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預貯金の名義変更で贈与税はかかるのか?

まず結論から言うと、生前に贈与契約に基づいて名義変更を行った場合は、贈与税がかかり、名義人が亡くなった後の相続の一環として名義変更を行った場合には、相続税がかかります。

 

ここでは「相続人」の目線でスッキリ内容を理解できるように、「生前」の贈与は無視して、「被相続人が亡くなった後」の名義変更にフォーカスして解説をしていきます。

では、最初に前提知識として抑えておきたいのが、「相続」と「贈与」についてです。どちらも「財産が人から人に移る」という意味ではよく似ていますが、贈与と相続にはそれぞれ次のような特徴があります。

贈与:財産をタダであげる人と、タダで貰う人の合意があって成立する契約

相続:財産を持ってる人が亡くなることで発生する財産承継

 

ここで、このページのタイトル「預貯金の名義変更で贈与税はかかるのか?」に戻って考えてみましょう。ここで言う「(故人の)預貯金の名義変更」とはつまり、「故人の口座の中身を相続人に移動させる」ということですので、これは、相続による財産の承継であることが分かります。つまり、「(故人の)預貯金の名義変更」によって支払わなければいけないのは相続税であって、贈与税ではないということになります。では、こんな場合はどうでしょう?かかるのは贈与税でしょうか?相続税でしょうか?

 

日本のどこかに、Aという男性がいました。Aには、Bという妻がいます。Aは自分にもしものことがあった時の為にと、Bに内緒でB名義の口座を作り、自分の預貯金をそっくりそのまま移していました。もちろんBはそれを知りませんし、通帳や印鑑もAが管理しています。そしてBがその口座の存在を知ることのないまま数年が経過し、Aが不慮の事故で亡くなってしまいました。Bは遺品整理中に初めて、夫の預貯金が入った自分名義の口座の存在を知りました。

 

いかがでしょう?Aが亡くなる前にBに自分のお金をあげたようだから、贈与税かな、、と思った方もいるかもしれません。しかし、答えは「相続税」です。なぜしょう?それは、Bが預金の譲渡について認識しておらず、「もらう」意思表示をしていなかったからです。ここで、最初に説明をした贈与の特徴を振り返ると、贈与は「財産をタダであげる人と、タダで貰う人の合意があって成立する契約」でしたよね。つまり、お互いの意思表示の無い今回の預貯金の移動では、贈与が成立しておらず、口座の名義人はBであっても、実質的な所有者はAのままになる訳です。そのため、実態としてはAか亡くなることで、A所有のままの預貯金がBに承継される、ということになり、これは相続である(相続税が発生する)ということになります。もし仮に、Bさんが当時Aさんの預貯金の譲渡の意図について知っていて、お互いに「あげる」「もらう」の意思表示をしていたとすると、これは「贈与」に当たります。当然、その額が大きければ(110万円以上/1年間)、贈与税を支払う必要がありますし、当時贈与税を払っていなかったのであれば、相続の際に税務調査でそのことが発覚して、贈与税を支払う必要が出てくるでしょう。ちなみに、死亡がトリガーとなって効力が発生する「死因贈与」というものも、名前とは裏腹に、支払う税金は「贈与税」でなく「相続税」となります。

 

余談にはなりますが、上記のような「名義人」と「実質の所有者」が異なる預金のことを一般に「名義預金」と呼びます。生前から計画的な対策を講じていない場合、税務署の調査で「名義預金である」と認定されると相続税を払わないといけません。上記の例の他にも、おじいちゃんが内緒で孫名義の口座にコツコツ定額を積み立てていたようなケースが、名義預金の典型例として挙げられます。孫の為にしてきた健気な節税対策が全く無駄だったと思うとなんだか不憫ですが、仕方が有りません。事後対応として、その相続税の支払いをどこまで最小限に抑える(本当にそれが名義預金であるかを見極める)ために、税理士など専門家のノウハウの活用も望まれるところです。

 

いかがでしょうか?ここまでで、その預貯金の名義変更が生前の贈与にあたれば「贈与税」、死後の相続に当たれば「相続税」がかかるということが分かりましたね。また、過去の贈与税の申告漏れといったことがなければ、被相続人の死後に贈与税と出会うことは無いかとは思います。しかし、逆に、贈与のつもりでしていた事が相続財産としてみなされ、相続税が発生するケースがある、ということも覚えておきましょう。