続税が発生したり相続税はかからない場合もあるのです。
2、名義預金って何?
相続する財産の中で最も多いケースが預貯金だと思います。ただ、故人の名義である預貯金口座だけが相続財産に含まれると思っている人が多いのではないでしょうか。
実は故人以外の名義の預貯金口座も相続財産に含まれることがあるんです。その名も名義預金です。あまり聞きなれない言葉だと思います。
しかし、相続の世界ではよく聞くことになる名前なんですね。名義預金とは故人名義の預貯金口座ではないけど、故人の財産といえる預貯金口座のことになります。
???なんだかよくわからないですよね。故人名義じゃないのに故人の財産になるわけないじゃないか!と思われる方が多いと思います。
これは例えば、父が亡くなった時に、専業主婦であった母名義の預貯金口座が見つかった場合ですとか、子や孫のために子名義や孫名義の預貯金口座が見つかった場合とかがよくある例になります。
このような場合は、預貯金口座の名義人が妻名義・子名義・孫名義であったとしても、実際にその口座を管理等していて、真の預金者は故人本人(今回の場合は父)だということになりますよね。その場合には、故人名義の預貯金口座ではないけど、故人の財産と同じことだよね、ということで相続財産に含めて取り扱うことになるのです。
くれぐれも自分自身以外の名義で預貯金口座を開設して、そこに多額のお金を入れておくことが相続税対策になるとは思わないことです。
4、どうやって名義預金だと判断される?
それでは次に名義預金と判断される基準について見ていきたいと思います。名義預金だと判断される基準については下記の点から総合的に判断されます。
① 管理しているのは誰か
これは、通帳やキャッシュカード、届出印を管理しているのは誰であったかどうか、です。預貯金口座の名義となっている人自身が管理しているのか、それとも故人が管理していたのかどうかを確認するのが良いでしょう。故人が管理しているのであれば当然それは名義預金とされますし、あとは金融機関に登録している住所や連絡先が預貯金口座の名義となっている人のところではなく、故人のところである場合は名義預金と判断されやすくなります。
② 預貯金口座の名義となっている人は、その口座について知っていたか
これはそのままズバリですね。その口座の存在について知っているのかどうかです。知らなかったのであれば名義預金だと判断されますし、知っているとしてもその預貯金口座の開設を、名義となっている人自身がしていない場合には名義預金と判断されやすいです。
③ 預金したお金の出所はどこか
預貯金口座の中にあるお金の出所、つまり原資ですね、はどこなのかどうかです。預貯金口座の名義となっている人自身に収入があって、その収入の中から預貯金をしていたのであればいいですが、故人が生前自分自身の収入から預貯金口座に入金していたのであれば名義預金となります。
名義預金と判断されれば、それは相続財産として含めますので相続税の対象となります。名義預金だと判断されないためには、生前にその預貯金口座を贈与しておくことで、相続財産として含めないことができます。ただし、その場合には、贈与を受けた者には贈与税という別の税金を考える必要が出てきますので、詳しくは専門家に相談したほうが良いでしょう。
5、預貯金の名義変更で相続税はかかるのか?
では、今回の命題である預貯金の名義変更(相続)で相続税はかかるのかどうかです。結論としては、名義変更をしただけで自動的に相続税がかかるわけではなく、「相続対象の総財産>相続税が課税されない金額【3000万円+(600万×相続人数)】」の場合に相続税が発生することになります。
つまり、相続対象の総財産が、相続税が課税されない金額よりも大きければ相続税が発生するということになり、少なければ発生しない、ということになります。相続対象の総財産には、故人名義のものはもちろん、故人の名義でなくても相続財産とみなされてしまうこともありますので気を付けましょう。
そして、最後に相続税がかかるケースとかからないケースの例を見てみましょう。
① 相続税が発生するケース
相続対象の総財産が6000万円
【内訳:故人名義の預貯金2000万、名義預金4000万】
相続人が4人【配偶者・子供3人】
計算式:3000万+(600万×4)=5400万
よって、6000万円(相続対象の総財産)>5400万(相続税が課税されない金額)
となり、相続対象の総財産のほうが多いという場合です。
② 相続税が発生しないケース
相続対象の総財産が3000万円
【内訳:故人名義の預貯金2000万、名義預金1000万】
相続人が1人【配偶者のみ】
計算式:3000万+(600万×1)=3600万
よって、3000万円(相続対象の総財産)>3600万(相続税が課税されない金額)
となり、相続対象の総財産のほうが少ないという場合です。
いかがでしたでしょうか。ひとえに相続税がかかるのかどうかについては、どれくらいの相続財産があって、そこから相続人が何人いるのかによって変わってくるものと思います。
さらに、預貯金といっても故人名義の預貯金口座はもちろん、名義預金として故人名義以外も相続財産に含めることになります。
どのような財産が相続対象財産になるのかについて、判断が難しいこともあると思います。相続税の申告の際に相続財産が漏れていた場合や相続税が発生するのに無申告のような場合には、追加で多額の税金がかかることもあります。相続財産を正しく把握することはとても大切なことですが、それ自体が難しく感じる方も多いと思います。
そのような場合は、税理士をはじめとする士業の専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は相続する財産によって数万円~数十万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。