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相続放棄と預金名義変更手続きについて解説

相続人が相続放棄をした場合、預金名義の変更の手続きにはどんな影響があるのでしょうか?

 

今回は、相続人が全部、もしくは一部が相続放棄をすることで、故人の預貯金の名義変更の相続手続きにどのような影響を及ぼすのかを解説していきます。

相続人全員が相続放棄をした場合

結論から言うと、銀行への戸籍書類の提出は不要になります。しかし注意が必要です。

 

例をあげると、故人が多額の借金を抱えたまま亡くなり、全員が相続放棄すると相続する人が誰もいなくなります。

 

もちろん、全員が相続を受ける権利を放棄したわけなので、銀行で預金の払い戻しを受けることはできません。となると、銀行に名義人の死亡を通知した後、わざわざ戸籍謄本などの必要書類を提出する必要はありませんよね。

 

しかし、ここで「あぁ、そうか、じゃあ戸籍の収集の手間も省けたな」と安心してはいけません。

 

相続人全員が相続放棄をした場合、借金は誰か別の人に精算をして貰う必要があります。その場合、家庭裁判所で相続財産管理人を選んでもらわなければなりません。その申し立ての為に、預金の相続手続きと同じくらい戸籍書類が必要になるんです。

相続財産管理人選任のための必要書類

・申立書

・被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

・父母の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

・既に死亡している子(+代襲者)がいる場合、その方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

・直系尊属の死亡の記載のある戸籍謄本

・既に死亡している兄弟姉妹がいる場合、その方の出生から死亡までの全ての戸籍謄本

・代襲者としての甥/姪で死亡している方がいる場合,その方の死亡の記載がある戸籍謄本

・被相続人の住民票除票/戸籍附票

・財産を証する資料

・財産管理人の候補者として希望する人がいればその人の住民票/戸籍附票

 

親族全員で相続放棄をした場合、銀行への書類提出は不要になっても、裁判所にかなりの量の戸籍書類を出さないといけません。

また、「予納金」と呼ばれる費用を、数十万円単位で裁判所に納めなければならない場合もあります。

相続人のうちの一部が相続放棄した場合

次に、相続人の一部が相続放棄をした場合の預金の名義変更等の手続きを考えてみましょう。

 

結論としては、相続放棄によって「相続人の組み合わせ」が変わると、銀行に出す書類がよりたくさん増える可能性があります。

 

まず、前提の知識として「相続順位」というものを説明します。

 

具体的には、次のような順番で相続人になる優先順位が決まっています。

 

第1位:子

第2位:親

第3位:兄弟姉妹

 

配偶者はいつでも相続人になるため、この順位表には含まれていません。被相続人に子どもがいる場合、いつでも相続人になる配偶者と、相続順位第一位の子が相続人となります。

 

そして被相続人に子どもがいない場合、いつでも相続人になる配偶者と相続順位第2位の親が相続人になるといった感じです。

 

これを踏まえた上で、相続人のメンバーの一部が相続放棄をした場合を考えてみましょう。

 

例えば、被相続人A氏には、妻と2人の息子、既に死亡している両親と、2人の姉がいたとします。先ほどの相続順位を当てはめると、相続人は、「妻+息子2人」になることが分かりますね。

では、このうち長男が相続放棄をすると、相続人は誰になるでしょう?

被相続人には、もう1人子どもがいるので、相続人はそのまま、「妻+息子1人」の組み合わせになります。

 

この場合だと、預貯金の相続手続きへの影響は、あまりありません。変わるところといえば、相続放棄をした長男の印鑑証明書が不要になって、代わりに相続放棄をしたことの証明書を提出しないといけないといった程度です。(ただ、裁判所で相続放棄の手続きが必要なことには、変わりありません。)

 

では、先ほどの例で、息子が2人とも相続放棄をしたらどうなるでしょう?相続順位第1位、2位に当てはまる人がいないので、相続人の組み合わせが「妻+姉妹」になりますね。

 

相続放棄をする前と後で相続人の組み合わせがガラッと変わりましたね。この場合だと、相続人に姉妹が入ってきたことで、追加の戸籍書類が必要になります。しかも、兄弟姉妹が相続人になると、かなりの分量が増えることを覚悟してください。

 

また、親と子どもの遺産分割協議に比べると、配偶者と兄弟姉妹の協議の方がまとまりにくい、ということは簡単に想像がつきますよね。

 

これをふまえると、大きな借金を抱えるかもしれない、といった場合でなければ、「遺産分割協議には参加をするけど財産は引き継がない」といった方法も一つの手かと思います。

 

もし、個々のケースで判断が難しいようであれば、専門家に相談してみるのが良いでしょう。専門家のサポートを受けることで、不安を解消しながら相続手続き進めることができますよ。
※なお、相続放棄の代行は、弁護士又は司法書士でなければできません。