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認知症になった親の預金解約はどうする?

認知症になってしまった場合、その人を介護するのはとても大変だと思います。精神的にも肉体的にも負担が大きいものではないでしょうか。そんな大変なことなのに、さらに金銭的な負担も及ぶとしたらとても不安になってしまうと思います。

せめて認知症になってしまった人の財産からやりくりしたい、と思うことも多いのではないでしょうか。今回は認知症になった親の預金解約はどうしたらいいのか?について説明していきたいと思います。

 

結論から先に言いますと、成年後見制度を利用して選任された成年後見人が、認知症となった親の預金解約の手続きをおこなうことになります。認知症となった後にする方法はこれしかありません。

それでは注意点などを見ていきましょう。

1、認知症ってなに?

そもそも認知症とはなんでしょうか。物忘れが激しくなった、忘れ物を取りに行ったのに忘れ物自体がなにか忘れてしまった、人の名前を忘れてしまった、昨日の夕食を忘れてしまった等々を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。しかし、これからはただの老化によるもので、認知症ではありません。

 

認知症とは、物事自体が記憶からなくなってしまう現象のことをいいます。そして、新たな記憶もできなくなり、理解力や判断能力がなくなってしまい日常生活を送れなくなる状態のことです。

 

例えば、忘れ物を取りに行ったのに忘れたものを思い出せないのは単なる物忘れです。認知症では忘れ物を取りに行ったこと自体を覚えていない状態です。昨日の夕食を思い出せない=物忘れ、夕食を食べたこと自体を覚えていない=認知症です。認知症は忘れているという自覚自体がないのです。1番有名なのはアルツハイマー型認知症ですね。

 

このような状態になると、ひとりで日常生活を送ることが困難となります。何度も同じものを買い物したり、外出したら帰宅することができなくなったり、さらには排泄さえもできなくなっていきます。これが認知症というものになります。

2、死亡以外にもある?口座凍結

認知症になってしまったことが認められると、金融機関は本人の財産を守るためにその口座を凍結します。口座の名義人が亡くなって相続が発生した場合には、相続財産の協議中に不正がおきないようにする目的で口座を凍結される、ということを知っている人も多いかと思いますが、認知症となってしまった場合もこの口座凍結はおこなわれてしまうのです。

 

凍結されると当然ながら預金の引き出しや解約等ができなくなります。これはたとえ配偶者や子であってもできませんし、使用目的が介護費用や施設の入居費用などであったとしても認めてもらえないのです。

 

最近は使用目的があきらかに本人のためであることが認められる場合には、応じてくれる金融機関も出てきましたが、それでもまだまだ応じてくれない金融機関が多いのが現状です。

 

ではどうすることもできないのでしょうか。大丈夫です、その場合には成年後見制度を利用することで凍結を解除することが可能です。

3、成年後見制度ってなに?

成年後見制度とは、判断能力がない人に代わって手続きを代わりにおこなうことができる人を選任する制度となります。選任された人は成年後見人と呼ばれ、本人の預金口座の引き出しや定期預金の解約などの財産の管理や、介護施設への入居契約など生活環境を整えるための契約行為を本人の代わりにすることができます。

 

この成年後見制度を利用する場合には家庭裁判所に申し立てをおこないます。なお、財産等を管理する人(成年後見人)に選ばれるのは、必ず親族というわけではありません。

 

家庭裁判所によって適切と認められた者が選ばれ、財産等を管理する人(成年後見人)となるのです。どのような人が選ばれるかは、本人が持っている財産だったりで決まることになりますが、多くは本人の財産を適切に管理したり争いを未然に防ぐという目的の遂行のため、中立な立場である弁護士や司法書士・行政書士・社会福祉士等の国家資格をもつ専門家である第三者がなることが多いです。
裁判所への申立は、弁護士又は司法書士でなければ代行できません。

 

財産等を管理する人(成年後見人)が第三者である専門家が選任された場合には報酬が発生しますが、この報酬も家庭裁判所で定められ、多くが月2~5万円(総財産による)で、本人が亡くなるまで続きものになります。成年後見が開始するのは申し立てから数ヶ月かかりますので、早めに申し立てをするようにしましょう。

4、認知症になった親の預金解約の方法とは

以上から結論としては、成年後見制度を利用して選任された成年後見人が、認知症となった親の預金解約の手続きをおこなうことになります。認知症となった後にする方法はこれしかありません。

5、認知症になる前に

認知症になった後にする方法は成年後見制度を利用するしかありません。しかし、認知症になる前であれば、成年後見制度を利用しなくても財産管理をすることが可能です。その方法とは「家族信託契約」と「任意後見契約」です。

 

家族信託契約とは、簡単にいうと「信頼ができる家族に自分の財産を管理する権利を渡す契約をすること」になります。この契約をすることで、家族信託名義の銀行口座を開設でき、そこに老後の生活費等をいれておくことで、例えば将来認知症になってしまった場合でも、成年後見制度を利用せずに生活費や介護費等を引き出して使用することができます。

 

もうひとつの任意後見契約とは、簡単にいうと「あらかじめ財産等を管理する人(成年後見人)となる者を決めて契約をしておくこと」になります。これは、認知症になった後の成年後見制度では、家庭裁判所が勝手に財産等を管理する人(成年後見人)を選出してしまいますが、任意後見制度ではあらかじめ自分で決めた人を財産等を管理する人(後見人)として選任しておくができます。そうすることで、将来認知症になった場合でも、この自分で決めた財産等を管理する人(後見人)が預金の引き出しや定期預金の解約などの手続きをすることができるものになります。ただ、この制度では、家庭裁判所が任意後見監督人(自分で選んだ財産等を管理する人(後見人)を監督する人)を選任する必要があり、家庭裁判所を必ず介す必要がありますが、自分で決めた信頼のおける人に財産等を管理する人(後見人)になってもらうことができる制度となっております。

 

どちらも元気なうちに時間をかけて契約内容を精査しながら契約書を準備していくものになります。契約する内容がとても重要となるものでもありますし、自分自身の財産を間違った内容で契約をしてしまい、あとからどうすることもできなくなる前に、自分自身の財産を守るためにも、これらを利用する場合には必ず行政書士などの専門家にサポートを依頼することをお勧めいたします。

 

 いかがでしたでしょうか。できれば認知症にはなりたくありませんが、なってしまってからでもきちんとした手続きを得ることで、預金の引き出しや定期預金の解約などが可能となります。ただし、必ず家庭裁判所を介する必要もあり、なかなか難しい場面が出てくるかもしれません。そのような場合は、専門家のサポートを受けることで手続きを円滑に、確実に進めることができます。依頼するための費用は本人の財産によって費用はかかりますが、自分自身でする場合の時間や手間、そもそも自分自身できるのかどうか等の要素を比較しながら、利用を検討してみてください。