口座名義人が死亡した場合に預金名義変更について教えてください
相続の手続きを大変に感じる方も多いのではないでしょうか。特に、死亡されて故人となった方が生前もっていた預金口座を、どうすればいいのかわからないので教えてほしい、という方も多いと思います。今回は口座名義人が死亡した場合の預金名義変更について説明していきたいと思います。
全体の流れとしては下記になります。
1、金融機関に知らせる
2、必要書類を収集する
3、遺産分割協議書を作成する
4、申込書を作成する
5、金融機関に名義変更手続きに行く
それではそれぞれ具体的に見ていきたいと思います。
1.死亡した事実と相続が発生したことを金融機関に知らせよう!
まずは、なんといっても預金口座名義人が死亡した事実、それと相続が発生した事実を金融機関に知らせましょう。知らせる方法は電話でも良いですし、お近くの窓口に出向いて知らせる方法でも構いません。
知らせる場所は、口座名義人が持っている支店じゃなくても大丈夫です。つまり、お近くの支店でもいいですし、大きい金融機関であるならば、コールセンターが用意されていますので、そこに知らせる方法でも大丈夫です。
中には店舗を持たないネット銀行の口座を持っている故人もいらっしゃるでしょう。その場合も、コールセンター等の連絡先がネットで調べると簡単にでてきますので、そちらに知らせるようにしましょう。
よく聞く話として、病院が死亡した事実を金融機関に知らせるとか、葬儀屋さんや死亡届を提出した役所側が死亡した事実を金融機関に知らせる、といったことはありませんので、必ず相続人であるご遺族の方が金融機関に知らせてあげましょう。
金融機関は、死亡した事実と相続が発生した事実の連絡を受けると、口座を凍結してすべての機能を一時停止させます。これは、不正に引き出されたり、犯罪に使われたりすることを防止する意味合いがあり、この預金口座の凍結を解除することを、名義変更(相続)する
手続きと一般的に言われています。
2.気になる必要書類を見てみよう!
口座名義人が死亡した場合の預金名義変更で必要になる書類は下記になります。
① 銀行所定の申込書(名義書換依頼書や相続届等呼び方は様々ですが、ようするに申込書のことになります)
② 預貯金通帳・キャッシュカード・届出印
③ 亡くなった人の、出生から死亡までの戸籍謄本
④ 相続人全員の戸籍謄本(3ヶ月以内のもの)
⑤ 相続人全員の住民票(3ヶ月以内のもの)
⑥ 相続人全員の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
⑦ 公正証書遺言や検認済みの遺言書
⑧ 遺産分割協議書(公正証書遺言がある場合は不要、自筆証書遺言等の場合は必要になる場合もあります)
⑨ 委任状等
※上記はあくまでも一般的なものとなり、金融機関によって若干異なることがありますので、必ず提出をする金融機関に確認をしてください。
2-1.出生から死亡までの戸籍謄本ってなに?
必要書類の中にある「出生から死亡までの戸籍謄本」ってなんのことだろう?戸籍ってひとつじゃないの?と思われる方もいるかもしれません。結論からいいますと、戸籍はひとつじゃないんですね。
戸籍というのは出生に始まり、結婚・離婚・再婚・死亡等の身分関係における人生の転機において、その都度作成をされていくものとなります。そして、戸籍が作成された場所を本籍地と呼び、その本籍地を管轄する役所で管理されているものになります。
この本籍地というのは日本であればどこでも自由に置くことができます。住所とは違いますからね。住所は実際に住んでいる場所にしか置けませんが、本籍地は住んでいなくても日本であれば置くことができます。東京に住んでいながら沖縄に本籍を置く、とかも可能です。
戸籍を取得できる役所はこの本籍地を管轄役所となりますので、本籍地がひとつの場所だけですべて作成されていれば、取得する役所は1か所のみですべて取得ができることになります。
しかし、作成した戸籍の本籍が1ヶ所ではない場合には、作成された本籍を調べながら生まれたときまで戸籍まで遡って取得していく作業が発生します。これがなかなか大変だったりします。
そもそも戸籍の読み方がわからなければ本籍を調べることもできませんし、本籍が遠方だったりした場合にも大変です。なかには生まれたときには日本ではない別の国籍だったりした場合には、日本だけで出生まで遡ることができず、外国の書類まで必要になったりと困難を極めることが出てきます。
そうなった場合には、もはや自力で集めるというよりも、専門家のサポートをお願いするほうがいいでしょう。名義変更の手続きにおいて、最も集めるのが大変な書類といっても過言ではありませんね。
2-2.公正証書遺言?自筆証書遺言ってなに?
次に難しいのが、遺言書があるかどうかではないでしょうか。公正証書遺言や自筆証書遺言って普通の遺言ではないの?と思われる方も多いと思います。簡単にいうと下記のとおりです。
公正証書遺言
→遺言書を公証人が作成することで、その内容に関して客観的にとても高い信ぴょう性が担保されているもの。
自筆証書遺言
→死亡された人が生前に自筆で作成したもので、その内容に関して客観的な信ぴょう性は低いものとなりがちのもの。
公正証書遺言であればそのままで有効なものとして使用できますが、自筆証書遺言の場合には必ず家庭裁判所で検認という手続きを得ることで有効なものとして使用できるようになり、必要書類にある検認済みの遺言書として扱われます。
なお、裁判所での検認手続きは、弁護士でなければ代行できません。
3.遺産分割協議書を作成しよう!
遺言書がない場合には、遺産分割協議書を作成しましょう。遺産分割協議書とは、相続人全員で相続財産をどのように分配するか決めたことを書面にしたものとなります。
なお、遺言書がある場合で、その遺言書が公正証書遺言ではない場合には、この遺産分割協議書が必要になることがあります。それは、遺言書の内容に分配方法が明確に記載されていないような場合が当てはまり、その場合には遺言書があっても遺産分割協議書を作成する必要がでてきます。
4.申込書に相続人全員の署名と実印を押してもらおう!
銀行所定の届出書に、相続人全員が記入と実印の押印が必要となります。書き間違えた場合には、相続人全員の実印で訂正をしなければならなくなりますので、間違えないように細心の注意を払いましょう。
特に相続人が遠方に住んでいる場合などには時間がかかったりしますし、何度も書き間違えるとそれこそ大変になってしまいます。大変だと感じる場合には、専門家である行政書士に代行を依頼することを視野にいれてもいいかもしれません。行政書士に依頼した場合には、行政書士の署名・押印のみで可能となりますので、手続きがスムーズになるでしょう。
5.さあ、金融機関に預金名義変更に出発だ!
必要書類が揃ったら金融機関に死亡した口座名義人の預金名義変更手続きにいきましょう。書類を提出したら、あとは入金されるのを待つことになり、期間はだいたい2~4週間程度が平均値となります。
いかがでしたでしょうか。今回は口座名義人が死亡した場合の預金名義変更について説明させていただきました。
手続きそのものに複雑なところは少ないですが、提出する亡くなった人の戸籍謄本の取得や書き間違えると面倒になる書面があったりと難しさを感じる方も多いかもしれません。そのような場合は、行政書士等専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は数万円程度かかりますが、相続する金額やかかる時間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。